米の欧州からの渡航制限で航空株が急落、業績に一段の重し

Reuters

発行済 2020年03月12日 16:42

米の欧州からの渡航制限で航空株が急落、業績に一段の重し

[ロサンゼルス/ワシントン 11日 ロイター] - 英国以外の欧州からの渡航を30日間停止するとの米政府の決定で、航空各社は一段と業績が圧迫される見通しだ。特に欧州系航空会社が最も大きな影響を受けるとの指摘があり、アジア市場では航空株の値下がりが顕著となっている。

米国務省が国民に対し海外への渡航の必要性を再考するよう勧告したことと相まって、欧州各地の空港には入国停止措置の発動前に米国への滑り込み入国を試みようとする渡航者が殺到、混乱が生じると予想されている。

入国制限により、欧州からの訪米観光客による消費は激減する見通し。2018年の統計によると、欧州最大市場であるドイツ、フランス、イタリア、スペインからは580万人が訪米し、支出額は計約220億ドルに上った。

欧州から米国への便は11日に発表された厳格な予防措置のもと、限定的ながら運航しているが、搭乗できるのは米国民と米の永住権保有者など一部に限られる。

米系航空会社はすでにイタリアへの定期便を削減しているが、独仏便へも影響が広がるとみられる。

北米の主要航空会社を代表する業界団体「エアラインズ・フォー・アメリカ」の代表は渡航制限について、航空各社と従業員、旅行者に「非常に大きな」影響があるとしながらも、政府が異例の措置を取る必要性を尊重している、とした。

一方、米国の客室乗務員を代表する労働組合の代表は、渡航制限を「無責任だ」と批判。「新型コロナウイルスの感染阻止のためにどう有効なのか、何も説明がない。米国での感染が広がっている以上、渡航制限には意味がない」と述べた。

アナリストらは、特に大陸欧州から米国への路線を独占している独航空大手ルフトハンザ (DE:LHAG)や仏蘭航空大手エールフランスKLM (PA:AIRF)への影響は甚大だと指摘する。

ボイドグループ・インターナショナルの独立系航空アナリスト、マイク・ボイド氏は、EU(欧州連合)の国や航空会社が、中国からの渡航者を厳密に制限しなかったことが感染を拡大させたとして、米の渡航制限は理にかなっている、と述べた。

ボイド氏によると、米航空各社の中では、アメリカン航空グループ (O:AAL)が比較優位にある。英航空大手ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)と提携を結んでおり、ロンドン路線は運航継続できるためという。

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デルタ航空の提携先はエールフランスKLMで、大西洋路線は運休となる見通し。ユナイテッド航空もルフトハンザが提携先であるため、大陸欧州にアクセス不可能となる可能性が高い。ボイド氏は「いずれにせよ、欧州での感染拡大により旅客便の座席は埋まらない」と指摘した。 

ルフトハンザは、渡航制限の影響を査定中だとした。エールフランスKLMと英ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)の持ち株会社インターナショナル・エアラインズ・グループ(IAG) (L:ICAG)、米ユナイテッド航空ホールディングス (O:UAL)はコメント要請に回答していない。米デルタ航空 (N:DAL)は、5月31日まで、欧州および英国路線の予約変更手数料を徴収しない方針を発表した。

この報道を受けて、アジア市場では航空株が急落。

豪カンタス航空 (AX:QAN)は11%下落。シンガポール航空 (SI:SIAL)と香港のキャセイ・パシフィック航空 (HK:0293)は4%、ANAホールディングス (T:9202)と日本航空(JAL) (T:9201)は5%超下落している。