焦点:中国企業が米上場計画を相次ぎ棚上げ、2国間の緊張激化で

Reuters

発行済 2020年06月13日 08:02

[上海/香港 10日 ロイター] - 米中関係の緊張の高まりを受け、中国企業が米国での上場計画を相次いで棚上げしている。中国勢の米上場に関与する弁護士や銀行関係者、会計士、規制当局者がロイターに明らかにした。

とりわけ上場準備の早い段階で中国企業の関心が薄れるケースが多くあり、背景には米上院で可決された、中国企業の米上場を難しくする内容の法案や、中国のコーヒーチェーン大手・ラッキンコーヒー (O:LK)の不正会計問題を受けた中国企業への監視強化がある。

香港の法律事務所Dechertのパートナー、スティーブン・チャン氏は「クライアントが米国での新規株式公開(IPO)を先延ばしするのを見てきた」と明かし、「原因は米中関係だ」と続けた。

「両国間の緊張が継続するならば、IPOの鈍化も続くだろう」とした。

ディアロジックのデータによると、中国勢は年初からニューヨークでのIPOで16億7000万ドルを調達し、さらに5億ドル程度の調達を目指している。2019年の中国企業による米国での調達額は35億ドルだった。

米中関係はここ数カ月で急速に悪化。貿易摩擦に加え、新型コロナウイルスの流行や中国政府による香港への国家安全法制定方針を巡る対立が鮮明化している。

中国の大手会計事務所の会計監査人は、同社では米上場に関する問い合わせが今年に入って半分に減ったと述べた。

中国当局に近い関係者によると、中国の証券当局に米上場計画を報告していた企業の多くはこれまでに方針を変え、より近場での上場を目指しているという。

中国証券監督管理委員会(証監会)はコメントの求めに応じていない。米証券取引委員会(SEC)はコメントを控えた。

<投資家への不透明要因>

米国の証券取引所に現在上場している中国企業は550社以上に上る。

一方、中国の当局はかねてから、中国企業の監査資料が国外に持ち出されるのを阻止してきた。このため、米当局は中国企業の監査の質を検証することが難しかった。

ただ、上院が可決した法案では、中国企業は政府の管理の度合いについて情報を開示する必要があり、監査法人を監督する米上場企業会計監査委員会(PCAOB)による監査状況の点検に3年連続で応じなければ、米上場が禁じられる。法案はトランプ大統領が署名すれば成立する。

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米コンサルティング大手ベインのパートナー、ジョン・オットー氏は「米国の投資家にとっては、上場件数の減少を意味し、中国の経済成長の恩恵を得るのが難しくなる」と指摘した。