[横浜市 29日 ロイター] - 日産自動車 (T:7201)が29日、横浜市で定時株主総会を開き、内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は、業績不振に陥っている日産を「必ず成長軌道に戻す」と強調した。再建に向けた事業構造改革は自身が責任を持って進めており、業績が改善に向かわない場合、株主や顧客から解任されるとの覚悟に「全く揺るぎはない」と述べた。
内田社長は、自動車事業のフリーキャッシュフローは悪化しているが、危機対応に備えた資金は「十分に持っている」と指摘。新型コロナウイルスの影響などで事業環境は極めて不透明で厳しいが、将来への投資を減速させず、財務基盤も強化していく、とし、フリーキャッシュフローは「遅くとも2021年度下期の黒字化を目指している」と語った。
株主からは「『船頭多くして船山に上る』、真のリーダーが誰だかわからない」などとの指摘があり、内田社長のリーダーシップ不足を懸念する声も出たが、内田社長は「私がCEOとして責任を持って事業構造改革を100%リードしている」と力説した。
今期業績予想は現時点では未公表だが、今期の新車需要全体は「15―20%落ちると思っている。それを踏まえておおよその台数のいくつかのシナリオを持っている」と説明。7月の新型車を皮切りに、仕込んできた新車で成長軌道に乗せたい、と話した。
一方、監査委員会委員長の永井素夫・独立社外取締役は、前会長カルロス・ゴーン、元代表取締役グレッグ・ケリー両被告の不正に関して、メディアなどで仏自動車大手ルノー (PA:RENA)との統合を阻止するための一部幹部らの「陰謀」と指摘されていることについて「そうした事実はまったくない」と否定した。ゴーン被告が国外逃亡したため刑事裁判は中断されているが、永井氏は「民事訴訟は本人の出廷がなくとも裁判は可能だ。コロナ禍で遅れているが、ケリー氏の裁判は続行され、公正な裁判が行われると考えている」と述べた。
20年3月期連結決算は、構造改革費用などにより6712億円の最終赤字(前の期は3191億円の黒字)で、ゴーン被告が大規模リストラを断行した00年3月期(6843億円)に迫る赤字額だった。期末配当も見送られ、株主からは業績悪化、株価低迷、信頼失墜などに対する批判の声が相次いだ。今回の総会はコロナの影響で取締役のルノーのスナール会長らも訪日できず、オンラインでの出席となった。取締役12人選任議案は賛成多数で可決された。
*内容を追加しました。
(白木真紀 編集:田中志保)