豪企業に迫る「財政の崖」、給与補助9月終了で大量の経営破綻も

Reuters

発行済 2020年07月21日 10:20

[シドニー 20日 ロイター] - 経営破綻専門の弁護士やエコノミストによると、豪州では、政府による給与支払い補助制度が9月に終了後、運輸および接客業界で多数の企業が破綻する可能性がある。一部の専門家は、政府の支援策で生き延びてきた「ゾンビ企業」は市場から退出させるべきだと主張する。

デロイトのエコノミストらは20日、給与補助を通じた財政支援が途切れる「財政の崖」が9月に到来するのを契機に、観光事業および専門的サービスを手掛ける約24万社が破綻する可能性が高いと指摘。

他方、痛みを伴うものの、豪州特有の事業上の問題を抱えながら生き延びてきたゾンビ企業の淘汰を促し、景気回復のけん役となり得る生産性が高い企業に資金が回るようにする必要性も、かつてないほど高まっているとした。

オーストラリア再編・破産・再建協会(ARITA)のジョン・ウィンター会長は「経済への実体的なアウトプットがない企業に対し、資金を回し続けるのは問題だ」と指摘。

破産危機にある企業が政府の支援策で生き延び、債務を増やしていることが問題で、借金の相手は「銀行や地主かもしれないが、サプライヤーなど他の企業の可能性もある。支払い不能状態のゾンビ企業に取引の継続を認めるのは、犠牲者を伴う行為だ」と強調した。

豪政府は今年3月に1600億豪ドルの景気刺激策を打ち出した際、支払い不能状態にある企業が債務を増やした場合に取締役の個人責任を問う規制を一時的に停止。また、債権者が債務に関する措置を事前通知するのに必要な期間も長くしたため、多くの企業は家賃や税金の支払いおよび融資返済をせずに取引を継続することが可能になった。

銀行は企業に対する約22万件に上る計600億豪ドルの融資について返済を猶予しており、9月が近づくにつれ、不動産などの差し押さえが大量に発生するリスクが高まっているとアナリストは指摘する。

UBSは顧客向けのノートで「国内労働人口の35%を雇用する中小企業に重くのしかかる問題だ」と指摘。「給与補助や家賃支払いおよび融資返済の猶予期間が終われば、失業の第2波を引き起こす可能性がある」とした。