アングル:中国人民銀、国有企業デフォルト受け大量の資金供給

Reuters

発行済 2020年11月16日 18:29

[上海 16日 ロイター] - 中国人民銀行(中央銀行)は16日、中期貸出制度(MLF)を通じて8000億元(1214億8000万ドル)を金融機関に供給した。月間の供給額としては2016年以降で最大。

同国では、国有企業のデフォルト(債務不履行)が相次ぎ、先週の社債市場で売りが膨らんでいた。市場の懸念を鎮静化する狙いがあるとみられる。

ただ、短期の銀行間金利は高止まりしており、国有企業の予想外のデフォルトが再び起きるのではないかとの警戒感が広がっている。

短期の銀行間金利の指標となる7日物レポレート(加重平均)は16日に2.3801%と、1週間前の2.2953%から上昇している。

国内銀行のあるトレーダーは「差し引きで巨額の資金供給となったが、流動性は依然としてややタイトだ。ただ、一部の投資家の間では、先週のデフォルトは、特定の地方政府の決定よるもので、信用リスクが市場全体に広がることはないとの期待も出ている」と述べた。

先週の社債市場では、国有石炭会社、永城煤電控股集団の社債が、発行後数週間でデフォルトに陥り、国内銀行・資産運用会社の売りが膨らんだ。

同社は、国内格付け会社の中誠信国際信用評級からAAAの格付けを取得していたが、デフォルト後にBBに格下げされた。中誠信国際のコメントは取れていない。

永城煤電は13日、返済期限を迎えた債務の利払いを実施したと表明。元本を返済するため、資金調達に向けた作業を進めていることを明らかにした。

ただ、中国では国有企業のデフォルトや格下げが相次いでおり、「国有企業は安全な投資先」というイメージが揺らいでいる。

独自動車大手BMW (DE:BMWG)の合弁相手の親会社である国有の華晨汽車集団もデフォルトに陥ったほか、国有半導体メーカー、清華紫光集団も、格付け会社からリスクを指摘されて、社債価格が急落した。[nL4N2HZ2AK][nL4N2I213G]

格付け会社フィッチ・レーティングスは16日、国有企業のデフォルト件数が、来年小幅に増加するとの見通しを示した。

<暗黙の保証はあるのか>

国有企業のデフォルトは過去にも起きているが、ゴールドマン・サックスのアナリスト、KennethHo、Chakki Ting両氏によると、最近のデフォルトは大手企業が多く、「一部の企業は『大きすぎて潰せない』という見方が後退する一因になっている」という。

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両アナリストは、国有企業のデフォルトが最近、相次いでおり、暗黙の政府保証は期待しにくくなっているとの見方を示した。

OCBC銀行の大中華圏リサーチ担当責任者、Tommy Xie氏は「大半の投資家は、暗黙の保証というモデルが長期的に持続不可能だと認識しているが、実際にその時が来れば、やはり痛みを伴う移行になる」と指摘。「各省の政府が、債務返済へのコミットメントにどのような姿勢を示すかに市場の注目が集まる公算が大きい」と指摘した。

人民銀行は、内モンゴル自治区の地銀・包商銀行が昨年5月に「深刻な信用リスクを理由」に接収された後にも、大量の資金を供給した。

当時は、包商銀行の接収を受けて銀行間金利が急騰。中小銀行から高格付けの発行体に資金がシフトし、スプレッドが急激にワイド化した。

ただ、今回のデフォルトについては、懸念の払しょくは容易ではないとの声が出ている。