アングル:米エネルギー株、景気回復期待と化石燃料の将来性不安が交錯

Reuters

発行済 2020年12月07日 16:36

更新済 2020年12月07日 17:18

[ニューヨーク 4日 ロイター] - 米株式市場では、石油や天然ガスといった伝統的なエネルギー株の戻りがいつまで続くかが注目されている。新型コロナウイルスで痛手を受けた経済の持ち直しが追い風とみられる半面、化石燃料の将来性を巡る疑問が根強いためだ。

11月のエネルギー株の上昇率は27%近くに達し、有望な新型コロナウイルスワクチン登場による景気回復で恩恵を受けると期待される幾つかのセクターに対する買いをけん引した。

しかし石油・ガスのサプライチェーンに連なるあらゆる企業は、風力や太陽光といった「グリーンエネルギー」の利用拡大という逆風に直面しており、長期的な見通しは依然不確実だ。資産運用会社の間で、環境問題への懸念から化石燃料関連企業に対する投資を渋る動きが出ていることも懸念要素となっている。

フィデューシアリー・トラスト・インターナショナルのポートフォリオマネジャー、ダグ・コーエン氏は「すう勢的に衰退に向かいそうなセクターについて極端な強気になるのは常に難しい。そして伝統的な化石燃料セクターこそ、そうした衰退傾向をたどる公算が非常に大きい」と指摘した。

エネルギー株は年初来ではなお37%下落しており、S&P総合500種が13.5%上がって過去最高値を更新したのとは対照的。もっとさかのぼれば、大不況(グレート・リセッション)以降ずっと原油安を背景にエネルギー株は市場全般に対して値動きが見劣りし、リフィニティブ・データストリームによると、2008年に15%強だったS&P総合500種における時価総額のウエートは足元で2.4%まで下がってしまった。

ただ11月に、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカといった製薬会社が相次いで新型コロナウイルスワクチンの臨床試験で好ましい結果が出たと発表すると、低迷していたエネルギー株が大幅高に転じた。

個別に見るとエクソンモービルは17%、シェブロンは25%、オキシデンタル・ペトロリアムは72%、デボン・エナジーは約57%上がった。

CFRAリサーチのエネルギー株アナリスト、スチュワート・グリックマン氏は「ワクチン実用化が間近との見方が、原油需要回復期待につながった」と説明し、エネルギー株は当面ワクチンや新型コロナ感染者に関するニュースに敏感に反応する局面が続くと付け加えた。

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ゴールドマン・サックス、クレディ・スイス、バークレイズはいずれも11月にエネルギーセクターの投資判断を「マーケットウエート」ないし「中立」に引き上げている。バンク・オブ・アメリカ・グローバル・リサーチの米国株・クオンツ戦略責任者サビタ・スブラマニアン氏は、エネルギーセクターを「相当割安化した株の申し子」とみなし、同社は11月に投資判断を「アンダーウエート」から一気に「オーバーウエート」に上方修正した。

多くのエネルギー株の配当利回りが相対的に高いことから、投資家が引き寄せられてもおかしくない、と話すのはダコタ・ウエルス・マネジメントのシニア・ポートフォリオマネジャー、ロバート・パブリク氏だ。S&P総合500種の配当利回りは2%だが、エクソンは9%、シェブロンもおよそ6%となっている。

それでもエネルギー株がこの先、運用成績の足を引っ張りかねないと懸念する向きは引き続き多い。BMOキャピタル・マーケッツは、来年の投資判断でエネルギー株を「アンダーウエート」に設定し、石油消費は低調にとどまると予想した。