12月ロイター企業調査:政府の脱温暖化目標、「達成困難」が過半

Reuters

発行済 2020年12月09日 10:06

[東京 9日 ロイター] - 12月のロイター企業調査によると、菅政権が掲げる「2050年までに温暖化ガス排出実質ゼロ」について、国全体として目標達成は困難とみる企業が7割弱を占めた。企業にとって環境対応コストに対する不安が大きく、化石燃料の代替電源として原子力発電の現状以上の利用にも慎重なことが背景にある。今後10年間で自社の二酸化炭素(CO2)排出量で削減可能な範囲は10%以下との回答が半数を占め、取り組みは遅々として進みそうにない。

調査期間は11月20日から12月3日まで。発送社数は485社、回答社数は245社だった。

2050年排出ゼロ宣言は、専門家の間でも既存技術のもとでの実現は極めて困難とみられている。企業でも「目標達成は困難」との回答が66%を占め、「達成可能」の34%を大きく上回った。

「環境対応コスト負担が大きいため」(輸送用機器)、「技術開発ばかりでなく設備投資が必要」(精密機器)など、環境対策投資のコストの大きさを挙げる声が目立つ。また、政府による電源供給の抜本的な見直しが見えない中で「自然エネルギーへの移行が進まないため」(鉄鋼)との声もある。

自社でのCO2削減幅も30年までにせいぜい10%以下にとどまるとの回答が半数を占めている。実際に企業としては「ハイブリッド車の導入、自家消費型太陽光発電の導入」(建設)、「再生可能エネルギーの利用促進」(卸売)といった取り組みを実施しているものの、その効果がなかなか表れにくいともいえそうだ。

専門家の試算では、50年にCO2ゼロを実現するには30年までの削減幅について4─5割を目指すことが必要だとされている。

電源見直しに関し、現在休止中の原子力発電の活用なども含め、どの程度稼働させるべきかを聞いたところ、さらなる再稼働や新設も進めるべきとの回答は37%。現状程度の稼働あるいは原発は不要との回答は合わせて63%となり、原発活用には慎重な声が多い。「原子力発電がクリーンエネルギーだという国民のコンセンサスがない」(卸売)、あるいは省エネルギーへの取り組みを進める以上は「電力の総需要は右肩下がりになるはず」(輸送用機器)といった指摘もある。

ただ「自然エネルギーだけでCO2排出削減目標達成は無理」(小売)であり、「今ある設備は活用すべき」(電機など)など、再稼働を認める声も27%を占めた。

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排出ゼロへの対策には「結局、企業の持ち出しは避けられない」(小売)など、コストを意識する声が目立つ。事業への影響について、こうしたコストを踏まえて短期的にはマイナス効果となるとの回答が29%と、プラス効果(15%)の2倍を占めた。ただ、中長期的にはプラス効果が出るとの見方が43%に増え、マイナス効果の倍になり見方は逆転している。

「短期的には設備投資過多の時期がありマイナスとなろうが、中長期でみると設備投資資金がない競合他社より有利になる」(サービス)など、投資効果が顕現化することで事業にもプラスとなるとの見方がある。