政府、東芝の対応待つ姿勢崩さず 報告書が経産省の関与指摘

Reuters

発行済 2021年06月11日 12:04

更新済 2021年06月11日 21:27

[東京 11日 ロイター] - 昨年7月の東芝株主総会を巡る第三者委員会の調査報告書で、経済産業省が同社とともに海外投資家に不当な圧力をかけたと指摘されたことについて、政府は11日、東芝の対応を待つ姿勢に終始した。一方、東芝の大株主からは企業統治を問題視する声が改めて聞かれた。

<経産省が必要な対応と官房長官>

梶山弘志経済産業相はこの日、閣議後の会見で「東芝のガバナンスに関すること。東芝の今後の対応に関する検討を待ちたい」と今後の対応を説明。午後の衆院経済産業委員会でも同じ発言を繰り返した上で、「報告書全体を通して見た場合に個別にどのような根拠に基づいて断定しているのか、必ずしも明らかにではないところもある」と語った。

昨年の東芝株主総会では筆頭株主エフィッシモ・キャピタル・マネジメントによる人事案が否決されたが、株主が選任した弁護士が10日に公表した調査報告書によると、東芝の経営陣はこの株主総会に先立ち、「物言う株主」への対応について経産省に支援を要請。改正外為法に基づく権限を材料に、エフィッシモの提案を取り下げさせようとしたという。

調査報告書は、東芝が経産省と一体となって社外取締役の選任を提案していた筆頭株主などに不当な影響を与えたと認定。「(昨年7月の)株主総会は公正に運営されたものとはいえない」と結論づけた。

経産省の関係者は11日、ロイターの取材に「報告書はまず東芝の経営者がどう受け止めるか。われわれは第三者なので、われわれが報告書について注文を付けるのはおかしい」と語った。

加藤勝信官房長官は午前の会見で、「今後の東芝の対応を注視する」とした上で、「経済産業省においてそれを踏まえた必要な対応がなされるものと承知している」と述べた。

報告書はまた、東芝の事実上の依頼に沿って経産省の当時の参与が東芝株主の米ハーバード大学の基金運用ファンドに投票行動の変更を求め、ハーバード側は議決権を行使しなかったとも認定した。 報告書は当時の経産省参与を「M氏」としているが、この人物は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の最高投資責任者も務めた経産省の水野弘道元参与とみられている。

梶山経産相は閣議後会見で、水野元参与について「投資家の視点からアドバイスを頂いたことはある」としながらも、「経産省から水野元参与に対して個別の投資家への働きかけを依頼した事実はないと事務方から報告を受けている」と語った。

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<東芝株の下げは限定>

大株主の1人はロイターの取材に、東芝の企業統治と透明性の欠如が浮き彫りになったと指摘。「非公開化を通じた抜本的改革が東芝を再生させるための唯一の実行可能な選択肢と考える」と語った。

一方、ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは、日本企業のガバナンスへの評価にはネガティブとする一方、足元で外国人投資家は日本に魅力を感じておらず、外国人投資家の動向にはさほど影響しないとみている。