アングル:春の信用期日到来、相場全体の圧迫要因に

Reuters

発行済 2021年07月26日 10:41

水野文也

[東京 26日 ロイター] - 今春に高値を付けた際の信用取引期日が8月から9月にかけて到来する。ソフトバンクグループやファーストリテイリングなど指数寄与度が大きい銘柄が含まれており、日本株の上値を押さえる需給要因として警戒されている。

今年の年初来高値は、日経平均が2月16日の3万0714円52銭、TOPIXは3月19日の2013.71ポイントだ。ともにその後、下落トレンドに入り、足元ではそれぞれ高値から10%安、5%安の水準となっている。

この時期に年初来高値を付けた銘柄は多い。2─3月は東証1部の売買代金が3兆円前後で推移した日も多く、その後の下落によって高値圏で取り残された信用取引の買い建て玉は少なくないと推定されている。

信用取引を利用した売買は、決められた期限内に反対売買しなければならない。無期限の信用取引もあるが、多くの投資家は返済期限が6カ月の制度信用取引を利用している。商いを伴いながら高値を形成した場合、高値を付けた日から6カ月後の信用期日が「高値期日」として意識されることになる。

一般的に、期日が到来する1─2カ月前に「やれやれ売り」や「見切り売り」が多くなる傾向があることから、今回は「高値期日から判断すると、7月下旬から8月上旬にかけて需給面が一番厳しくなりそうだ」(大和証券・チーフテクニカルアナリストの木野内栄治氏)とみられている。

株価下落局面で逆張りをねらった信用取引の買いが増え、買い残が売り残を大幅に上回る状態となっている銘柄も多い。

ソフトバンクグループは年初来高値を形成した週には884万株だった信用買い残が直近では1793万株まで倍増。信用倍率は2.82倍から13.40倍に悪化した。ファーストリテイリングも26万株から58万株に増加している。

「この2銘柄は指数のみならず、市場全体のセンチメントに及ぼす影響が大きい」(野村証券・投資情報部ストラテジストの神谷和男氏)ため、両銘柄の上値が重くなれば、日本株全体にも悪影響を与えかねない。

ただ、信用高値期日を通過し、これら仮需の整理が進むと相場が上昇に転じるケースが多い。期日を控えて前倒しで反対売買が進んだ場合は「期日向かい」と呼ばれる戻り相場となることもある。

アプリを入手する
Investing.comで、世界の金融市場の最新動向をチェックしましょう!
今すぐダウンロード

このため、市場では「日本株は過小評価されていると感じられるだけに、需給が改善されれば夏後半から秋にかけて修正高に向かう局面が訪れる可能性もある」(東海東京調査センター・シニアストラテジストの中村貴司氏)との声も出ている。

*8月、9月に信用高値期日が到来する主な銘柄

銘柄 年初来高値(円) 信用倍率

住友金属鉱山 5584(2月22日) 10.00

パナソニック (T:6752) 1520(2月15日) 5.48

ソニーG 12545(2月5日) 9.55

三菱重工業 3671(3月19日) 5.08

任天堂 (T:7974) 69830(2月17日) 6.40

三菱商事 3298(3月23日) 5.89

三菱UFJFG 660.3(3月22日) 9.19

JR東日本 8626(3月18日) 10.33

ファーストリテ 110500(3月2日) 2.70