アングル:五輪野球のSSK製ボール、米代表投手が「世界最高」と絶賛

Reuters

発行済 2021年08月03日 16:56

[横浜 30日 ロイター] - 東京五輪・野球競技の公式球が非常に高い評価を受けている。米国代表チームのジョー・ライアン投手(ツインズ所属)は30日の試合後、「世界最高」とほめたたえた。そのボールとは、日本のスポーツ用品卸売りのSSKがスリランカで製造し、米大リーグで使われている滑り止め用の泥をすり込ませたもので、新型コロナウイルスの感染防止のために徹底的な管理も行われている。

五輪で行われる全16試合のために、合計144個の新品が供給されたが、注目度が高まっているのは幾つかの理由による。まず野球が正式競技としていったん最後になった2008年の北京五輪では、公式球は同じ日本のミズノ製だった点がある。ミズノは今回、ソフトボールの公式球に引き続き採用されたものの、野球では「落選」した。

また感染対策として会場での取り扱いにも細心の注意が払われている。ボールボーイ・ボールガールはチームごとに使う分を別々に管理し、手渡しの際には白手袋もしくは医療用手袋を着用。マウンドの投手が滑り止めのために握るロジンバッグも、両チームで入れ替える念の入れ用だ。

さらに誰もが思い浮かべるのは、少し前からの大リーグの公式球となっているローリング社製のボールを巡る騒動だ。大リーグ機構(MLB)は今年、各チームの投手が「スパイダー・タック」など使用が禁止されている強力な粘着物質でボールにこっそりと「細工」をしていないかどうか取り締まるため、試合中の検査に乗り出した。

投手側は、公式球の規格が不統一で滑りやすい性質があるという問題を克服する上で粘着物質を使っていると主張。ただMLBは、それによってボールが極端に変化し、打者が無様に空振りする光景が広がれば、試合そのものがつまらなくなると懸念している。

こうした中でツインズの有望な若手の1人、ライアン投手は、SSKのボールは世界最高で、この「驚異的」で「完璧」な製品をぜひ米国も使うよう推奨。30日のイスラエル戦で6回を5安打1失点に抑えた後、相当な信頼感を持った様子で「打者が愛着を持っているし、私もこれを投げるのが好きだ。全ての投手がそうだろう。現在多くの問題になっている外国製の異物をボールに付着させる行為も解決される。いくらほめても足りない。これは私が触れてきたどのボールよりも素晴らしい」と語った。

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泥によってボールの滑りを防ぐことは、一定の効果が認められている。ライアン投手の先発前には、審判団が指を水に浸し、「リナ・ブラックバーン・ラビング・マッド」と呼ばれる大リーグ公認の滑り止め用の泥をすり込んでいるのをロイターが目撃した。この泥は、ニュージャージー州のデラウェア側の秘密の場所から採取されているという。

審判団はその後、さらにピザ生地をこねるようにボールをロジンバッグと混ぜ合わせ、滑りを生む新品特有の光沢を取り除く。

世界野球ソフトボール連盟(WBSC)のグスタボ・ロドリゲス野球審判部長は「だから投手はボールをしっかり握ることが可能で、投げる段階でも滑らない」と説明。五輪開始からの3日で選手の不正行為や不満の声は最小限にとどまっていると付け加えた。

大リーグと東京五輪の双方の公式球を使った選手によると、同じようにリナ・ブラックバーン・ラビング・マッドをすり込んだ結果、このSSKのボールの方が感触は良いという。

ライアン投手は「SSKのボールをもっと送ってくれるなら、先方に住所を知らせるよ」とすっかり気に入っている。