■中長期的な成長戦略
1. 今後の方向性
コロナ禍の影響により、ティーケーピー (T:3479)の成長戦略は一旦足踏み状態となっているものの、中長期的な成長戦略に大きな見直しはない。
すなわち、TKP・リージャスに加え、アパホテルを3本目の柱として成長させることにより、収益基盤を拡大していく方向性である。
コロナ禍で拡大しつつあるフレキシブルオフィス需要を「Work X Office」を加えた新たなビジネスモデルで取り込んでいくほか、コロナ禍収束とともに需要回復が予想されるビジネスホテル分野にも注力していく考えである。
特に、フレキシブルオフィス市場での圧倒的なポジションを確立し、将来的には事業モデルをアジア各国に展開することによって成長を加速させる構想を描いている。
一方、ポストコロナを見据えた当面の戦略については、コスト最適化(契約見直しやリスクシェア型物件開発を含む)や安定的な利益確保(フレキシブルオフィス市場の開拓や宿泊需要の回復等)、アライアンス戦略推進(多種多様なスペースやコンテンツの獲得等)に取り組み、需要回復に備えるとともに、コンテンツサービスの開発を積極的に推進することによりスペースあたりの収益性を向上させ、まずは成長回帰を目指していく方針である。
2. 弊社アナリストによる注目点
弊社でも、コロナ禍の影響により、同社の成長シナリオに時間的な滞りが生じたものの、中長期的な視点で見れば、これをきっかけに企業の働き方やオフィスの在り方を見直す機運が一気に加速し、その結果、フレキシブルオフィス市場の拡大に拍車がかかる可能性が高いと見ている。
そうなれば、これまで積み上げてきた拠点数(契約面積)、グローバルネットワーク、顧客基盤に加えて、有力な成長エンジン(リージャスブランド)を獲得した同社には、圧倒的な優位性があると評価しても良いだろう。
そもそも環境変化への対応力の高さがフレキシブルオフィス市場の最大の特長であり、そのけん引役である同社にとっても真骨頂と言えるところである。
したがって、この事態にいかに迅速かつ的確に対応し、環境変化をビジネスチャンスに変えていくのかが、市場全体の方向性や同社の将来性を占ううえでも重要な試金石となるだろう。
また、フランチャイズ展開しているアパホテルについても、圧倒的なブランド力により稼働率が業界平均よりも高い※ことに加え、フレキシブルオフィス事業とのシナジーも期待できることから、将来的に3本目の柱となる可能性は十分に期待できると見ている。
コロナ禍収束を見据えたオフィス市場の変化やホテル業界の動向(稼働の回復度合いや淘汰の動き等)のほか、コンテンツサービスの充実、リスクシェア型物件の開発など、同社の成長加速に向けた様々な取り組みにも注目したい。
※これまでの実績を見ると、同社運営アパホテルは他社平均(ビジネスホテル平均)よりも20%以上高い稼働率で推移しており、コロナ禍においてもその優位性は維持されている。
■株主還元
配当という形での株主還元は見送られる可能性が大きい
同社では、現在は先行投資の段階にあり、事業展開のスピードを高め、規模の拡大に伴って必要な資金を確保する観点から利益配当を見送ってきた。
2022年2月期についてもこれまで同様、現時点で利益配当の予定はない。
弊社でも、今後の成長に向けた投資を優先すべきフェーズであるとの認識から、しばらくは内部留保に努め、事業拡大に必要な資金の確保を優先する可能性が高いと見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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