日経平均は小幅続落、オミクロンショックは早くも織り込み済み?

Fisco

発行済 2021年11月29日 12:09

 日経平均は小幅続落。
5.13円安の28746.49円(出来高概算7億0505万株)で前場の取引を終えている。


 前週末26日の米国市場は軒並み急落。
NYダウは一時1000ドル超下げ、終値では905.04ドル安(-2.52%)。
南アフリカで検出された新型コロナウイルス変異株が世界経済の回復を損ねるとの懸念にアジアや欧州市場の流れを継いで、寄り付き後大きく下落。
短縮取引で参加者が限られるなか安値を探る展開となった。
リスク回避の動きから安全資産の米国債が買われ、米10年国債利回りは1.48%(-0.16pt)と急低下したが、ハイテク株も売られ、ナスダック総合指数は-2.23%の大幅下落。
欧州でも英FTSE100、ドイツDAXなど主要株価指数は4%前後の急落となった。
大阪取引所の夜間取引の日経平均先物は日中終値比940円安と27850円まで売られていた。


 こうした流れを引き継ぎ、週明けの日経平均は413.66円安の28337.96円と大きく下げて始まったものの、寄り付き直後から下げ渋ると、早々に28500円を回復。
その後再び下げ幅を拡げるなど一時荒い動きも見られたが、総じて底堅かった。
時間外の米株価指数先物の上昇にも支えられ、前引けにかけてじりじりと下げ幅を縮める動きが続いた結果、前週末終値とほぼ変わらない水準まで戻して前場を終えた。


 個別では、米長期金利の低下や円高・ドル安を嫌気して三菱UFJ (T:8306)や三井住友 (T:8316)の金融株のほか、トヨタ自 (T:7203)や日産自 (T:7201)、ホンダ (T:7267)などの輸送用機器が大きく下げている。
また、経済活動正常化が頓挫するとの見方から、JAL (T:9201)、JR東 (T:9020)、OLC (T:4661)などのアフターコロナ関連株が下落したが、いずれも朝安後は下げ渋った。
そのほか、日本製鉄 (T:5401)や三菱商事 (T:8058)などの資源関連株の一角が大きく下落し、ソフトバンクG (T:9984)、ファーストリテ (T:9983)、日立 (T:6501)、村田製 (T:6981)などは小安い。


 一方、米長期金利の低下が下支え要因として働き、レーザーテック (T:6920)が大幅反発で、東エレク (T:8035)、スクリン (T:7735)、アドバンテスト (T:6857)などその他の半導体関連株も大幅高。
任天堂 (T:7974)やエムスリー (T:2413)といったグロース(成長)株の一角も大きく上昇。
郵船 (T:9101)、商船三井 (T:9104)、川崎汽船 (T:9107)の大手海運株は、先週末のバルチック海運指数の大幅高やコロナ変異株拡大が海運市況ひっ迫につながるとの思惑から、景気敏感株が総じて売り優勢のなか逆行高。
そのほか、キーエンス (T:6861)、リクルートHD (T:6098)、塩野義製薬 (T:4507)、ベイカレント (T:6532)などが買われている。


 セクターではゴム製品、輸送用機器、繊維製品などが下落率上位となっている一方、海運業、その他製品、電気機器などが上昇率上位となっている。
東証1部の値下がり銘柄は全体の66%、対して値上がり銘柄は29%となっている。


 週明けの日経平均は続落も、想定以上に底堅いとの印象を抱いた投資家が多いだろう。
夜間取引の日経平均先物は安値で27510円と、既に急落していた週末日中取引の終値から更に1000円超も下げる急落ぶりを見せていただけに、現物の日経平均の28000円割れは避けられないとの見方が多かったと思われる。


 しかし、実際には、週明けの日経平均は28000円よりは大分上の水準で始まり、前週末終値とほぼ同水準まで下げ幅を縮小した。
先週末に欧米市場に先んじて急落していただけに、下げが限定的となるのは当然ともいえるが、やはり、インパクトのある夜間取引の動きを踏まえると、安堵感が強い。
先週末については、米国市場が感謝祭の祝日で短縮取引となるなか参加者が限られており、動きが誇張されやすかったと思われるほか、米国市場が引けた後の動きが夜間取引の日経平均先物に集中したために、下げが過度に演出されたのかもしれない。
いずれにせよ、28000円台を優に維持している点は安心感を誘う。


 南アフリカ発症とされる新型コロナ変異株「オミクロン株」については、まだ分かっていないことが多いため、油断はできない。
感染力はデルタ株よりも高く、ワクチンの有効性が低下する可能性も指摘されている。
しかし、その後、米製薬大手ファイザーと共同開発した独ビオンテックは、新たな変異株に合わせたワクチンを100日以内に出庫できると言及したほか、米バイオのモデルナは、オミクロン株に対応する最初の実験用ワクチンを60~90日で作成し、来年早々には改良したワクチンを提供できる可能性を示した。


 さらに、世界保健機関(WHO)によれば感染報告は比較的軽症となりやすい大学生だったようだが、今回の変異株について最初に警告を発した医師を含め南アフリカ共和国の医療専門家らは、オミクロン株に感染した人の症状はこれまでのところ軽いとも報告している。


 まだ予断を許さない段階ではあるが、このように変異株に対しては明るい兆しが見られている。
また、パンデミック発生当初と異なり、これまでの約2年間で世界はワクチンや治療薬の開発のほか、未知のウイルスとの向き合い方についても心得ている。

マーケットは不透明感をもっとも嫌うとされているが、その段階が、変異株が伝わった先週末だとすれば、最悪については既に相当程度織り込んだとも捉えられる。
実際、今日の前場までの動きをみる限り、そうした見方が裏付けられたようにもみえる。
ニュースフロー次第で、今後も相場は乱高下するだろうが、過度な悲観も楽観も抱くことなく、常に冷静さを保っておきたい。


 なお、今晩はパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長とニューヨーク連銀総裁がオンラインイベントの冒頭で挨拶をする予定。
足元の変異株拡大に対して、パウエル議長がどのような認識を示すのか、発言が注目される。


 今週は週末の米雇用統計のほか、経済指標の発表が多い。
週明けの米国市場が下げ止まるのかどうかや、パウエル議長の発言なども見極めたいとの思惑もあり、後場の日経平均は前引け水準を挟んだ一進一退になるとみておきたい。

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