シュッピン Research Memo(4):2022年3月期上期はEC好調、時計事業が戦略的在庫投資で大幅拡大(1)

Fisco

発行済 2021年12月10日 15:24

■決算概要

1. 2022年3月期上期決算の概要
(1) 決算の概況
シュッピン (T:3179)の2022年3月期上期の業績は、売上高が前年同期比31.8%増の18,972百万円、営業利益が同147.7%増の1,315百万円、経常利益が同146.3%増の1,351百万円、四半期利益が同157.7%増の933百万円と、増額修正予想(2021年8月4日公表)※をさらに上回る大幅な増収増益となった。
コロナ禍前の前々期(2020年3月期上期)と比較しても売上高、営業利益ともに上回る水準となっている。


※同社では、第1四半期決算発表時(2021年8月4日公表)において、時計事業の上振れや売上総利益率の改善が想定以上に進んでいることから、上期並びに通期業績予想を増額修正している。



売上高は、好調な外部環境(EC市場の拡大等)や各施策の効果によりEC売上が順調に伸びている。
特に第2四半期だけで見ると同期間における過去最高水準を更新した。
一方、コロナ禍の影響が続く店舗売上についても、前年同期の落ち込みから大きく回復してきた。
事業別では、時計事業が前期第3四半期から実施している戦略的な商品ラインナップ拡充(中古ロレックスの買取強化)により、EC売上及び店舗売上(とりわけ免税売上)の両方の伸びに大きく寄与。
また、カメラ事業についてもEC売上を中心に好調に推移している。
したがって、これまでの一連のEC強化策が軌道に乗ってきたことに加え、「時計事業」における戦略的な商品ラインナップ拡充が、計画を上回る業績の伸びをけん引したと捉えることができる。


利益面でも、増収による収益の押し上げのほか、カメラ中古品の売上総利益率の改善や販管費の抑制などにより大幅な増益を実現し、営業利益率も6.9%(前年同期は3.7%)に改善した。


財政状態については、時計事業における戦略的な在庫投資等により、総資産は前期末比6.1%増の13,382百万円に拡大した。
一方、自己資本は自己株式の取得※1により同34.5%減の4,190百万円に大きく縮小し、自己資本比率は31.3%(前期末は50.7%)に低下した。
また、有利子負債は長短合わせて前期末比70.0%増の6,678百万円に増加しており、ネットD/Eレシオ※2は1.3倍(前期末は0.3倍)に高まった。
したがって、自己株式の取得等に伴って資本構成が大きく変化したことには注意が必要である。
もっとも、同社のキャッシュ・フロー創出力※3を勘案すれば、返済能力に懸念はない。


※1 同社創業者である取締役会長鈴木慶氏より、2021年6月14日付公表の取締役退任とあわせて、同氏が保有する株式の一部売却意向の打診を受け、自己株式2,661,200株(取得価額の総額2,812,888,400円)を取得したもの。
取得した自己株式については、消却あるいはM&Aへの活用を含め、今後、検討していく方針である。

※2 (有利子負債−現金及び預金)÷純資産により算出。
この比率が高まるほど、財務の安全性は低下する一方、資本効率性は向上するとの見方ができる。

※3 前期のEBITDA(営業利益+減価償却費=1,774百万円)を基準にすると、EBITDA有利子負債倍率は約3倍程度に収まっている。



(2) 売上総利益率及び販管費の状況
2022年3月期上期の売上総利益率(全社)は18.6%(前年同期は19.2%)と、時計事業の伸び(セールスミックスの影響)により若干低下したものの、AIMD導入によるカメラ中古品の売上総利益率改善が寄与し、高い水準を維持できたとの見方ができる。
また、販管費はEC強化策(AIMD導入に伴う減価償却費やシステム運用費等)やEC売上の伸びに伴う費用(支払手数料)の増加があったものの、特殊要因(ポイント引当金の計上方法の変更)による費用減に加え、生産性向上による費用の抑制を図ったことから、販管費率は11.7%(前年同期は15.5%)に大きく低下した。


2. 事業別の業績
(1) カメラ事業(EC比率:89%)
売上高は前年同期比17.2%増の12,133百万円、セグメント利益は同47.5%増の1,353百万円と順調に伸びた。
AIMDの本格稼働や独自の仕組み(AI顔認証、Webマガジン、CGM等)を活用したOne to Oneマーケティングが機能し、EC売上が好調に推移している。
一方、店舗売上についてはコロナ禍の影響が続くものの、足元では一定の回復傾向にあるようだ。
損益面では、AIMD効果により中古カメラの売上総利益率が改善し、大幅な増益を実現するともに、セグメント利益率も11.2%(前年同期は8.9%)に大きく改善した。


(2) 時計事業(EC比率:39%)
売上高は前年同期比82.4%増の6,242百万円、セグメント利益は同231.6%増の371百万円と大きく拡大した。
前期第3四半期より戦略的に取り組んできた商品ラインナップ拡充(中古ロレックスの買取強化)が奏功し、EC売上及び店舗売上の両方で大きな伸びを実現した。
特に、コロナ禍においても店舗売上が大きく拡大しており、短期滞在の外国人や一時帰国の日本人などに向けた免税売上の伸びが寄与している。
したがって、中古ロレックスの買取強化により国内最大級の在庫量を確保するとともに、世界最大級の高級腕時計マーケットプレイス「Chrono24」(クロノ24)への出展などを通じて海外での知名度が上がってきたことも、成功要因としてあげることができる。
また、レディース腕時計専門店「BRILLER」(ブリエ)についてもSNSを中心とした情報発信により徐々に認知度が高まってきたようだ。
損益面でも、増収による収益の押し上げに加え、中古品が好調であったことにより売上総利益率が改善し、大幅な増益を実現した。


(3) 筆記具事業(EC比率:83%)
売上高は前年同期比13.0%減の183百万円、セグメント損失は1百万円(前年同期は15百万円の損失)と減収ながら損失幅は改善した。
EC売上に落ち込みが出た一方、店舗売上はリニューアル効果もあって好調に推移した。
損益面では、利益率の改善や費用削減により損失幅が改善した。


(4) 自転車事業(EC比率:93%)
売上高は前年同期比1.2%増の412百万円、セグメント利益は同37.4%増の25百万円と増収増益となった。
完成車の旧モデルや電動アシスト、コロナ禍により室内でのインドアトレーニング機、シマノ製品のパーツが好調であった。
損益面では、自社サイト比率の向上により利益率が改善し、大幅な増益となった。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)


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