神戸物産 Research Memo(2):「業務スーパー」を軸とした食の製販一体企業として成長

Fisco

発行済 2022年01月26日 15:12

更新済 2022年01月26日 15:30

■会社概要

神戸物産 (T:3038)は、食品スーパーの「業務スーパー」を全国にFC展開するだけでなく、食材となる農畜産物の生産や製造加工なども自社グループで手掛ける国内トップの食の製販一体企業である。
事業セグメントとしては、主力の業務スーパー事業のほか、外食・中食事業(旧神戸クック事業)、エコ再生エネルギー事業の3つの事業セグメント及びその他で開示している。
2021年10月期の売上構成比で見ると業務スーパー事業が98.2%を占めており、連結業績の動向は業務スーパー事業とほぼ連動する格好となっている。


1. 業務スーパー事業
業務スーパー事業では、同社が「業務スーパー」のFC本部として商品の企画・開発及び調達等を行っており、「業務スーパー」で販売するPB商品の一部を国内外の自社グループ工場で製造している。
2008年以降、M&Aにより食品工場を積極的に自社グループ化しており、現在、国内における自社グループ工場数は25拠点と、食品スーパーとしてその所有数は国内最大級となっている。


「業務スーパー」は業務用をメインとした商品開発・販売からスタートし、中間流通マージンを除いた直仕入や店舗運営の徹底した効率化により、「品質の良い商品をベストプライス」で提供することで顧客からの支持を集め、2000年の開業以降、成長を続けている。
ここ数年は年間30~35店舗ペースで店舗数を拡大してきた。
2021年10月期は前期末比71店舗増と増加ペースが加速している。
既存店売上の成長が続いており、FCオーナーの出店意欲が旺盛なことが要因となっている。
直営店舗は3店舗のみであり、FC展開によって店舗数の拡大を進めている。
主なFC企業としてはG-7ホールディングス (T:7508)の子会社である(株)G-7スーパーマートのほか、オーシャンシステム (T:3096)などがある。


FC本部としてのロイヤリティー収入はFC加盟店への商品出荷高の1%としており、FC展開する企業の中では低い料率となっている。
これは同社の経営方針として、FC加盟企業の収益を拡大していくことが、自社の成長につながるという考えに基づくもので、ロイヤリティー収入で稼ぐのではなく、食品の製造と卸売事業で収益を拡大していくことを基本戦略としているためだ。
なお、FC加盟店はエリアによって直轄エリアと地方エリアに分類しており、契約内容も若干異なっている。
直轄エリアの場合で見ると、加盟金220万円(税込)、保証金1,000万円の一時金のほか発注システム使用料で月額31,428円(税込)を徴収している。


業務スーパーの取扱商品総数はPB商品、NB商品合わせて約5,300点に上る。
PB商品に関しては、国内外の自社グループ工場27工場(うち中国2工場)に加えて、海外の協力工場から調達している。
PB商品の出荷額構成比率は2021年10月期で33.12%とここ数年上昇傾向にある。
このうち、国内の自社グループ工場で製造した商品が約11%で、輸入品が残り約22%となる。
輸入品のうち約半分は中国からで、残り半分を欧米、ASEAN、中南米地域から直輸入しており、輸入先数は約40ヶ国に上る。
特徴としては、各国の代表商品となるような製品の品ぞろえに注力している(イタリアならパスタやピザ、ベルギーではワッフルやフライドポテト、ベトナムではフォーなど)。
同社の強みの1つとして、消費者にとって魅力のある商材を自社グループで開発、製造できるだけでなく、約40ヶ国にわたる国とのネットワークを活かしていち早く発掘し、大量に仕入れることができる調達力を有する点が挙げられる。
なお、生鮮食料品については自社で仕入調達せず各FC店舗の裁量に任せている。


また、同社は自社グループ会社で農畜産物の生産といった第1次産業も手掛けている。
農業に関しては北海道でジャガイモなどを生産しPB商品の原料として使用しているほか、JA(農業協同組合)を通して市場に出荷している。
養鶏業では岡山県で「吉備高原どり」、群馬県で「上州高原どり」の養鶏を行っている。
処理された鶏肉を新鮮な状態で近畿圏や関東圏の「業務スーパー」に出荷しているほか、ウインナーなどの加工品にして出荷している。


為替変動の影響に関して、同社は輸入の仕入れ決済の大半を米ドル建てで行っているため(残りはユーロ、円建て)、円安は仕入れコスト高要因(1円/ドルの円安で年間約4億円)となるが、為替変動リスクを軽減するため、一部為替予約によるヘッジを行っており、ヘッジ部分の損益に関しては営業外収支に計上している。
一方、為替変動に伴うFC加盟店への卸価格の変更はタイムラグが生じるため、急激に為替が変動した場合などは、収益に与える影響も一時的に大きくなる可能性がある。


2. 外食・中食事業
外食・中食事業は、「業務スーパー」で構築された原材料の仕入調達から商品販売に至るまでのローコストオペレーションのノウハウを活かして、現在3つの業態を展開している。
外食業態は、世界のさまざまな料理をバイキング形式で提供する「神戸クック・ワールドビュッフェ」(2021年10月期末:15店舗、うち直営1店舗、平均顧客単価は1,200~1,300円)と、焼肉オーダーバイキングの「プレミアムカルビ」(同10店舗、直営のみ)で、中食業態は、自社グループで製造された食材などを店舗で組み合わせて調理し、でき立ての惣菜やお弁当を提供する惣菜店「馳走菜」(同49店舗、うち直営4店舗)がある。


「馳走菜」は2018年より開始した業態で、特徴としてはパック詰め商品をメインに販売し、提供する商品も売れ筋商品に絞り込むなど、効率性と人手不足に対応したイージーオペレーションを重視した店舗形態になっている点が挙げられる。
店舗当たりの月商は5百万円程度だが、20坪程度あれば出店できるため収益化しやすい。
また、業務スーパー内に出店することで集客力もアップする効果が過去の事例から確認されており、業務スーパーの新規出店と合わせて出店するケースが増えている。


また、2018年より開始した「プレミアムカルビ」の特徴は、焼肉オーダーバイキング&デザートビュッフェとして、女性客を意識した店舗づくりになっている点が挙げられる。
特にジェラートは店内で作っていることもあり好評で、オープン当初から客足も順調に推移しており、店舗当たりの月商は2~3千万円となっている。
現在は、首都圏で直営店舗の運営を行っているが、店舗運営プロセスの標準化を確立した段階でFC展開を進めていく予定である。


3. エコ再生エネルギー事業
2012年より開始したエコ再生エネルギー事業では、主に太陽光発電事業(2021年10月期末の発電能力約32.1MW)を展開しているほか、2018年8月より北海道で木質バイオマス発電(発電能力約6.2MW)による売電を開始している。


4. その他
各事業セグメントに分類されないその他には、観光事業等が含まれている。
観光事業については現在、北海道で観光果樹園の開園に向けた準備を進めている段階にあるが、樹木の育成状況などから開園までにはあと数年はかかる見通しとなっている。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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