焦点:ウクライナ侵攻、若年層がTikTokで見る戦争最前線

Reuters

発行済 2022年03月04日 19:45

更新済 2022年03月04日 19:56

Sheila Dang Elizabeth Culliford

[1日 ロイター] - 2月24日に開始されたロシアのウクライナ侵攻。ソーシャルメディア利用者の最若年層の中には、紛争の最前線を、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」上で体験する人もいる。

窓のないシェルターの中で身を寄せ合って泣き叫ぶ人々や、街なかで生じる爆発、ウクライナの都市に飛来するミサイルの動画が、ふだんはファッションや運動、ダンスの動画が共有されるティックトックを占領した。

ウクライナのSNSインフルエンサーたちは、咲き乱れる花々やレストランで笑う友人といった故郷の平和な思い出を伝える写真と並べて、地下壕で毛布にくるまっている自分の姿や住宅街を走り抜ける戦車など、殺伐とした情景をアップロードした。

彼らはフォロワーに、ウクライナのために祈るよう求め、ウクライナ軍支援の寄付を呼びかけた。特にロシア人ユーザーには、反戦行動に参加するよう求めた。

ティックトックのユーザーの多くは「ジェネレーションZ」と呼ばれる世代の視聴者だ。ロシアが「特殊軍事作戦」と呼ぶウクライナ侵攻という最新の例にみるように、この世代にニュースや最近の出来事を届けるうえでティックトックは中心的な役割を担っている。ティックトックの特徴的なアルゴリズムは、ユーザーが特定の投稿者をフォローしていなくてもトレンドとなっているコンテンツを提供することで有名であり、あるトピックが月間10億人ものユーザーの中であっというまに「バズる」可能性が生まれている。

今回の紛争で同アプリが非常に影響力を持つものになったため、ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシア国民に向けた演説の中で、戦争終結に貢献できる層として「ティックトッカーたち」に訴えかけた。一部のユーザーはこれに反応した。

旅行をテーマとするブログを発信するウクライナのアリナ・ボリックさんは、ティックトック上で3万6000人を超えるフォロワーを抱えている。彼女はエジプト、スペイン、トルコへの旅行のハイライト動画を投稿するのを一時中断し、ロシア軍侵攻下での生活、救急用品満載の非常用リュック、爆発によるガラスの破片から身を守るために目張りをした窓といった動画をアップロードした。28日にティックトックに投稿された動画では、ボリックさんは世界中のフォロワーに向けて、自分がインスタグラムで作成したストーリーを通じて「(ウクライナの)真実を見てほしい」と訴えてもいる。

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ボリックさんはロイターへのメールで、ロシアの行動がウクライナ人を傷つける戦争ではなく単なる「軍事作戦」であるかのように伝えるロシア系ニュースの虚偽情報に対抗したいと思っていると語った。

ティックトック上では、ウクライナ在住の主要インフルエンサーのページで、ミサイルによって破壊された住宅や、空になった食料品店の棚、ガソリンスタンドの外に延々と並ぶ長い車列といった映像が見られた。

200万人のフォロワーを抱える「@zaluznik」も27日にそうした映像を投稿し、「ロシア人よ、目を覚ませ」というキャプションを添えた。

ロシアのインフルエンサーたちもやはりティックトックを使って、自分たちの意見を共有している。76万3000人を超えるフォロワーを抱えるニキ・プロシンさんは24日に投稿した動画で、ロシアの「普通の人々」はこの戦争を支持していないと話している。

プロシンさんは、「私の友人や、私の直接の知り合いの中に、今日の出来事を支持している人はいない」と語った。

ロシアの通信監督当局であるロスコムナドゾールは28日、ティックトックに対し、軍事関連のコンテンツの多くが反ロシア的であるとして、未成年者向けの「おすすめ」に入れるのを止めるよう要請した。ティックトックにコメントを求めたが、現時点では回答は得られていない。

オンラインでの偽情報に注目する研究者らは、今回の紛争では、虚偽の情報が正しい情報と混在したまま、ティックトックやフェイスブック、ツイッター、そしてユーチューブといったサイトで拡散されていると警告している。

先週の時点で、軍事シミュレータービデオゲーム「Arma3」の場面、ガザ地区でのイスラエル・パレスチナ紛争における爆発の画像、重火器による砲撃の過去の映像、飛行する航空機の動画が、まるでロシアによるウクライナ侵攻の映像であるかのようにSNSでシェアされている。

ティックトックの広報担当者は「引き続き、弊社は状況を注意深く監視する。新たなトレンドに対応し、有害なデマや暴力扇動を含む違反コンテンツを削除するためのリソースを強化している」と語り、同社がファクトチェック団体と提携していると述べた。

ウクライナのティックトック利用者の中には、西側諸国の視聴者と情報を共有し、認識を広げることに使命感を抱く人もいる。

マルタ・バシュータさん(20)は28日に受けたインタビューで「これは冗談ではないと理解してほしい。これはウクライナ人が直面する深刻な状況なのだ」と語った。