サイバネット Research Memo(5):2021年12月期業績は海外売上の拡大等により過去最高売上を更新

Fisco

発行済 2022年03月25日 15:35

更新済 2022年03月25日 15:45

■業績動向

1. 2021年12月期の業績概要
サイバネットシステム (T:4312)の2021年12月の連結業績は、売上高で前期比4.8%増の22,697百万円、営業利益で同1.6%減の2,830百万円、経常利益で同0.6%減の2,822百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同14.4%増の1,786百万円となり、売上高は8期連続増収、過去最高を更新し、営業利益は若干ながら減益に転じた。


売上高は企業の研究開発に対する投資意欲が回復するなか、コアビジネスの拡大(取扱製品の拡充、アジア地域の売上拡大)、DX事業の拡大、シミュレーション活用領域の拡大、クラウド・セキュリティ事業の強化等に取り組んだことが増収要因となった。
地域別売上高では、日本が前期比1.2%増の17,403百万円と堅調に推移したほか、アジアが同21.1%増の3,111百万円、北米が同7.0%増の1,381百万円、欧州が同30.6%増の741百万円とすべての地域で増収となり、国内とアジアについては過去最高を更新した。
また形態別売上高では、代理店が前期比3.2%増の17,213百万円、自社開発製品が同2.2%増の3,227百万円、サービスが同23.0%増の2,257百万円となった。
サービスの増収はCAEソリューションサービス事業において前期にコロナ禍の影響で落ち込んでいたエンジニアリングサービスが回復したことが主な増収要因となっている。


営業利益の増減要因を見ると、増収効果と販売ミックスの改善に伴う原価率の低減効果により売上総利益が前期比480百万円増加した一方で、販管費が同527百万円増加したことが減益要因となった。
販管費の主な増加要因としては、海外子会社における人件費とデジタルマーケティング費用の増加が挙げられる。
Maplesoftで学生向けモバイルアプリを含めた新製品を複数リリースしたことによるマーケティング投資を実施した。
なお、2020年12月期は助成金返還引当金繰入額等の特別損失425百万円を計上したのに対して、当期は貸倒引当金戻入額等の特別利益188百万円を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は増益を確保している。
なお、Synopsysとの販売代理店契約終了に関連した損失として、投資回収が困難と判断した資産の減損損失47百万円、韓国子会社の解散に伴う事業整理損8百万円を特別損失として計上している。


(1) セグメント別業績動向
a) CAEソリューションサービス事業
CAEソリューションサービス事業の売上高は前期比5.0%増の18,503百万円と増収となったものの、人件費やデジタルマーケティング費用の増加によりセグメント利益は同2.0%減の4,056百万円となった。


国内売上は、主力製品であるマルチフィジックス解析ツールの新規ライセンス販売が低調だったものの、ライセンス更新契約が堅調に推移したこと、並びにエンジニアリングサービスやDX事業が好調に推移したことで若干の増収となった。
エンジニアリングサービスについては前期にコロナ禍の影響で落ち込んでいた自動車、機械・精密業界向けが回復したほか、建築業界から大型受注を獲得したことが増収要因となった。
また、DX事業については売上規模で数千万円程度とまだ小さいものの、シミュレーションと連携するAI構築ツールやAR開発プラットフォーム等の製品拡充に取り組んだことで、増収率は前期比21.8%増となり順調に成長している。


海外の販売子会社については、中国向けを中心にマルチフィジックス解析ツールや光学系解析ツール等の販売が好調に推移した。
また、開発子会社については、MaplesoftのSTEM※コンピューティング・プラットフォームやSigmetrixの公差解析マネジメントツール、Noesisの最適設計支援ツール等の自社開発製品の販売と技術サポートサービスが収益に寄与した。
前期はコロナ禍によるロックダウンの影響で営業活動の制限を受けていたが、2021年12月期に入ってから営業活動も正常化したことにより、Maplesoft、Sigmetrix、Noesisともに増収となった。


※STEM:Science、Technology、Engineering、and Mathematics(科学、技術、工学、数学)という総合的な分野の総称。



b) ITソリューションサービス事業
ITソリューションサービス事業の売上高は前期比3.9%増の4,194百万円、セグメント利益は同35.4%増の594百万円となった。
コロナ禍で在宅勤務等の新しい働き方が定着するなかでITセキュリティ対策のニーズも増加し、クラウド環境向けセキュリティソリューションとなる「Netscope」や、クラウド型シングルサインオン・アクセスコントロール(IDaaS)ソリューションとなる「OneLogin」の販売が好調に推移した。
また、エンドポイント・セキュリティ製品についてもクラウド型製品の販売が伸長し、クラウド・セキュリティサービスでは前期比64.1%増収となった。


また、医療分野における自社開発製品「EndoBRAIN®」シリーズ(AIを搭載した大腸内視鏡画像診断支援ソフトウェア)についても、機能強化(ユーザーインターフェースの強化、及び精度の向上)に取り組んだことで堅調に推移した。
EndoBRAIN®-EYEは、オリンパス (T:7733)製の汎用型大腸内視鏡で撮影された画像をAIが解析し、病変を検出すると警告を発して医師による病変の発見を補助するソフトウェアとなる。
2020年に管理医療機器(クラスII)として承認され、オリンパスが大腸内視鏡とセットにして同ソフトウェアを医療機関に販売している。


(2) 業種別、契約形態別売上動向(単体ベース)
単体ベースの売上高は前期比0.9%増の17,261百万円となった。
顧客業種別の売上動向を見ると、電気機器が前期比4.8%減と減少傾向が続いた一方で、機械・精密機器が同2.4%増、輸送用機器が同9.0%増、その他製造業が同0.8%増と増加した。
また、教育・官公庁は同5.5%減と減少したものの、情報・通信が同13.5%増、その他が同2.5%増となり、非製造業分野合計では同2.5%増と拡大基調が続いており、売上構成比率も2018年12月期の27.5%から28.6%と上昇した。


業種別の増減要因について見ると、電気機器についてはSynopsysとの代理店契約終了の影響により減収となった。
一方、機械・精密機器、輸送用機器についてはエンジニアリングサービスの回復が増収要因となった。
教育・官公庁向けについては前年にAnsys製品の大型ライセンスを受注した反動で減収となった。
また、情報・通信、その他についてはクラウド・セキュリティ製品の販売拡大が主な増収要因となっている。


単体ベースの契約形態別売上高の動向について見ると、ライセンス形態のうち新規契約については、前期に大型契約があった反動減に加えて、Synopsysとの販売代理店契約を終了したことも影響して、前期比11.0%減の4,399百万円となった。
一方で、更新契約については同2.9%増の10,532百万円と堅調に推移した。
Synopsys製品の更新契約は上期に偏重していることから、2021年12月期のマイナス影響は軽微だったと見られる。
また、ライセンス形態以外の売上高は、前期比20.7%増の2,329百万円とコロナ禍前の水準まで回復した。
エンジニアリングサービスが復調したことなどが要因となっている。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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