不二精機 Research Memo(3):高精度プラスチック金型技術を武器に事業展開(2)

Fisco

発行済 2022年03月28日 16:03

更新済 2022年03月28日 16:15

■会社概要

2. 事業内容
不二精機 (T:6400)は、現在は射出成形用精密金型及び成形システム事業と精密成形品その他事業の2事業で事業展開している。
射出成形用精密金型及び成形システム事業において高度な金型設計ノウハウと加工技術を有し、1)ハイサイクル、2)多数個取り、3)不良率・バラツキの極小化、4)長寿命、を特徴として高付加価値な精密金型製造を行っている。
具体的には精密・高品質が求められる透析装置であるダイアライザーや注射器、製品コストの削減も求められる食品用キャップ・容器等がある。
また精密成形品その他事業では、精密金型の競争力を活用し、参入障壁の高い自動車関連部品分野に絞り事業展開している。


2021年12月期における売上構成は、射出成形用精密金型及び成形システム事業が38.0%、精密成形品その他事業が62.0%となっている。


(1) 射出成形用精密金型及び成形システム事業
射出成形用精密金型及び成形システム事業は、「精密プラスチック金型の不二精機」を前面に掲げ、ハイサイクル、多数個取り、不良率・バラツキの極小化、長寿命な精密成形用金型を強みに、事業を展開してきた。
その代表的な製品がCD用プラスチックケース向け精密金型並びに周辺機器を組み合わせた成形システムである。
CDは1979年にソニーグループ (T:6758)とRoyal Philips (NYSE:PHG)が共同開発を進め、1982年に生産が開始された。
同社は当初よりCDケース用精密金型に関わり、CDケース用金型を開発した。
1995年には量産タイプを開発し、周辺装置と組み合わせ成形システムとして輸出販売も開始して事業を拡大した。
「ディスクケース」成形ではミクロン精度の金型が必要で、さらに低コスト化の要求もあり、ハイサイクル、多数個取り技術、さらに長寿命の金型が必須で、同社の精密金型システムの採用が広がった。
CDケースは、2000年12月には当時の同社売上高の50%を占めていたが、光ディスクからiPod、スマートフォン、さらにはネット配信の普及により激減した。
CDケースは今でも古い金型で製造されており、情報関連向け精密金型市場はほぼないに等しい売上にとどまる状況となっている。


同社は、CDケースで培った金型技術を生かし、1997年9月に現在の主力となる注射器用精密金型を開発した。
その後、ダイアライザー、シャーレ、点滴用品などの医療分野へ大きく舵取りを変化させた。
2021年12月期において、医療用・食品容器用精密金型の売上高はダイアライザー向け等を中心に2,093百万円、売上比で73.7%を占めている。
一方、2002年12月期に6割を占めた光学・家電関連は2021年12月期では売上比2.7%程度の水準となった。


(2) 精密成形品その他事業
精密成形品その他事業は、精密金型で培ったノウハウを生かすため、2001年1月にタイにTHAI FUJI SEIKI Co.,LTD.を設立したことに始まる。
同年9月に中国上海、2002年3月には蘇州と、相次いで精密成形品の生産拠点を設けた。
当初の成形品はCDケース、デジカメのオートフォーカスレンズ鏡筒部品が中心だったが、CDの衰退により蘇州工場は業績が急降下し、2014年にすべてを譲渡し撤退した。
CDケース事業の減退が同事業全体の足を引っ張り、同事業の収益は蘇州撤退時の2014年12月期まで不安定な状況が続いた。


一方で、非情報関連の拡大を目指し、長期的に安定した需要分野として自動車関連事業をターゲットとした。
タイで納入していた精密金型の技術力が評価され、本田技研工業 (T:7267)系の日立Astemo(株)(旧 (株)ケーヒン)に2輪向けインジェクター(エンジンとスロットルボディやキャブレターと接続する樹脂製パーツ)成形品を納入したことが始まりである。


2011年にはタイの大洪水で大損害を被ったが、住友電装(株)向けにワイヤーハーネスの留め具なども供給し、日系自動車部品現地法人向け中心に、2輪向けに加え4輪向けにも安全保安部品などの小物自動車部品成形品が拡大してきた。
年々4輪向けの売上比率が高まり、現在は2輪向けに並ぶ勢いとなっている。
2021年12月期の同事業の売上高4,630百万円の中で、2輪・自動車関連部品成形品は3,504百万円(前期比30.5%増)、売上比75.7%を占めている。


同部門の収益力が2019年12月期まで安定してきたのは、蘇州からの撤退に加え、先行投資負担が大きかったインドネシア子会社(9月決算)の売上が順調に拡大し、2016年12月期に営業黒字化、2017年12月期には経常黒字化したことが寄与している。
なお2020年12月期は、コロナ禍による影響により一時的に収益が落ち込んだものの、2021年12月期は売上高1,252百万円となり、設立以来の最高額更新となった。


3. 同社事業を取り巻く環境
同社が属する金型製造業界は、経済産業省「工業統計調査」によると2019年時点で業界全体の出荷額が1兆3,602億円※1となっている。
同業界で最大の出荷規模を誇るのがプレス用金型で、5,109億円※2(構成比37.6%)、同社が製造しているプラスチック用金型の出荷額は4,108億円※2(同30.2%)と、用途別では2番目に大きい。
しかし金型業界全体の推移を見ると、バブル期の1991年の出荷額1兆9,575億円をピークに徐々に業界全体が低迷した。
リーマンショック後の2011年には1兆1,590億円まで落ち込み、現状は1991年の出荷額の69.5%水準となっている。
この間、金型製造事業所も減少を続けており、1990年に12,815事業所あったものが、2019年には6,696事業所と52.3%水準となっている。
この背景には主力産業の国内生産の低迷、またグローバル化による海外での金型生産並びに汎用製品での海外金型企業への調達増などが影響している。
なお、規模別では9人以下の零細事業所が半減している一方で、100人以上の事業所数は88事業所程度を維持しており、技術力のない中小企業が淘汰されている。


※1 金型製造業界全体の出荷額は、1人以上の事業所から算出
※2 プレス用金型、プラスチック用金型は4人以上の事業所の数値


同社の射出成形用精密金型及び成形システム事業も、世界シェアが高いCDケース用射出成形用精密金型事業が縮小するなかで、精密金型において医療機器の開発・製造・販売など、他社の参入が難しい分野に活路を見出す。
また精密金型技術を生かした精密成形品その他事業でも、金型のメンテナンスも含めた形で、東南アジア中心に拡大する自動車産業向けに、プラスチック精密成形品の展開に注力し事業拡大を目指す。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)


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