日経平均は反発、6月のグロ−ス株は大型と中小型で明暗分かれる?

Fisco

発行済 2022年06月01日 12:10

 日経平均は反発。
192.69円高の27472.49円(出来高概算6億1131万株)で前場の取引を終えている。


 連休明け5月31日の米株式市場でNYダウは222.84ドル安と7日ぶりに反落。
欧州連合
(EU)の対ロ追加制裁に伴う原油高でインフレ懸念が再燃し、下落スタート。
前週に大きく上昇していた反動で利益確定売りも重石に。
石油輸出国機構(OPEC)加盟国が生産協定からのロシア排除を検討との報道で原油価格が下落すると、上昇に転じる場面もあったが、終日方向感に欠ける展開で結局下落した。
ナスダック総合指数も-0.41%と4日ぶりの反落。
一方、前日に週明け急伸後の過熱感を冷ましていた日経平均は15.83円高からスタート。
為替の円安進行や米長期金利の上昇を支援要因に輸出企業や金融株に買いが入るなか、前引けまで順調に上値を伸ばす展開となった。


 個別では、円安進行を手掛かりにトヨタ自 (TYO:7203)や日産自 (TYO:7201)、SUBARU (TYO:7270)が大幅に上昇。
なお、トヨタ自はレーティング格上げも追い風となった。
IHI (TYO:7013)や三菱重 (TYO:7011)、川崎重 (TYO:7012)など機械関連は軒並み急伸。
JAL (TYO:9201)、JR東海 (TYO:9022)、パーク24 (TYO:4666)などのリオープン関連も全般高い。
米長期金利の上昇を支援要因に三菱UFJ (TYO:8306)、第一生命HD (TYO:8750)など金融も買い優勢。
海運では川崎汽船 (TYO:9107)が大きく上昇。
高水準の自社株買いを発表したACCESS (TYO:4813)が東証プライム市場値上がり率トップとなり、第1四半期が大幅増益となった菱洋エレク (TYO:8068)やトリケミカル (TYO:4369)も上位にランクイン。
自社株買いと併せて自社株消却も発表したアンリツ (TYO:6754)も大きく上昇した。


 一方、レーザーテック (TYO:6920)や東エレク (TYO:8035)の半導体関連株が下落。
レーティング格下げを受けてイビデン (TYO:4062)が急落し、関連企業の新光電工 (TYO:6967)も連れ安の展開。
ほか、ベイカレント (TYO:6532)やSHIFT (TYO:3697)のグロース(成長)株の一角が大きく下落しており、オリンパス (TYO:7733)、テルモ (TYO:4543)も軟調。
原油先物価格の上昇一服でINPEX (TYO:1605)は利益確定売りに押されて大幅に下落している。


 セクターでは輸送用機器、水産・農林、保険を筆頭にほぼ全面高となった。
一方、鉱業、精密機器、鉄鋼の3業種のみが下落となった。
東証プライムの値上がり銘柄は全体の82%、対して値下がり銘柄は16%となっている。


 前日の米国株が小幅に下落していた中でも、前場の日経平均は堅調推移。
円安進行に加えて、前日に実施されたMSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)の定期銘柄見直しに伴う指数連動型パッシブファンドの売り需要がなくなったこともあり、あく抜け感も支援要因になったようだ。
日経平均は寄り付きから上げ幅を広げ、先週まで上値抵抗線だった25日、75日線からの上方乖離幅を広げている。


 一方、気掛かりなのはグロース株の動向。
前日のナスダックは4日ぶりに反落したものの、一時プラス圏で推移する時間もあるなど、底堅い動きだった。
また、アマゾン・ドット・コムが4%高となるなど、強い動きも散見された。
しかし、東京市場では、ベイカレントやSHIFTなどグロース株の代表格が前日に続き大きく下落。
週初に10%超も急伸した上昇分をほとんど全て吐き出す格好となっている。


 前日に発表されたユーロ圏の5月消費者物価指数(CPI)は前年比+8.1%と予想(+7.8%)を上回り、前月(+7.5%)からは大きく伸びが加速。
一昨日に発表されたドイツのCPIに続き、過去最高を記録する形となった。
先週末に2.74%まで低下していた米10年債利回りは連休明けの前日には2.85%まで大きく上昇しており、インフレ懸念が再燃しつつある様子。
3月にピークを打ったとする米国のインフレ動向についても、疑念を抱く市場関係者が増えているようだ。
こうした中、はやくも来週の6月10日に発表を控える米5月CPIに対する警戒感などが高まっていると考えられる。


 6月に入り、いよいよ米連邦準備制度理事会(FRB)によるバランスシートの縮小(QT)も始まる。
既知のこととはいえ、市場への影響を完全に計り知ることは難しいため、QTに対する警戒感も上値抑制要因として働いている可能性があろう。


 また、4月半ばから5月にかけての株式市場の大幅下落を受けて、米国では5月末にかけて年金基金などによるリバランス(資産配分の再調整)に伴う株式買いが入ったとされている。
6月に入り、こうした需給面での下支え期待がはく落することも懸念要素だろう。


 一方、東京市場については、6月は3月期末配当の再投資といった需給面での下支え要因も指摘されている。
直近進んでいた円高も、1ドル=125円台が視野に入るところまでの調整を経て、足元で再び129円台にまで乗せてくるなど円安進行が再び強まっている。
配当再投資と円安再進行を背景に、6月も日本株の意外な底堅さが見られる可能性が高まってきたといえそうだ。


 こうした中、グロース株の復調シナリオに早くも暗雲が垂れ込めてきたとした前日の当欄「~楽観シナリオ再考を迫る要因も」での指摘が、嫌な形ではあるが更に確度を増してしまったと言えそうだ。
期待インフレ率と名目利回りのピークアウト、FRB高官のハト派転換を示唆する発言、などを背景に「バリュー・コモディティ買い」と
「グロ−ス売り」の流れの反転、リターン・リバーサルが長めに続くかと見ていたが、その賞味期限はわずか1-2日程度で終わってしまったのかもしれない。


 ただ、上述したことは大型ハイテク・グロ−ス株について当てはまる可能性が高い一方、東証グロース市場に属する銘柄(主に旧マザーズ銘柄)については、やや話が異なるかもしれない。
というのも、マザーズ指数には6月に上昇しやすいという季節的傾向があることで有名だからだ。


 実際、上述したSHIFTやベイカレントといった東証プライム市場に属する代表的なグロ−ス株が冴えないチャートを描いている一方、弁護士ドットコム (TYO:6027)、Appier Group (TYO:4180)、カオナビ (TYO:4435)、メドレー (TYO:4480)などの好決算を発表した中小型グロ−ス株のチャートは底堅い基調を描いている。
折しも、本日は東証プライム市場への鞍替えを発表したメルカリ (TYO:4385)の急伸がマザーズ指数を押し上げており、このような見方を補強してくれているかのようだ。
グロ−ス株には引き続き厳しい局面が続きそうだが、一部の中小型株ではリターン・リバーサルの継続が見られる可能性があると期待したい。


 後場の日経平均は堅調推移が継続か。
時間外取引のNYダウ先物が堅調に推移しているほか、昨日の米株市場の取引終了後に決算を発表したセールスフォース・ドットコムが時間外取引において急伸しており、ナスダック100先物もしっかりとした動きになっている。
日経平均は節目の27500円を手前に伸び悩む可能性もあるが、下値の堅い展開が期待できそうだ。

(仲村幸浩)
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