エルテス Research Memo(6):増収増益により黒字転換を実現。「内部脅威検知サービス」への需要が拡大傾向

Fisco

発行済 2022年06月08日 15:06

■決算動向

2. 2022年2月期決算の概要
エルテス (TYO:3967)の2022年2月期の連結業績は、売上高が前期比34.8%増の2,682百万円、営業利益が80百万円(前期は333百万円の損失)、経常利益が94百万円(同357百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益が127百万円(同529百万円の損失)と大幅な増収増益により、黒字転換を実現した。
一方、期初予想に対しては、売上高、営業利益が下振れたものの、最終損益は投資有価証券売却益の計上により大きく上振れる着地となった。
重視するEBITDAについても248百万円(前期比674百万円増、計画比108百万円増)と計画を上回る伸びを達成した。


売上高は、2020年12月に買収したAnd Securityの連結効果(約5億円の増収要因)により「AIセキュリティ事業」が大きく伸長したことに加え、主力の「デジタルリスク事業」についても、収益性の高い「内部脅威検知サービス」が伸びてきたことにより増収を確保した。
一方、「DX推進事業」は自治体案件等の獲得に遅れがでたことから減収となった。
なお、売上高全体が期初予想を下回ったのは、上期を中心とするコロナ禍の影響により営業面でやや苦戦したことや、「DX推進事業」における大型案件の期ズレが主因である。


もっとも、四半期業績の推移で見ると、コロナ禍の影響が軽減されてきた第4四半期において、既存事業が大きく拡大し、過去最高(四半期ベース)の売上高、営業利益を更新しているところは、今後に向けて明るい材料となった。


損益面では、成長加速に向けた先行投資(人材採用やマーケティング投資、プロダクト開発等)を継続するも、増収による収益の押し上げに加え、「デジタルリスク事業」の収益性向上、間接コストの見直し(オフィス縮小等)などにより増益となり、営業黒字転換を実現した。
また、投資先※の上場等に伴って、投資有価証券売却益(117百万円)を特別利益に計上している。


※2021年9月28日に東証マザーズ市場(現 東証グロース市場)に上場したROBOT PAYMENT (TYO:4374)。



財務面では、投資先の株式売却等により「投資その他の資産」が減少した一方、「現金及び預金」が増えた結果、総資産は前期末比1.5%増の2,470百万円に増加した。
一方、自己資本は内部留保の積み増しにより同10.3%増の1,353百万円と大きく増加したことから、自己資本比率は54.8%(前期末は50.4%)に改善した。
なお、既述のとおり、2022年4月21日にラック等を割当先とする第三者割当増資(約8億円の資金調達)を決議している。


事業別の業績は以下のとおりである。


(1) デジタルリスク事業
売上高は前期比10.3%増の1,924百万円、セグメント利益は同109.9%増の718百万円と増収増益となった。
売上高は、「ソーシャルリスクサービス」が堅調に推移した一方、経済安全保障やコーポレート・ガバナンスへの意識の高まりなどを背景として、収益性の高い「内部脅威検知サービス」が順調に伸びてきた。
特に、第4四半期の売上高が伸びたのは、「内部脅威検知サービス」の伸びによるところが大きく、今後の事業拡大に向けても明るい材料となった。
他方、導入しやすい安価なSaaSプロダクトについては、マーケティングが苦戦し伸び悩んだ。
損益面でも、高収益プロダクトの伸びや内製化によるコスト見直しにより大幅な増益を実現し、セグメント利益率は37.3%(前期は19.6%)と大きく改善した。


(2) AIセキュリティ事業
売上高は前期比255.9%増の723百万円、セグメント損失は52百万円(前期は50百万円の損失)と大幅な増収ながら損失幅は僅かに拡大した。
And Securityの連結効果が大幅な増収に寄与したほか、積極的な新規開拓営業により22社の新規受注の獲得にも成功している。
一方、警備業界向けデジタルプロダクトはAIKシリーズ(「AIK order」「AIK sense」等)の拡大に注力し、登録数の拡大などで一定の成果を残したものの、本格的な業績寄与には至らなかった。
損益面では、引き続きデジタルプロダクトの開発やマーケティングへの先行投資により、セグメント損失の状態が継続している。


(3) DX推進事業
売上高は前期比11.2%減の38百万円、セグメント損失は65百万円(前期は101百万円の損失)と減収ながら損失幅は改善した。
企業向けのサービス提供が進捗した一方、デジタルガバメント関連については、包括連携協定を結んだ岩手県紫波町との取り組みは順調に進展しているものの、主要な事業者の候補者に選定されている「スーパーシティ構想」をはじめ、行政・自治体レベルでの議論が長期化したこともあり、想定を下回る水準で推移した。
損益面でも、人材採用投資やプロダクト開発の先行投資により、セグメント損失の状態が継続した。


3. 2022年2月期の総括
以上から、2022年2月期を総括すると、コロナ禍の影響により営業面でやや苦戦したことや、デジタルガバメント関連の案件獲得に遅れがでたところを除けば、おおむね計画どおりに推移したものと評価できる。
特に、外部要因による後押しもあり、高単価でかつ高収益な「内部脅威検知サービス」が伸びてきたところは、業績へのポジティブ・インパクトの大きさの面でも、今後に向けて明るい材料と言えよう。
また、活動面では、岩手県紫波町との連携(DX推進)に加え、2023年2月期に入ってからの相次ぐM&Aや資本業務提携の実現など、事業基盤の構築に向けて大きな前進を図ることができた。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)


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