三和HD Research Memo(4):2022年3月期決算は、売上、利益ともに修正予想を超過し、過去最高を記録

Fisco

発行済 2022年06月15日 15:24

■三和ホールディングス (TYO:5929)の業績の動向

1. 2022年3月期決算の概要
2022年3月期の同社グループを取り巻く外部環境は、コロナ禍の影響が長引いたが、各国でのワクチン接種の普及や追加の経済政策により、総じて回復の動きが見られた。
一方で、急激な経済活動回復に伴う需給逼迫により、原材料の価格高騰や部材の供給不足といったサプライチェーンの混乱、人手不足など企業活動への影響がみられた。
足元ではインフレ傾向の加速を受け、金利上昇等の金融引き締めによる影響が懸念されており、また、変異株の広がりによる中国でのロックダウンやウクライナ情勢の悪化等により、先行きの不透明さが増している。


このような環境下で、同社グループは、「三和グローバルビジョン2020」第三次中期経営計画を1年延長させ2022年3月期までとした。
コロナ禍での適切な対応に加え、コロナ禍で影響を受けた中期経営計画の戦略を完遂するため、引き続き、以下の戦略に取り組んだ。
コア事業の基本戦略として、国内では、各事業分野でのポジション確立による「動く建材企業」としての成長と事業拡大に向けた体制強化に取り組んだ。
米国では、創業100周年を迎えたODCが、コア事業の維持・拡大とともに、周辺事業分野への参入に注力し、2021年4月には横引スライド式ドアの製造販売を手掛けるWon−Door社を買収した。
欧州では、産業用製品のさらなる拡大と欧州全体のデジタル化の推進を図り、2021年10月には産業用製品の施工・メンテナンス事業に強みを持つManuregion S.A.S.(マニュレジオン社)を買収した。
成長事業の基本戦略として、日米欧のサービス事業の強化を推進し、アジア事業の基盤拡充に向け販売・生産体制の再構築、管理体制強化に取り組んだ。
また、サプライチェーンの混乱や原材料の価格高騰に対応して、グループ各社で調達確保と販売価格への転嫁やコスト削減に努めた。


以上の結果、同社の2022年3月期決算は、売上高468,956百万円(前期比9.8%増)、営業利益35,487百万円(同7.3%増)、経常利益34,122百万円(同6.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益22,842百万円(同7.5%増)と、増収増益の好決算であった。
2021年10月に発表した修正予想比では、売上高は2.6%、営業利益も4.4%超過して着地するなど、売上高、利益ともに過去最高を記録した。
売上高では、コロナ禍の影響が落ち着いたことが、増収の大きな要因であった。
営業利益については、原材料価格の上昇分を販売価格の引き上げや数量効果によって補うことで増益を確保した。
以上のとおり、コロナ禍の影響の鎮静化に伴い、同社グループは、再び従来の成長軌道に戻ったといえよう。



日本は堅調、海外も大幅増収増益で好決算に貢献
2. セクター別の動向
(1) 日本
グループの基幹事業を担う日本(三和シヤッター工業と国内子会社)の2022年3月期業績は、売上高2,364億円(前期比2.7%増)、営業利益244.7億円(同5.0%増)と堅調で、グループ全体の業績を下支えした。
日本の建築市場は大型再開発等も少なく端境期であったが、物流施設は引き続き需要が旺盛であった。
売上高・営業利益の増減要因を見ると、三和シヤッターでは、需要が強い物流倉庫やメンテ・サービスの回復などにより増収となり、材料費が予想以上に上昇したが、売価アップに取り組むことで増益を確保した。
一方、グループ会社は好調で、三和システムウォールと鈴木シャッターが数量増により増益となるなど、日本の増益に大きく貢献した。
この結果、日本の営業利益率は前期の10.1%から10.4%に上昇し、引き続き同社のセクター中で、最も高い利益率を維持している。
日本では、製造、施行から、メンテ・サービスまでの事業を一貫して行っていることが、高い利益率の理由のようだ。


(2) 米州(ODC)
米国事業を担うODCの業績は、売上高1,392億円(前期比18.7%増)、営業利益83.8億円(同8.3%増)と、日本を上回る増収増益であった。
好調な住宅市場を背景に増収となり、原材料価格の高騰分は売価転嫁と生産性改善等により対応、サプライチェーン混乱の影響を受けながらも増益を確保した。
ただ、原材料価格の大幅な上昇に伴い、営業利益率は前期の6.6%から6.0%に低下している。
なお、米国では、日本と異なりサービス事業が少ないことも利益率が低い要因の一つである。


(3) 欧州(NF)
欧州事業を担うNFでは、売上高858億円(前期比18.9%増)、営業利益39.4億円(同27.3%増)と、大幅な増収増益で、堅調な業績であった。
コロナ禍からの住宅市場の需要回復により増収となり、数量増効果と売価転嫁、生産性改善等により利益も大きく改善した。
以上から、営業利益率は、前期の4.3%から4.6%へと上昇した。
ただ、欧州では国別にコストがかかっていることから低めの利益率にとどまっている。


(4) アジア
2020年3月期より連結対象となったアジアでは、売上高は77億円(前期比16.3%増)、営業利益1.2億円(前期は5.4億円の損失)と、上海宝産三和やビナサンワの回復によって黒字転換を果たしたが営業利益率は1.6%にとどまっている。


3. 財務状況と経営指標
2022年3月期末の総資産は、主に仕掛品が減少したが、売上債権や原材料等の棚卸資産及び買収に伴う固定資産の増加などにより、前期末比11,077百万円増加の386,237百万円となった。
負債は、主に仕入債務が増加したが、社債の償還などにより、同10,846百万円減少の182,925百万円となった。
また、純資産は、主に利益剰余金の増加などにより、同21,924百万円増加の203,311百万円となった。


以上の結果、自己資本比率は前期末比4.3ポイント上昇の52.2%となった。
東証1部 2021年3月期決算短信集計の全産業平均31.2%を大きく上回る。
DEレシオも前期の0.36倍から0.23倍に低下しており、十分な安全性を確保している。
また、同社のROA(総資産経常利益率)は9.0%、ROE(自己資本当期純利益率)も12.0%で、いずれも全産業平均の3.5%、7.2%を大きく上回り、高い収益力も兼ね備えていると評価できる。


2022年3月期のキャッシュ・フローの概況を見ると、2022年3月期末における現金及び現金同等物は、前期末に比べ26,398百万円減少し61,397百万円となった。


営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税金等調整前当期純利益の計上などにより20,526百万円の資金増加(前期は50,144百万円の資金増加)となった。
投資活動によるキャッシュ・フローは、主に子会社株式の取得や固定資産の取得などにより21,353百万円の資金減少(前期は11,177百万円の資金減少)であった。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に社債の償還と配当金の支払などにより27,363百万円の資金減少(前期は6,102百万円の資金減少)となった。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)

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