テクマト Research Memo(3):情報基盤事業、アプリケーション・サービス事業を展開(2)

Fisco

発行済 2022年06月15日 16:03

更新済 2022年06月15日 16:15

■テクマトリックス (TYO:3762)の会社概要

(2) アプリケーション・サービス事業
アプリケーション・サービス事業では、特定市場や特定業界向けにシステム開発、アプリケーション・パッケージ、テスト・ソリューション、クラウドサービス等の事業を展開している。
対象分野としては医療、CRM、ソフトウェア品質保証、ビジネスソリューションの4領域で、売上構成比は各分野ともに20%~30%で拮抗している。
また、新規事業として教育分野のソリューション事業も開始している。


a) 医療分野
医療分野は、新生PSP、医知悟、A-Lineが提供する製品・サービスで構成されているが、売上収益の大半はPSPの事業で占められる。


新生PSPのうち旧NOBORIについては、クラウド型PACSサービス「NOBORI」を主に展開している。
クラウドサービスは初期導入コストが不要なほか、データをクラウド上で安全に管理するため、病院側でデータバックアップ等のメンテナンス業務が不要になるといったメリットがある。
また患者本人の同意と医療施設間の公開設定があれば、他施設の患者の画像やレポートをシームレスに参照することも可能となる。
2012年に「NOBORI」のサービスを開始して以降、既存のオンプレミス(サーバを院内に設置する方式)ユーザの切り替えや、競合他社システムを利用する中規模・大規模病院のリプレイス、小規模医療施設の新規開拓などを進めてきたことにより2022年3月末時点で契約施設数は約1,100施設まで拡大した。
医用画像等の総検査件数は2.48億件、延べ患者数で4,083万人(複数の病院で画像診断を受ける患者はダブルカウントされている)のデータが「NOBORI」のクラウド上に保管されている。
月額利用料は最低5万円からとなるが、料金は導入後5年間に蓄積される画像データの予想量に基づく従量課金制となっており、大学病院等のヘビーユーザではその数十倍となるケースもある(サービス契約期間は5年間)。
サービス開始から11年目を迎えるが、顧客事由による解約(閉院等)を除けばサービス内容を理由とした解約は発生しておらず、顧客からも高い評価を受けている。


そのほか旧NOBORIのサービスとしては、2021年1月より有料サービスを開始した個人(患者)向けのPHR・医療情報共有アプリ「NOBORI」がある。
現在、無料版と有料版(月額100円)を提供しており、無料版はデータ保存期間が1年、有料版は無期限となっている。
共有できる医療情報(カルテ情報、検査画像、薬歴情報等)やサービス内容(予約申込やキャンセル等)については医療施設によって異なる。


一方、旧PSPではオンプレミス型のPACS製品「EV Insite」のほか放射線管理業務システム等の開発販売及び各種ハードウェア製品の販売を行っている。
主軸であるPACS製品に関しては、大規模施設を含む約1,100の医療施設に導入している。
旧NOBORIと競合関係にあったが、両社の顧客基盤や技術基盤は補完関係にあり、両社のリソースを合わせることでシナジーを高め、PACS市場におけるシェア拡大、並びにAIを活用した新規サービスの開発などにも注力し、事業展開を加速していく戦略となっている。


新生PSPのPACS市場におけるシェアは稼働施設数ベースで22%超と富士フイルムメディカル(株)に次ぐ第2位となるが、クラウド型サービスでは約7~8割と圧倒的なシェアを握っている。
医療分野のクラウドサービスでは個人情報保護の観点からセキュリティ対策が重要となるほか、外部保存しているファイルサイズが非常に大きい医用画像をストレスなく院内で参照することが求められるため、ミッションクリティカルなシステムを構築する高い技術力が必要とされている。
旧NOBORIでは情報基盤事業で培ったネットワーク及びセキュリティ分野における豊富な知見と高い技術力、サポート体制を強みにして、こうした課題を解決し顧客の開拓に成功してきた。
旧PSPの既存顧客に対してもこうした強みやクラウドサービスのメリットを訴求していくことで、オンプレミス型からの切り替えを進めていく戦略となっている。


旧NOBORIと旧PSPの業績規模を直前期で比較して見ると、旧PSPが売上収益で約2.3倍、営業利益で約1.8倍大きいが、成長率に関してはクラウドサービスの拡大を背景に旧NOBORIが高くなっている。
また、営業利益率に関しても旧NOBORIが19.3%と旧PSPの15.0%を上回っている。


「医知悟」は遠隔画像診断(読影)を行う放射線科医等の専門医と、画像診断を必要とする医療施設等をつなぐ情報インフラを提供するサービスである。
「iCOMBOX」と呼ばれる専用通信装置を送り手側・受け手側の双方に設置し、「iCOMSERVER(センターサーバ)」を介して送受信するプラットフォームである。
2022年3月末現在で650拠点以上の施設に導入され、利用専門医数は1,400名以上(実質的に稼働している放射線科医の約3分の1が利用)、月間の依頼検査数は約20万件、市場シェアは約34%でトップとなっている。
主な導入施設は、医療施設のほか大手健康診断事業者、衛生検査所、各種病院等である。
また、「NOBORI」ユーザであれば専用通信装置を設置しなくても施設外の画像診断を行うことが可能となっている。


2019年に子会社化したA-Lineは、クラウド型の医療被ばく線量管理システム「MINCADI」を開発・提供している。
「MINCADI」は、医用画像検査装置より得られる情報を自動的に取得し、患者ごとの医療被ばく線量や検査ごとの撮影条件をクラウド上で管理し、最適化するためのソリューションである。
導入施設数ベースの市場シェアは第2位(200施設超)で、数量ベースのシェアは約21%とトップクラスとなっている。


b) CRM分野
CRM分野では、企業の顧客サービス向上を支援するコンタクトセンターCRMシステムをオンプレミス及びクラウドサービスで提供している。
電話、メール、SNS等による「顧客との接触履歴」と「顧客の声」を一元管理し、コンタクトセンター運営を効率化するCRMシステム「FastHelp」のほか、FAQナレッジシステム「FastAnswer」等を提供している。
CRMシステム市場では、パッケージ製品で国内トップシェア、SaaS型ではセールスフォース・ドットコム (NYSE:CRM)が主な競合先となる。
クラウド型サービスの提供に加え、今後はオンプレミスのライセンスについてもサブスクリプション型課金モデルへの移行を進め、ストック型ビジネスの拡大を目指している。


主要パートナーは、(株)ベルシステム24(ベルシステム24ホールディングス (TYO:6183)子会社)のほか、NEC (TYO:6701)や伊藤忠テクノソリューションズ (TYO:4739)など大手システム・インテグレーターであり、各企業のコンタクト(テレマーケティング)センターや顧客サポートセンターで導入されている。
また、医薬品業界で「FastHelp」の導入実績が高いことも特長となっている。
製薬企業では、日本製薬工業協会(製薬協)において提唱されている「くすり相談窓口」を一般向けに設置しており、国内の多くの製薬企業に同社のCRMシステムが導入されている。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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