焦点:ビットコイン採掘業に「冬の時代」、収益悪化で保有分売却

Reuters

発行済 2022年06月30日 18:22

[27日 ロイター] - 暗号資産(仮想通貨)ビットコインのマイニング(採掘)業者が、保有するビットコインの売却を余儀なくされている。ビットコイン価格の下落、電力価格の高騰、競争激化などで収益性が悪化したためで、採掘業界は「冬の時代」を迎えた。

調査会社マクロハイブの調査チームによると、採掘業者が仮想通貨交換所に送るコイン数は今月7日以降、着実に増加しており、「採掘業者が交換所でのコインの処分をどんどん増やしている」様子が読み取れるという。

調査会社アーケイン・リサーチの分析によると、ビットコインの価格が45%暴落した5月に、いくつかの上場ビットコイン採掘業者は売却額の合計が、生成額全体を上回った。

アーケインのアナリスト、ジャラン・メレルード氏は「採掘業は収益性が急激に低下しており、これらの業者は5月に、生み出した額以上のビットコインを売却せざるを得なかった。6月に入って状況はさらに悪化しており、売却額はもっと増えている可能性が高い」と話した。

採掘業者はコンピューターネットワークを駆使してブロックチェーン上の取引を検証することで、報酬としてビットコインを受け取っている。採掘業者は通常、ビットコインを長期保有する「ホドラー(HODLers)」であり、コインメトリックスのデータによれば保有額は全体で80万ビットコイン前後に上る。

2021年にビットコインの価値が4倍以上になったため採掘業界は急拡大した。しかし採掘業者の数が増えると、ビットコインを生成する難易度を示す「採掘難易度」が上昇する仕組みとなっているため、業界は急成長で利幅が一段と圧迫された。

「過去6カ月間にビットコインの価格が下落する一方、ハッシュレート(採掘速度を示す指数)と採掘難易度は上昇した。これらはいずれも利幅を圧縮する働きをするため、既存の採掘業者にとってはマイナス要因だ」と、採掘企業ブロックウェア・ソリューションズのアナリスト、ジョー・バーネット氏は指摘した。

エネルギー価格の高騰も採掘業者の打撃となっている。ケンブリッジ・ビットコイン電力消費量指数によると、いくつかの推計では採掘業界の電力消費はフィリピン1カ国を上回る。

DAダビッドソンのシニア調査アナリスト、クリス・ブレンドラー氏は「現時点では、非常に低コストの電力エリアでなければ事業を停止せざるを得ない」と話す。

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採掘業界ではビットファームズ、ライオット・ブロックチェーン、コア・サイエンティフィックなどの業者がビットコインの売却を公表。ビットファームズの最高経営責任者は同社が「日々生成するビットコインをもはや『ホールド』していない」と述べ、「ホドラー」ではなくなっていると説明した。

上場採掘業者の株価はビットコイン以上に打撃を受けている。ビットコインの下落率が53%なのに対して、バルキュリー・ビットコイン・マイナーズETFは第2・四半期に59%下落した。

ビットファームズを含む一部の採掘業者は、収益を資金調達の交渉に活用し、運営資金や高価な採掘機器の支払いに充てている。

ブレンドラー氏によると、採掘業者がこれら数百万ドル(数億円)相当の装置の代金の3分の2、さらには70%を支払い済みの場合、残額の支払いを逃したくないため、融資の獲得に必死になるという。

ビットコインを大量保有する採掘業者による売りも、ビットコイン価格を圧迫する要因になっていると指摘するアナリストもいる。

<生き残れば光も>

旧式で電力消費の多い装置を使い、強力なバランスシートや上場企業の融資へのアクセスを持たない採掘業者はすでに苦境に立たされている。

グラスノードのデータによると、ビットコインの採掘難易度は今週2.35%低下しており、採掘業者の一部が装置を停止し、業界内で調整が起きたことが分かる。

操業を諦めていない採掘業者にとっては、プレッシャーが幾分和らぐことになる。