日経平均は4日ぶり大幅反落、CPI前に神経質な展開、あく抜け感は高まりづらいか

Fisco

発行済 2022年07月12日 12:07

 日経平均は4日ぶり大幅反落。
449.54円安の26362.76円(出来高概算5億2051万株)
で前場の取引を終えている。


 11日の米株式市場でダウ平均は164.31ドル安(-0.52%)と続落。
新型コロナ感染拡大で中国地域の一部が再び都市封鎖入りし、世界経済の後退懸念が再燃。
今週発表されるインフレ指標や企業決算シーズンを前に警戒感からの売りも強く、終日軟調に推移した。
ナスダック総合指数は-2.25%と6日ぶりに大幅反落。
米国株安を引き継いで日経平均は111.30円安からスタート。
朝方から売りが先行し、前場中ごろには下げ幅を500円近くにまで広げた。
その後は下げ渋ったものの、アジア市況やダウ平均先物が軟調ななか戻りは鈍く、安値圏での底這いが続いた。


 個別では、米ハイテク株安を受けてソフトバンクG (TYO:9984)のほか、レーザーテック<
6920>、東エレク (TYO:8035)などの半導体関連株、村田製 (TYO:6981)、TDK (TYO:6762)の電子部品株が総じて売り優勢。
中国経済の減速懸念からキーエンス (TYO:6861)、ファナック (TYO:6954)、SMC (TYO:6273)、安川電機 (TYO:6506)などのFA関連が大きく下落。
エムスリー (TYO:2413)、ZHD (TYO:4689)
のグロース(成長)株も軒並み安い。
コマツ (TYO:6301)、ナブテスコ (TYO:6268)、住友鉱 (TYO:5713)などの景気敏感株も全般下落。
決算を発表したところではライク (TYO:2462)、リソー教育
(TYO:4714)、ローツェ (TYO:6323)、技研製作所 (TYO:6289)、東京個別 (TYO:4745)などが大幅に下落している。


 一方、7&IーHD (TYO:3382)、NTT (TYO:9432)、武田薬 (TYO:4502)のディフェンシブ銘柄、コナミG<
9766>、任天堂 (TYO:7974)のゲーム関連が堅調。
東証プライム市場の値上がり率上位には、第1四半期営業利益が市場予想を上回ったローソン (TYO:2651)、前期実績下振れで今期計画が市場予想をやや下振れもあく抜け感が先行したコスモス薬品 (TYO:3349)、通期計画を上方修正した進和 (TYO:7607)などがランクインしている。


 セクターでは機械、電気機器、非鉄金属を筆頭にほぼ全面安。
水産・農林、電気・ガス、保険の3業種のみが上昇となっている。
東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の91%、対して値上がり銘柄は7%となっている。


 先週5日続伸と負けなしで強い動きを見せたナスダックは、週明けは一転して6日ぶりに大幅反落。
東京市場でも、先週まで強いリバウンドを見せていたグロース株の多くが週明けから2日連続で大きく下落している。


 米10年債利回りは依然として落ち着いた動きを続けているが、13日に発表が予定されている、40年ぶりに過去最高を更新する見通しの米6月消費者物価指数(CPI)を前にさすがに騰勢一服の展開を強いられている。
指標発表前の買い戻しは先週の間に一巡していたようだ。


 その米CPIについては、米政府から「高い数値になるだろう」とのコメントが出ている。
市場予想ではエネルギー・食料品を含む総合で前年比+8.8%と前月(+8.6%)から加速する見通しで、すでにある程度は織り込まれているだろう。
また、米政府は同時に「7月に入りエネルギー価格は顕著に下落し」、「(今後も下落継続が想定されるなか)CPIはもはや現状を反映していない」との認識も示したという。


 中国では新型コロナ感染が再拡大するなか、先週頃から国内初のオミクロン株「BA.5」が確認され、更なる感染の拡大および厳しい行動制限の再実施への懸念が強まっている。
世界景気の後退懸念が強まるなか、深刻な供給不足が続く原油先物を除けば資源価格の下落基調は続く可能性が高い。
こうした背景を踏まえれば、米政府の認識は正しいともいえ、CPIが予想を大幅に上回ることがない限り、市場は高い数字をバックミラーとして捉え、ネガティブな反応は限られるだろう。


 また、昨日ニューヨーク連銀が発表した調査によると、1年先期待インフレ率は5月の6.6%から6.8%に上昇した一方、3年先期待インフレ率は3.9%から3.6%へ、5年先期待インフレ率は2.9%から2.8%へとそれぞれ低下した。
米連邦準備制度理事会(FRB)は消費者のインフレ期待を制御できなくなることを懸念しており、長期の期待インフレ率が低下したことは安心材料となる。


 一方で、FRBのパウエル議長は利上げを緩めるには、エネルギー・食料品を含むCPI、いわゆる「ヘッドラインCPI」の鈍化傾向を確認することが必要だとしており、CPIが2~3カ月連続で減速しない限りは、利上げペースの鈍化を確実視することは難しいだろう。
そのため、明日のCPIを通過してもあく抜け感が台頭するかは分からず、市場反応は極めて読みづらい。


 既に力強い雇用統計の結果などを受けて、市場では7月米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75ptの利上げを完全に織り込んでいる。
しかし、アトランタ連銀のボスティック総裁は7月会合での0.75ptの利上げを支持すると同時に、仮にインフレ指標が想定以上に悪化した場合には、1.00ptの利上げも選択肢になると言及したという。
投資家は7月:0.75pt、9月:0.5pt、11月以降:0.25ptという利上げペースを想定しているが、仮に7月会合での1.00ptの利上げ観測が高まってしまうと、利上げペースの織り込みも修正を迫られることになる。


 また、期待インフレ率については、FRBが6月FOMCで0.75ptの利上げを決めた要因の一つとなったミシガン大学消費者マインド指数の7月分が今週末に発表される予定だ。

ここでニューヨーク連銀調査に続いて長期期待インフレ率の低下が確認されないとまだ安心できない背景もある。
週末にかけて米中の経済指標の発表が多いこともあり、今週は慎重なスタンスが求められそうだ。


 後場の日経平均は軟調が続きそうだ。
CPIを前にした警戒感がくすぶるなか、今晩の米株市場も続落となる可能性が想定される。
また、景気底入れ期待が高まっていた中国経済の再悪化懸念が高まっており、リセッション(景気後退)懸念も再燃。
さらに、国内でも新型コロナ感染が再拡大しており、リオープン(経済再開)への期待が萎んできている。
ハイテク・グロース株から景気敏感株、リオープンまでほぼ全面安となるなか、けん引役が不在となっており、イベントも前に積極的な押し目買いは期待できないだろう。

(仲村幸浩)
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