日経平均は4日続伸、長期期待インフレ率の低下で買い戻しも懸念要素もちらほら

Fisco

発行済 2022年07月19日 12:09

 日経平均は4日続伸。
188.90円高の26977.37円(出来高概算4億9691万株)で前場の取引を終えている。


 15、18日の米株式市場でダウ平均は658.09ドル高(+2.15%)、215.65ドル安(-0.68%)、ナスダック総合指数は+1.79%、-0.80%だった。
15日は銀行のシティグループや管理医療会社のユナイテッドヘルスの好決算のほか、6月小売売上高のプラス転換が寄与。
7月ミシガン大消費者信頼感指数の長期期待インフレ率が1年ぶりの低水準となったことで、7月における1.00ptの超大幅利上げ観測が後退したことも投資家心理を改善させた。
18日は金融のゴールドマン・サックスや銀行のバンク・オブ・アメリカの好決算を受けて買い先行となったが、7月NAHB住宅市場指数の予想以上の悪化や、スマホ・IT大手アップルの一部新規採用縮小・支出減速が報じられ、引けにかけて売りに転じた。


 連休明けの日経平均は215.36円高で27000円を回復してスタートすると、寄り付き直後に失速し、一時先週末終値近くまで水準を切り下げた。
ただ、半導体などの一部値がさハイテク・グロース(成長)株に買いが入るなか切り返すと、再び27000円を回復。
しかし、その後は再び戻り待ちの売りから同水準を割り込む動きとなり、方向感に欠ける展開となった。


 個別では、郵船 (TYO:9101)や川崎汽船 (TYO:9107)の海運、INPEX (TYO:1605)や石油資源開発 (TYO:1662)
の鉱業関連が大きく上昇。
住友鉱 (TYO:5713)、三井物産 (TYO:8031)、日本製鉄 (TYO:5401)など資源関連・市況関連株が全般強い。
一方、レーザーテック (TYO:6920)やアドバンテスト (TYO:6857)
の半導体関連、JMDC (TYO:4483)、SHIFT (TYO:3697)のグロース株も堅調。
ファーストリテ (TYO:9983)
は引き続き好決算を評価する動きで続伸。
電気自動車(EV)向け省電力センサーの開発報道を手掛かりにソニーG (TYO:6758)が買われた。
北の達人 (TYO:2930)、ベクトル (TYO:6058)は決算が好感されて急伸。
日本国土開発 (TYO:1887)は高水準の自社株買いと中期経営計画の発表を手掛かりに大幅上昇。
Gunosy (TYO:6047)は減益決算ながらもあく抜け感で一時急伸するなど買い優勢。


 一方、レノバ (TYO:9519)、東京電力HD (TYO:9501)など電気・ガス関連が全般軟調。
米シージェンの特許有効性審査を巡る不透明感から第一三共 (TYO:4568)が大きく下落。
武田薬 (TYO:4502)、中外製薬 (TYO:4519)なども安い。
ほか、マネーフォワード (TYO:3994)、ラクス (TYO:3923)など中小型グロース株の一角が弱い動き。
テモナ (TYO:3985)、日置電機 (TYO:6866)、三益半導 (TYO:8155)、サーバーワークス (TYO:4434)、RPAホールディングス (TYO:6572)は決算を材料に大幅に下落。
サインポスト (TYO:3996)は、NTTグループが無人店舗システムの提供を開始すると伝わったことで競争激化が懸念され、急落。


 セクターでは鉱業、海運業、非鉄金属が上昇率上位となった一方、医薬品、電気・ガス、その他製品が下落率上位となった。
東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の57%、対して値下がり銘柄は39%となっている。


 連休明けの日経平均は素直に堅調とは言い難い動きとなっている。
度々27000円台に乗せて強さを見せたかと思いきや、乗せた直後には必ず失速してすぐに同水準を割り込む動きを繰り返しており、むしろ、上値の重さが目立つような印象だ。
日足チャートでは上値抵抗線だった75日移動平均線を上回ってきており、テクニカル面では需給の好転が意識されやすいものの、6月28日に付けた高値27062.31円には届いておらず、上値切り下げ形状を明確に脱したとは言いにくい。


 本日の一部ハイテク・グロース株の堅調さの背景にあるのは、やはり先週末の米7月ミシガン大学消費者マインド指数での長期期待インフレ率の低下が大きいか。
5-10年先期待インフレ率は2.8%と前月の3.1%から1年ぶりの低水準にまで低下した。
6月米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75ptの利上げに至った要因の一つがこの期待インフレ率だっただけに、インフレ懸念を和らげる内容で、目先の安心感を誘っていると推察される。


 しかし、同調査によると、ガソリン価格の低下を背景に現況指数が57.1へと大きく改善した一方、先行きを示す期待指数は47.3と1980年以来の低水準にまで低下。
インフレ・大幅利上げに対する懸念の後退が示唆される一方、景気後退懸念はむしろ強まったと言える内容だった。


 また、現況指数の改善に繋がったガソリン価格についても油断はできない。
先週末、バイデン米大統領はサウジアラビアでサルマン国王らと会談し、原油の増産を要請した。
ただ、今会談では具体的な増産方針は明らかにされておらず、再び原油先物価格が上昇に転じる可能性が残されている。


 さらに、欧州ではロシアとドイツをつなぐ天然ガスの主要パイプラインが定期検査で供給を止められているが、この定期検査の期限は21日とされており、供給が再開されるか否かが注目されている。
そうした中、ロシアの国営天然ガス企業ガスプロムが欧州の買い手数社に対して不可抗力条項を宣言したと伝わっている。


 通常、不可抗力条項は自然災害などの予期せぬ事態が発生した場合に宣言されるもので、不可抗力条項を過去にさかのぼって発動するのは異例だという。
今回のガスプロムの行動は、ガス供給の制限を継続するシグナルを送っている可能性があるともされており、早くも警戒感が高まっている。


 そのほか、米ゴールドマン・サックスやアップルが採用計画の縮小を発表していることも気掛かり。
直近、アルファベットやメタ・プラットフォームズなども採用ペースを減速させているほか、マイクロソフトやテスラに至っては人員削減にも乗り出している。
これまで堅調とされてきた米国経済を支えてきた労働市場には引き続き黄色信号が灯っているといえよう。


 景気後退懸念が強まる一方、インフレ・大幅利上げへの警戒感が後退しているなか、ハイテク・グロース株が相対的に強い足元の物色動向はある意味で合点がいくが、しかし、こちらもリスク要素はある。
今晩は動画配信サービスの米ネットフリックスが決算発表を予定している。
同社は前回決算の際に会員数の減少を発表。
成長期待のはく落により株価が急落し、投資家心理を大いに冷やした。
今回も同様に低調な決算となれば、足元で台頭しているグロース株の復調に冷や水を浴びせることになりかねない。


 後場の日経平均は上値の重い展開か。
米ミシガン大学消費者マインド指数での長期期待インフレ率の注目度は高かっただけに、前場はイベン通過によるあく抜け感で買い戻しが優勢になったとみられる。
しかし、引き続き27000円を明確に上抜けるには材料不足であるほか、買い戻しが一巡してくれば再び売りが優勢になる可能性がある。

明日以降の日米注目企業の決算も前に、積極的な買いは手控えられるだろう。

(仲村幸浩)

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