ネットイヤー Research Memo(5):NTTデータとの協業効果やプロジェクト管理体制の強化により利益体質に転換

Fisco

発行済 2022年07月22日 15:25

■今後の見通し

2. 中期計画の進捗状況
ネットイヤーグループ (TYO:3622)は、2020年3月期から2023年3月期までを「経営基盤の強化」を図る期間と位置付け、収益力の回復を経営の最重要課題として以下の4つの施策に取り組んできた。


(1) 利益体質への転換
同社の単体業績は、2015年3月期をピークに2017年3月期以降は不採算プロジェクトが発生したこともあり、3期連続で営業損失を計上するなど厳しい収益状況に陥っていた。
しかしながら、2019年2月にNTTデータと資本業務提携契約を締結し、事業基盤の再構築に取り組んだことで2020年3月期に黒字転換を果たし、それ以降は順調に増益を続けている。
また、収益率(営業利益率)も2022年3月期は6.0%まで回復した。
一方で売上高については、利益重視の営業活動を推進した結果、2020年3月期以降は緩やかに伸長している。


黒字化と収益率の改善に向けた施策としては、重点顧客への営業活動に注力し、顧客当たり売上高の増加に取り組んだほか、不採算プロジェクトの抑制に努めた。
重点顧客への営業活動に注力したことにより、上位10社の売上構成比は2018年3月期の37.2%から2022年3月期は66.2%へと上昇し(上昇分の大半はNTTデータ向けの売上増による)、営業の生産性向上にもつながった。
また、不採算プロジェクトの抑制については、大型不採算案件(10百万円超の損失案件)が2018年3月期に4件発生したものの、受注リスク管理(受注前段階での要件定義や見積額の精査を厳格に実施)やプロジェクト収益管理の徹底のほか、プロジェクト収益改善対策の仕組みを取り入れた結果、2021年3月期以降は発生していない。


(2) NTTデータとの協業
NTTデータとの資本業務提携を実施して以降、双方の強みを生かした共同開発案件が増加しており、収益回復の要因となっている。
NTTデータグループに入ったことで、流通・小売業界や行政分野での新規開発案件を受注する機会も増加傾向にある。
このため、NTTデータ向けの売上構成比は、2022年3月期の33.1%から中期的には40%台半ばまで上昇することが予想され、今後も同社の収益拡大に貢献する見通しだ。


(3) 社員エンゲージメントの強化
企業の成長の源泉となる人財については、採用・育成の強化に加えて社員エンゲージメントの強化による離職率の抑制に取り組んできた。
具体的には、企業ミッションを再定義し、働きやすさの向上に向けた各種制度の導入※や教育研修の強化、やりがいが高まる案件の受注などを推進している。
この結果、離職率は2018年3月期の26.7%から2022年3月期は12.0%とおおむね業界平均水準まで低下しており、こうした施策の効果が出ているものと評価できる。
従業員数ついてはここ数年減少傾向が続いたが、既述のとおり新卒採用も含め採用を強化していく方針であることから、2023年3月期以降は増加に転じるものと予想される。


※カケモチ社員制度の導入、LGBTに対応した福利制度改定、介護・育児等を想定した柔軟な勤務管理体系の整備、遠隔地勤務制度等を導入した。



(4) サービス開発
インターネット技術の進化に伴い、次々と新たなサービスの開発が進むなか、同社もニーズに合わせて新規サービスの開発・育成に取り組んできた。
POSについては顧客企業数が2020年3月期の8社から2022年3月期は33社に増加するなど、着実に実績を積み重ねている。
また、BtoBのデジタルマーケティング支援サービスについても、顧客企業の支援先が同6部門から16部門に拡大している。
需要が拡大しているWebアプリケーション開発については、人員を同3人から47人に増員して受注能力の拡大を図っており、こうした取り組みも収益力の回復につながっている。



NTTデータとの協業に加え、新規事業の育成により中長期的な企業価値向上を目指す

3. 成長戦略
同社は今後の市場トレンドとして、リアルとデジタルの融合も含めた顧客起点によるDX投資が活発化していくことに加え、SDGsなどの社会課題解決に向けた投資も拡大していくことを想定している。
このような状況の下で同社は、既存事業の成長に加えて、新規事業の開発・育成にも取り組むことで一段の収益成長を目指していく方針だ。
具体的には以下の4点に取り組む。


(1) 強みであるUXで人財の育成・強化に注力する。

(2) オウンドメディアを軸としたサービス開発支援に注力し、NTTデータとの協業を強化していくことで、UXデザインからシステム構築まで提供する。

(3) 顧客体験の変化に伴い、業務改革まで支援するためのサービス提供に取り組む。

(4) 社会課題に対する意識の高まりを受け、課題の解決に向けた事業開発支援に取り組む。


既存事業については、Web構築やデジタルマーケティング支援にとどまらず、需要が拡大しているリアルとデジタルを融合した、顧客起点でのUXデザインやシステム構築に注力する。
リアルとデジタルを融合した新たなUXデザインでは組織・業務改革が必要となるが、顧客企業によってはDX人材が不足していることも多く、BPO(Business Process Outsourcing)のニーズは強い。
また、従来は企業向けが中心であったが、行政のデジタル化が今後一段と進展していくなかで、豊富な取引実績を持つNTTデータとの協業を推進していくことで、自治体向け開発案件の増加も期待される。


一方、新新規事業としては、Shopify関連サービスやPOSに加えて、社会インパクト事業の育成に取り組んでいく。
SDGsへの関心が高まるなか、社会課題解決型の新規事業の立ち上げを目指している企業に対して、サービスデザインやシステム構築、デジタルマーケティング支援等を行うサービスで、将来的には社会起業家とのオープンコラボレーション等も推進していく予定となっている。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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