サイジニア Research Memo(5):ターゲットは成長続く国内EC事業者

Fisco

発行済 2022年08月16日 15:15

更新済 2022年08月16日 15:30

■事業概要

1. 事業領域と市場
サイジニア (TYO:6031)は事業会社3社で構成されており、同社が事業持株会社としてコーポレート機能を担う。
子会社のデクワスがネット広告事業の展開やDSP開発・運営を行い、ZETAがハイエンド向けCXソリューションを提供している。
同社の顧客は、ユナイテッドアローズ (TYO:7606)やアダストリア (TYO:2685)などEC進出が早かったアパレル企業が中心だが、ほかにヤマダ電機 (TYO:9831)や(株)イトーヨーカドー、CROOZ SHOPLIST(株)といったリテーラーも多く、最近では資生堂 (TYO:4911)などメーカーや卸などBtoB事業者、サービス業も増えている。
昨今の小売企業はインターネットに流出する消費者を取り戻す、または流出させないためEC事業を強化しており、「ほしい商品に気づく」「ほしい商品が見つかる」「店舗へとつなげる」というEC事業の本質的な機能をおおよそカバーする同社サービスへのニーズは日増しに強まっている。


同社の属する市場は国内インターネット広告市場とデジタルマーケティング市場で、いずれも同社の顧客が強化を図っている国内EC市場と関連が深い。
国内EC市場は、スマートフォンなどの普及を背景に成長を続けているが、新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、コロナ禍)を契機に、特に物販系分野においてオンラインシフトが進んだ。
経済産業省が発表した「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」によると、2020年の物販系分野の市場規模は12兆円を超え、EC化率も8.08%となった。
しかし、市場規模500兆円、EC化率18.0%という世界のEC市場から見ると、国内EC市場は小さく、依然伸びしろは大きい。
このため、国内経済の伸び悩みを横目に中長期的に成長を続けることが予測されている。


国内のインターネット広告費は、コロナ禍の影響で2020年に一時的に成長が鈍化したものの、2021年には反動増となるなど引き続き高成長を続けている。
なかでも同社が関連する運用型ディスプレイ広告は、国内インターネット広告費の約3割を占めるサービスで、国内インターネット広告費を上回る伸びを示している。
EC市場の拡大を背景に中長期的に成長を継続することが予測されているが、一方で3PC規制※により伸び悩むことも想定されており、同社では3PCに依存しないインターネット広告サービスを開発している。
デジタルマーケティング市場も、ECへの参入企業の増加やEC市場そのものの拡大に伴い、マーケティングツールの導入や周辺システムとの連携、データ統合などの需要が拡大しており、今後もさらなる市場拡大が予測されている。


※3PC(3rd Party Cookie)規制:3PCはウェブサイト閲覧者の行動をトラッキングできる技術で、広く普及している。
しかし、ユーザーのプライバシー保護の観点から3PCの利用に制限が求められており、利用が制限された場合、多くのウェブマーケティング企業やターゲティング広告などのサービスに影響が及ぶことが懸念されている。
ただし、世界的に大きなシェアを占めるウェブブラウザChromeの3PC利用停止措置が当初想定より大幅に遅れ、実施は2024年半ば以降に延長されることが発表された。




EC事業者のデジタルマーケティング戦略を一気通貫で支援
2. 事業内容
同社は、ネット広告サービス、CX改善サービス、OMO推進サービスを展開し、小売などEC事業者のデジタルマーケティング戦略を一気通貫で支援しているため、EC市場成長の恩恵を受けやすいポジションにいる。
以下、各サービスの主な内容である。


(1) ネット広告サービス
ネット広告の主なサービスは「KANADE DSP」とターゲティング広告の「デクワス.AD」で、主な顧客は商品点数の多いECサイトや物件点数の多い不動産ポータルを運営している企業である。
「KANADE DSP」は、多数のアドネットワークへ配信できる国内最大級のDSPサービスである。
独自のユーザー行動履歴解析技術により、優良な見込みユーザーの行動プロセスや誘導したいユーザーの行動シナリオに合わせてパーソナライズされた広告配信を行い、潜在ユーザーを顧客の運営するWebサイトへ送客することで、顧客のブランド認知や優良ユーザーの確保を支援している。
「デクワス.AD」は、独自のAI技術により膨大な潜在ユーザーの中から優良ユーザーを推定し、新規ユーザーを効率的にターゲティングするサービス。


(2) CX改善サービス
CX改善サービスでは、小売など大量の商品を在庫・販売しているECサイト事業者に対し、「ZETA CXシリーズ」などを提供している。
「ZETA CXシリーズ」は、キーワード入力時の表記揺れの吸収やサジェスト機能・もしかして検索・絞り込み・ファセットカウント・並べ替えなど多彩な検索機能を備えたハイエンド型EC商品検索エンジン「ZETA SEARCH」、機械学習による協調フィルタリング・ルールベースフィルタリング・相関など複数のマッチングロジックを組み合わせてパーソナライズする「ZETA RECOMMEND」、総合点・品質・コストパフォーマンスなど複数項目の点数評価やフリーコメントなど多角的な評価軸をもったカスタマーレビュー機能を容易に実装できる「ZETA VOICE」などを組み合わせることで効果を上げるサービスである。
特長として、ECサイト内で必要な商品検索機能・レコメンド機能をすべて備えているうえ、ユーザー視点を意識した設計になっている。
また、アパレル・家電・ショッピングモールなど各サイトに合わせた自由度の高い設計や柔軟なデータ連携を実現、効果測定やA/Bテストを通じた新機能の提案や改善チューニングなど継続的なサポートも提供している。
ユーザーに優れた購買体験を提供できるうえ、顧客の戦略的マーケティングも支援できるため、小売を中心に有力企業が積極的に導入しているところである。
ライセンスによるストック型収益構造のため収益は安定しているが、同時に、ECサイトの高度化を狙う小売業界などのニーズが強いため、ライセンス契約社数の増加や1社あたり契約数の増加、検索数などのトランザクション増加に伴うライセンス契約数の増加、契約増加に伴う限界利益率の上昇などが期待でき、想像以上に成長力の強いサービスということができる。


そのほか、同社が独自開発した複雑ネットワーク理論によるアルゴリズムとリアルタイム解析基盤によるECサイト内レコメンドエンジン「デクワス.RECO」、閲覧している商品のイメージに近い商品を推奨する画像解析AIレコメンド「デクワス.VISION」がある。
これらを導入することで、膨大なデータからサイトユーザーの潜在的な関心・興味を引く類似商品をレコメンドすることができる。
また、売れ筋商品や新着商品、ロングテール商品にも対応しており、ユーザーのEC内回遊率や顧客のEC売上の向上につなげることもできる。
「デクワス.RECO」と連携したパーソナライズメール「デクワス.MAIL」や、ECで購入した商品と相性の良い商品のチラシを同梱する「デクワス.POD」などのオプションサービスもある。


(3) OMO推進サービス
OMO推進サービスには、ローカル検索最適化「デクワス・マイビジネス」と店頭接客DX「ZETA CLICK」がある。
「デクワス・マイビジネス」は、デジタル上の情報管理の先端プラットフォームであるYextのテクノロジーを利用したサービスで、GoogleやFacebook、Amazon、TripAdvisorなど世界約160以上の検索エンジン、SNSサイト、地図、その他メディアなどのインターネットプラットフォームにおいて、顧客が自社の企業情報(ナレッジ)を正確に一元管理することができる。
システムインテグレーションによるマネージドソリューションの組み合わせで、独自の機能を追加することも可能となっている。
「ZETA CLICK」は、実店舗やカタログ・チラシなどにあるQRコード・タグなどスマートフォンを読み込むことでユーザーを最適な情報へ誘導するサービスで、ユーザーは店舗とECの別を意識することなくシームレスな購買体験をすることができる。
主要顧客は、「デクワス・マイビジネス」が個人経営の飲食店などを含む中小規模事業者で、「ZETA CLICK」がアパレルやショッピングセンターなど大量の商品を販売している事業者である。
経営統合の効果として、「ZETA CLICK」に同社特許を活用したスタッフレコメンド成果管理機能が追加された。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)


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