売り方は少なくとも今週いっぱい望み薄

Fisco

発行済 2022年08月17日 12:13

[日経平均株価・TOPIX(表)]

日経平均;29101.33;+232.42TOPIX;1997.35;+15.39


[後場の投資戦略]

 本日の日経平均は7カ月ぶりに29000円台を回復している。
警戒されていた米小売大手企業の決算では、ウォルマートとホーム・デポが揃って市場予想を上回る内容を発表し、株価が大幅高となったことで安心感が台頭。
金利上昇でこれまでけん引役だったナスダック総合指数が小休止する一方、主役交代でダウ平均が相場全体をけん引した。
これを好感し、東京市場でも買い戻しの流れに更に弾みが付いた格好だ。


 足元では、商品投資顧問(CTA)などのトレンドフォロー型ファンドの先物買いが相場上昇を演出してきたが、ここにきて個人投資家による買い戻しも加わっているもよう。
日経ダブルイン (TYO:1357)の買い残は、日経平均が30795円の高値を付けた昨年9月以来の高水準まで大きく積み上がり、買い長になっている。
一方で、日経レバETF (TYO:1570)は8月に入ってから売り長の状態が続いている。
売り目線の個人投資家が増えるなか、相場の上昇が想定以上に続いてきたことで、個人投資家の踏み上げが相場上昇に拍車をかけているようだ。


 しかし、ファンダメンタルズを無視した需給主導の上昇にもさすがに過熱感が出てきている印象。
米・中・欧の3大経済圏で経済指標の予想以上の悪化が続き、景気後退懸念が強まるなか、企業業績は7-9月期以降の悪化が懸念されている。
こうした悪材料はまだアナリストの業績予想などには反映し切れておらず、今後の業績悪化が想定される。
一方、米10年債利回りは8月1日に付けた2.57%をボトムに足元では2.8%台まで回復。
金利の低下トレンドは一服したとみられ、再度、金利上昇による株価バリュエーションの下押し圧力なども警戒される。
こうした中、既に29000円を回復してしまった日経平均にどのような一段の上昇材料があるのか、需給要因以外ではなかなか思いつかない。


 頼みの綱の需給要因についても、リバウンドが始まった7月半ばから1カ月が経ち、日柄的にはそろそろ一服してきてもおかしくないだろう。
今週末には米国版SQ(特別清算指数)算出を控えているが、これを過ぎた来週あたりからは基調の転換に注意し始めた方がよいだろう。
日米ともに株価指数が大きく水準を切り上げてきた中でも、半導体関連だけは取り残されているのも気掛かりだ。
産業のコメとも呼ばれる半導体は製造業としての先導性が高く、関連株の軟調が続くなかでの需給主体の相場はいずれ転換せざるを得ないと考える。
個人投資家の踏み上げについても、日経平均が29000円を回復した現状水準からの一段の上昇を見込む投資家は少なく、実際に買い戻しに転じる向きは限られるのではないだろうか。


 後場の日経平均は29000円台でのもみ合いか。
昨日は現物株も先物も共に売買高がかなり少なく、直近の指数の値幅程には商いは膨らんでいない。
需給要因以外で相場上昇を期待できる材料も見当たらず、積極的な売買は引き続き手控えられるだろう。
今晩の米国市場では7月小売売上高、ターゲットなどの小売企業決算、連邦公開市場委員会(7月26-27日開催)議事録の公表などが予定されており、様子見ムードも広がりやすいだろう。

(仲村幸浩)
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