サイバネット Research Memo(9):2026年12月期に売上高300億円、EBITDA38億円を目指す

Fisco

発行済 2022年09月01日 15:29

■中期経営計画

1. 中期経営計画の概要
サイバネットシステム (TYO:4312)は長期視点での企業価値向上を実現すべく、2022年12月期から2026年12月期まで5ヶ年の中期経営計画を2022年2月に発表した。
コア技術であるシミュレーション技術に加えてIoT/AR/VR/AIなどの周辺技術も活用することで、モノづくりのDX支援を実現する。
さらにエネルギーや医療、スポーツ、環境・防災、金融分野などモノづくり以外の領域についても事業展開を強化し、シミュレーション技術を通じて様々な社会課題の解決に貢献する方針を明らかにした。


2026年12月期の経営数値目標としては、売上高30,000百万円(2021年12月期比32.2%増)、EBITDA3,800百万円(同23.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,200百万円(同23.1%増)、ROE12.0%を設定した。
営業利益ではなくEBITDAを数値目標としたのは、M&Aの活用も視野に入れているためだ。
M&Aの対象としては国内外問わず、技術コンサルティングやエンジニアリングサービスを提供している企業をメインに検討している。
また、KPIとして自社開発製品・サービスの売上高比率を2021年12月期の24.2%から2026年12月期に40.0%に、海外売上高比率を23.3%から25.0%に引き上げていく。
さらに、事業ポートフォリオの長期的な目標として(2030年頃)、自社開発製品・サービスの売上高比率50%、海外売上高比率40%、非製造業売上比率(単体)50%(2021年12月期実績28.6%)を目標に事業展開を進める方針だ。


2. 成長戦略
長期の企業価値向上に向けた取り組みとして、「トップラインの成長」「高水準の利益率」「積極的な株主還元」の3点に取り組んでいく。
人財投資やM&A等の実施により5年間で売上高を30%伸ばし、また、高付加価値事業の強化と成長投資のバランスを取りながら、EBITDAマージンで12.7%(2021年12月期実績13.5%)と高水準を維持する計画となっている。
株主還元策については、DOE(純資産配当率)で6.0%を目安として安定的かつ継続的な増配を行い、株価水準によっては自己株式の取得等も積極的に検討することにしている。
なお、「トップラインの成長」については以下の4点を重点戦略として掲げている。


(1) 自社開発製品の強化
同社は販売代理店ビジネスのリスクが顕在化したこともあり、自社開発製品・サービスの売上構成比を高めていくことで、販売代理店ビジネスの喪失リスクへの対応と収益性向上を目指す。
自社開発製品については海外のソフトウェア製品開発子会社並びに国内での開発体制を強化して、製品のラインアップ拡充と機能強化による差別化を推進し売上成長を図る。
自社開発製品の売上高は、2021年12月期の32億円から2026年12月期に60億円と約2倍増を目指しており、2022年12月期は35億円の計画に対して第2四半期累計実績で1,820百万円と順調に進捗している。


海外子会社のうち、Maplesoftは教育市場向け教育支援ソフトウェアだけでなく、今後は企業向けの需要を開拓すべくエンジニアリング向け設計計算ツール「Maple Flow」を国内外の大企業向けに導入すべく営業活動を強化する計画である。
また、Sigmetrixについては3次元公差解析ツールの機能強化、Noesisについては欧州、中国の顧客企業に対して汎用型最適設計支援ツール「Optimus」やエンジニアリングサービスを提供していくほか、新製品を開発することで売上成長を目指していく。


(2) アジア事業の拡大
日本の大手製造業向けにシミュレーション技術を提供してきた経験を生かして、アジア事業の拡大を進める。
アジア向け売上高はSynopsys製品の売上がなくなることで2022年12月期に20億円(第2四半期累計実績990百万円)と前期の31億円から一旦落ち込むが、2026年12月期は2倍増の40億円を目指す。
Ansys製品の拡販に加えて、DX事業の展開や現在は国内のみにとどまっているITセキュリティ事業を展開する予定である。


アジア圏では今後も製造業が発展し、製品の設計・開発に関わるシミュレーションに対する需要が拡大していくことが見込まれている。
同社は中国、台湾、マレーシアの販売拠点を中心にして、高度なソリューションサービスを強みにローカル企業の顧客開拓を推進する方針だ。


(3) モノづくりのDX推進など
同社のコア技術であるシミュレーションと最新の開発手法であるMBSEや、IoT、AI、AR/VRなどの先進技術を用いてモノづくりのDX促進を支援していく。
同社はシミュレーションと親和性の高いAIやデジタルツイン、ビッグデータ分析等の技術を有しており、これらを組み合わせた付加価値の高いソリューションを提供できることが強みとなっている。


また、MBSEについては、2018年に専門組織を立ち上げ(2020年に子会社、サイバネットMBSEを新設)、自社開発したMBSEツール「MapleMBSE」や「MapleDOE」を大手メーカーに導入支援するなど国内のリーディングカンパニーとなっている。
特に自動車業界においてはCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング&サービス、電動化)に関する研究開発が活発に行われており、今後もMBSE関連のツールや導入支援サービスの売上拡大が期待される。


(4) SDGs分野などでのシミュレーション技術の活用
同社はSDGsへの取り組みとして、事業活動を通じた貢献に取り組んでいる。
健康をテーマとした取り組みでは、AIを搭載した大腸内視鏡画像診断支援ソフトウェア「EndoBRAIN(R)」シリーズの開発、販売を進めている。
今後の取り組みとしては、製品のさらなる機能強化を進めると同時に販売認可取得国を増やしていくことで、海外売上を拡大する戦略だ。
現在、販売認可取得済みの国・地域は、インド、タイ、ベトナム、香港、韓国となり、今後も認可の取得国を増やす予定となっている。


また、脱炭素社会の実現や環境問題の解決に資するソリューションを開発し、顧客並びに社会の課題解決に貢献する考えだ。
具体的な導入事例としては、水素エネルギーの効率的な貯蔵・運搬に関する課題を解決するためのシミュレーションや、VRの活用によって実寸模型を作成することなくデザインレビューを可能とするソリューション(廃棄物の削減)、UV殺菌装置の性能向上を支援するソリューションなどが挙げられる。
そのほかにもビッグデータ分析とシミュレーション技術を用いて、都市インフラの効率運営支援や金融のコンプライアンス支援などを行う考えだ。


製造業以外の分野でも同社が強みを持つシミュレーション技術を活かせる領域は膨大にあると考えられ、こうした需要を今後積極的に掘り起こしていくことで成長を実現していく戦略となっている。
将来的には売上高(単体)の50%を非製造業分野にすることを目標としている(2021年12月期28.6%)。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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