ホットリンク Research Memo(7):2022年12月期の業績見通しの達成確度は高い

Fisco

発行済 2022年09月06日 16:07

■今後の見通し

1. 2022年12月期の業績見通し
ホットリンク (TYO:3680)の2022年12月期の業績見通しについては、売上高で前期比21.4%増の7,976百万円、営業利益で前期比54.8%減の161百万円、税引前利益で前期比86.8%減の140百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益で前期比87.0%減の99百万円としている。
中期目標の実現に向けた積極投資により、営業利益は前期を下回るが一過性のものである。
各事業において売上ミックスを変化させるなど、事業環境や景気の変動に左右されづらい機動的なアクションにより、足元の業績は計画どおりに進捗している。
既存事業の深化と新たな事業機会の探索による「両利きの経営」を推進しさらなる成長を見込む。
また、技術やネットワークを有する企業に対する積極投資やM&A、事業ポートフォリオの見直しやWeb3分野などの新規事業開発も視野に入れている。
売上高の予想は外部環境の影響を加味して保守的に設定していることから、業績予想の上方修正の発表や通期計画上振れ着地の可能性もあると弊社は予想する。


SNSマーケティング支援事業では、新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、コロナ禍)の影響を考慮し売上高の見込みを保守的に設定している。
しかし、SNSを活用したマーケティングの需要は今後も堅調に膨らむ見通しであり、業界内で大手との取引が増えるなど順調にプレゼンスを強める同社にとっては追い風が続き、今後も売上高は好調に伸びることが予想される。
また、対応媒体の拡大を目的として、ビジュアル探索ツール「Pinterest」の広告運用代行サービスを2022年7月より開始した。
同社の強みであるソーシャルビッグデータとデータ分析力を生かし、アド運用代行や広告クリエイティブデザイン、活用支援コンサルティングサービスを提供する。
同社には、Pinterestアカウントをグロースさせた運用経験者も複数在籍しており、これらの知見を生かすことでさらなる受注の拡大を見込む。


加えて直近ではサービスラインの拡充も進む。
同社は2021年11月、SNS起点で新商品への期待を最大化する「新商品ローンチパッケージ」を提供開始した。
同サービスでは、新商品の発売前、発売後も含めた各フェーズに応じた分析・調査を、データサイエンティストも含めたチームで実施する。
そして、ネットワーク分析やクラスタ分析、深いソーシャルリスニングによって、企画の切り口やターゲットを可視化し、商品がどのような切り口で語られているかを分析する。
これらの内容を踏まえ、発売に向けて期待を高める施策や、発売後の話題を持続させるための企画に落とし込む。
企画の効果を最大化させるため、マンガや動画、ライブ配信など様々なクリエイティブに対応し、インフルエンサーを起用する場合は、データ分析を軸にした同社独自の手法「データエビデンスドキャスティング」を用いて、ブランドとの親和性が高いインフルエンサー候補を洗い出し、成功確率の高いキャスティングを実現する。
広告によって新製品の内容を消費者へ正確に届けることで、そこから発生するUGCによって質の高い認知を生みだす。
同社の強みである「SNSビッグデータ分析」や「UGC創出ノウハウ」を最大限に生かした、プロモーション成果に高い期待が持てる商品となっている。


クロスバウンド事業に関しては、越境EC市場が引き続き好調な成長を継続しており、越境ECプラットフォームのさらなる事業規模拡大をねらう。
ストック型売上の伸び率は好調であるが、フロー型売上に比べて売上総利益率は低い。
しかし、ストック型売上の市場は何十倍にも成長する可能性を秘めており、現段階でシェアを獲得することで、中長期的な収益増加に大きく寄与するものと弊社では考えている。
また、コロナ禍の収束後は訪日外国人が大幅に回復する可能性が高く、インバウンド消費の増加が見込まれる。
帰国後に越境ECを通じたリピート購買も期待されるため、インバウンド・アウトバウンドの両面から売上高の拡大が期待される。
同事業は、中国の「独身の日」の影響により売上が下期偏重となる傾向があるため、第3四半期及び第4四半期はさらなる売上拡大が期待できると弊社では見ている。


2. 好調な事業環境
SNSマーケティング支援事業に関連した国内のインターネット広告市場は成長が加速している。
同社資料にもあるとおり、2019年にはテレビ広告を上回り2021年は2.7兆円まで成長するに至った。
広告を出稿する企業にとっては、訴求したいターゲット層に広告を配信しやすいこと、費用対効果が可視化できることなどから、プロモーション施策の1つとして利用する企業が急速に増えている。
なかでも今後主戦場になると見られるのがソーシャルメディア広告と言われている。
ソーシャルメディア広告市場は右肩上がりの成長を続けており、2021年には7,640億円(前年比134.3%)まで成長した。
ソーシャルメディアでは、ユーザーが商品の感想などを書き込むことで自然発生的に情報が拡散しやすく、結果的に費用対効果の高いプロモーション効果が得られることなどが背景にあると見られる。


このように市場規模が膨らむなか、成長産業として大小多くのプレイヤーがSNSマーケティング業界で競争を繰り広げており、シェアの取り合いは激しい。
ただ、同社は米国子会社であるEffyisの所有を背景としたSNS関連のビッグデータという資産を収集している。
また、それを分析・活用する場面でも長年のノウハウ・実績があり、結果として後に詳述するプラットフォームサービスにおいて大きな強みとなった。
これは短期的にはシェアのさらなる拡大につながり、長期的にはシェアの安定化や価格競争の回避要因になると弊社は見る。
インターネット広告事業は成長産業として投資家の注目度が高く、同社は好調な実績と併せてこうした強みが評価されることで、特に注目を集めることになると弊社は予想する。


また、クロスバウンド事業に関連した中国の巨大消費市場は707兆円規模であり、日本企業にとって重要な市場の1つである。
越境EC消費市場だけでも4.2兆円規模であり、SNSマーケティングが消費需要獲得の重要な役割を担っている。
経済産業省「通商白書2022」によると、中国の実質GDPはコロナ禍前の水準を上回って推移しているが、2021年以降のゼロコロナ政策下での感染再拡大、不動産規制、資源高等を要因として伸び率の鈍化が見られる。
しかし、足元では中国政府による乗用車取得税の減税や地域商品券の配布などの消費刺激施策が実施されており、コロナ禍により先送りされた需要が顕在化している。
これらにより個人消費は持ち直しの傾向にあり、中長期的な拡大市場である点に変わりはない。
同社傘下のトレンドExpressは中国において消費者行動のビッグデータを活用し、事象だけではなくその背景や顧客インサイトを分析することで、トレンドを見据えた顧客戦略を構築しており、足元の好調な受注拡大ペースはさらに高まっていくと弊社は予想する。


3. Web3関連事業の本格立上げ
同社は海外展開をにらみ新セグメントとしてWeb3関連事業を本格的に立上げた。
同事業は、新設した子会社Nonagon Capitalが展開する。
今後の拡張性を調査するためにパイロットファンドとして運用を開始する方針である。
Web3関連事業は両利きの経営における「探索」と位置付けた事業であり、主に投資を通じて新たな事業機会と収益の獲得を目指す。
また、これまでのWeb3分野での取り組み成果・ネットワークを有効活用することに加えて、海外でのネットワーク強化も図る。
なお、リスクマネジメントには細心の注意を払っていく方針であり、東京証券取引所や金融庁とのコミュニケーションを密に行うほか、財務諸表上のリスクを最小化するために各種施策を実践していく。
新セグメントの設置が当期の業績の与える影響は軽微であり、5ヶ年計画においても織り込んではいない。
しかし、成長事業に対するシード段階からの投資であることを勘案すれば、長期的な業績における成長要因となると弊社では見ている。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 欠田耀介)


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