日経平均は小幅に4日続伸、米実質金利の上昇継続から株高に懐疑的見方も

Fisco

発行済 2022年09月13日 12:07

 日経平均は小幅に4日続伸。
47円高の28589.11円(出来高概算4億8902万株)で前場の取引を終えている。


 12日の米株式市場でダウ平均は229.63ドル高(+0.71%)と4日続伸。
8月消費者物価指数(CPI)の発表を控えるなかインフレ鎮静化を期待した買いが先行。
NY連銀が発表した8月の期待インフレ率が大幅低下したことも投資家心理の改善に繋がり相場をさらに押し上げた。
一方、9月連邦公開市場委員会(FOMC)での大幅利上げ観測が根強く、中盤から長期金利が大きく上昇に転じると上げ幅をやや縮めた。
ナスダック総合指数も+1.27%と4日続伸。
米国株高を受けて日経平均は14.1円高からスタートすると、寄り付き直後は一進一退となったが、早い段階で買いが優勢になると9時50分には28659.76円(117.65円高)まで上値を伸ばした。
一方、今晩に発表される米8月CPIを前に模様眺めの向きも強く、その後は伸び悩み、前引けにかけては騰勢を弱める展開となった。


 個別では、連日の原油市況の上昇を受けてINPEX (TYO:1605)、出光興産 (TYO:5019)が買われ、住友鉱 (TYO:5713)、DOWA (TYO:5714)などの資源関連が上昇、大阪チタ (TYO:5726)、東邦チタニウム<
5727>は揃って急伸。
郵船 (TYO:9101)、川崎汽船 (TYO:9107)の海運も堅調。
10月末までに1日当たり入国者数上限の撤廃などを検討との報道でリオープン(経済再開)関連が軒並み高となっており、ANA (TYO:9202)、JR東 (TYO:9020)、エイチ・アイ・エス (TYO:9603)、日本空港ビルデング (TYO:9706)などが高い。
新作ソフトの販売好調が伝わった任天堂 (TYO:7974)は急伸。
決算が好感された正栄食 (TYO:8079)、アイケイケイ (TYO:2198)は大幅高、神戸物産 (TYO:3038)も決算があく抜け感に繋がり買い優勢。
カルビー (TYO:2229)はレーティング格上げで上昇。
ほか、マネーフォワード (TYO:3994)、Sansan (TYO:4443)など中小型グロース株の一角が大きく買われている。


 一方、為替の円安進行の一服で三菱自 (TYO:7211)、SUBARU (TYO:7270)、マツダ (TYO:7261)が大きく下落。
アイシン (TYO:7259)はレーティング格下げが観測されている。
ファーストリテ (TYO:9983)、キーエンス (TYO:6861)、ファナック (TYO:6954)など値がさ株の一角が軟調。
キーエンスなどのFA(Factory Automation)関連株は8月工作機械受注の速報値が前月比でマイナスだったことも影響しているようだ。
株主優待の廃止や今期の減益見通しが嫌気されたシーアールイー (TYO:3458)は急落し、東証プライム市場の下落率トップとなっている。


 セクターではその他製品、陸運、空運が上昇率上位となった一方、精密機器、輸送用機器、保険が下落率上位となった。
東証プライム市場の値上がり銘柄は全体55%、対して値下がり銘柄は39%となっている。


 前日に心理的な節目である28500円と25日移動平均線を回復した日経平均は本日も米国株高を追い風に堅調推移が継続。
7日の75日線、200日線割れからの25日線回復とあって、テクニカル的には一段と底入れ感が強まった形で、強気派を勢いづかせそうだ。


 前日、米国の主要株価3指数は揃って4日続伸となった。
いずれも50日線及び100日線上に回復し、50日線は100日線を下から上抜くゴールデンクロスを示現。
テクニカル面ではこちらも底入れ感が強まっている。


 20日から開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75pt利上げがほぼ完全に織り込まれ、ジャクソンホール会議以降の米連邦準備制度理事会(FRB)高官らの一連の発言で、来年以降の政策動向も大方織り込まれたのではとの見方が足元の株高の背景とされている。
先週7日、6月FOMCの開催直前に0.75pt利上げのリーク報道役を担ったウォールストリート・ジャーナル紙のニック・ティミラオス記者が9月FOMCでの0.75pt利上げの可能性を報じた直後に米金利が低下に転じたことがこうした見方を生んだ。


 しかし、一方で、米10年債利回りは12日、3.36%まで上昇し、6月半ばに付けた3.5%来の高水準を記録。
対して期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)の低下傾向は継続しており、名目金利から期待インフレ率を差し引いた米10年物実質金利は12日、0.94%まで上昇。
新型コロナパンデミック後の最高値を記録し、2018年12月来の高水準となっている。


 このように、株高の根拠とされる背景と債券市場の動きには大きな乖離があり、素直に株高を喜ぶことができない。
米国では今週末がトリプルウィッチング(株価指数先物、株価指数オプション、個別株オプションの3つのデリバティブ取引の決済が重なる日)であり、足元の株高は積み上がったショート(空売り)の買い戻しという需給要因に過ぎないとの指摘も聞かれる。


 米国では、これまでウィッチングが相場の転換点になってくることが多かった。
今回も、足元でウィッチングに向けてショートカバーが進んでいるようだが、ウィッチング通過後の来週からの動向は再び軟化する可能性もあるだろう。
先行きに対する強気派と弱気派の意見を根本的に転換させるような材料が出てこない限り、当面、株価はレンジ相場続きそうだ。
日経平均でいえば、27000円台前半は買い、29000円が近くづく場面では戻り売りのスタンスが有効だろう。


 今晩に発表される米8月CPIではインフレ減速が一段と裏付けられる可能性が高く、週末に向けては株高の勢いがつきやすいとみられている。
ただ、ガソリン価格の低下などを背景とした財・モノにおけるインフレ減速は想定線であり、重要なのは粘着質のあるサービス分野のインフレ動向だ。
この点の懸念については今回のCPIだけで払拭されるとは考えにくく、株高一辺倒に傾すぎるのは、上述のウィッチング後の需給変化の可能性も踏まえて慎重になるべきだろう。
株高の波に乗るのであれば週末までなど期間限定の短期勝負と割り切ることが大事となる。

(仲村幸浩)
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