巴川紙 Research Memo(4):機能紙事業は洋紙、塗工紙、機能紙関連の3つに大別

Fisco

発行済 2022年09月13日 16:04

更新済 2022年09月13日 16:15

■巴川製紙所 (TYO:3878)の会社概要

(3) 機能紙事業
機能紙事業は祖業の電気絶縁紙を含む洋紙関連、磁気乗車券などを含む塗工紙関連、機能性シートを製品化した機能紙関連を展開している。
複写・印刷用製品、情報関連製品、電気絶縁材料、加工用原紙、機能紙製品等を代理店を通じて販売し、紙などに塗工した磁気記録関連製品、印刷・記録関連製品等の塗工紙を鉄道・バス会社、機器メーカー等に直接販売している。


同事業は継続的な洋紙事業の縮小のなかで損失が続いており、構造改善を進め利益化を目指している。
具体的な売上高の開示はないが、既に洋紙事業は売上高比率で10%以下に過ぎず、収益に与える影響は軽微であると言う。
ちなみに連結決算を開示し始めたころの1984年10月期では、売上高451億円の中で洋紙売上は170億円、単独決算の1980年10月期では約200億円の売上高となり、現在はピーク時の1/10程度となっている。
同社は構造改革において、2022年3月に大型抄紙機を全て停機し、小型抄紙機で小回りのきく体制を整えた。
なお、機能性シート事業は成長分野として伸ばす。


機能紙は機能として特殊抄紙技術(異種繊維沿抄紙、含浸、混抄、担持など)を生かし、新機能を有する湿式不織布など機能性シートを製造している。
機能性シートの開発自体の歴史は古く、1960年代初頭からの電気絶縁紙の高性能化を図る目的で合成繊維混抄紙の開発に遡る。
ただし商品化したものはほとんどない。
1980年代前半からの新素材ブームにより再注力し、ステンレス繊維シートやフッ素樹脂繊維シートを開発したものの、コスト面などから大きなビジネスにならずに推移してきた。
なお2016年には、銅繊維シートも開発した。
この銅繊維シートはようやく用途開発に沿い、ユーザー試験、評価を受ける体制ができたという同社のイメージがあり、ステンレス繊維シートもユニット化による付加価値付与など、事業展開はこれからとなる。



指紋認証カードや電子回路基盤内蔵カードなどで事業拡大
(4) セキュリティメディア事業
セキュリティメディア事業は、有価証券印刷やICカード、ポイントカード、プリペイドカード等の製造、加工及び情報処理関連を展開している。
2020年3月31日に昌栄印刷及び同社子会社の日本カード(株)を連結子会社化したことで、2021年3月期より新セグメントとなった(日本カードは、2022年3月期期首より連結対象外となった。
)。
昌栄印刷はわが国では民間で初めて紙幣を製造した会社として知られる。
また同社は日本で4社しかないVISA、Mastercard、JCBカードの製造・発行認定会社となっているが、最近はVISAからPET混抄紙材を使用した非接触ICカードの製造認定を受けるなど、ESG貢献ビジネスも展開している。


(5) 新規開発事業
2020年4月の組織改革で生まれた新事業である。
同社グループの方針として主にiCas関連製品の開発と販売を進めるなかで、事業部に移管する前に新製品が上市されたものなどを売上高として計上している。
その性格上収益の改善を期待されるセグメントではない。
iCasは同社の強みである「抄く(抄紙技術)」と「塗る(塗工技術)」に電気物性のノウハウを融合させ、熱・電気・電磁波をコントロールし、電気電子機器・部品の故障・誤作動防止に貢献する製品群である。
製品ブランド名「iCas」(アイキャス)は「Insulation」(絶縁)、「Conduction」(伝導)、「Absorption」(吸収)、「Sheet」(シート)の頭文字を列記したもので、2015年に統一ブランドとして創設した。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)


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