情報BOX:緊張高まるブラジル大統領選、電子投票が争点に

Reuters

発行済 2022年09月25日 07:15

By Anthony Boadle

[ブラジリア 19日 ロイター] - ブラジルで来月、大統領選挙が行われる。この数十年間で最も国が分断された状況で行われる同選挙では、現職のジャイール・ボルソナロ氏が左派のルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ元大統領を支持率で下回っており、敗北した場合には同氏が結果に異議を申し立てると見られている。

ブラジルの選挙の仕組みと焦点を整理した。

●電子投票

投票用紙を使った不正行為の多発を受け、ブラジルは1996年に電子投票制を導入した。ボルソナロ大統領は、現行制度の下で行われた各種選挙で十数回にわたり当選しているが、大統領再選は厳しいとの世論調査の結果が出始めた昨年以降、電子投票制への批判を強めた。

同氏は、機械にはデータ改ざんのリスクがあると繰り返し主張しているが、不正行為が行われた証拠は提示していない。

またボルソナロ氏は、高等選挙裁判所(TSE)の裁判官を兼任する最高裁判事らが電子投票を擁護していることを非難し、ルラ氏が当選するよう結果を改ざんする可能性があると主張している。

選挙専門家や選挙管理当局者は、テクノロジーの信頼性は高く、不正が検知されたことはないと述べている。

●残りにくい記録

一方で、選挙結果に異論が出た時に、各票に対して紙の記録がないことで監査が困難になると語る選挙専門家もいる。

有権者は、ブラジル国内47万7000カ所の投票所で電子投票機を使って票を投じる。その後、各機ごとの集計結果は紙に印刷され、職員が署名の上、各投票所でそれぞれ公開される。

また各機のデータはUSBドライブに移され、保護されたコネクションを使って首都ブラジリアにある高等選挙裁判所へ送られ、集計される。

国会は昨年、紙を用いた投票制度を再導入するというボルソナロ大統領の法案を否決した。

●トランプ流

トランプ前米大統領の支持者らによる2021年の米連邦議会議事堂襲撃事件に触発され、ボルソナロ氏の支持者らは昨年、最高裁を占領しようとした。

ボルソナロ氏は、2020年の米大統領選の結果が捏造されたと根拠なく主張するトランプ氏を支持し続け、バイデン大統領の当選を世界の指導者として一番最後に認めた。

多くのオブザーバーは、同氏が来月敗北した場合、トランプ氏と同じような手法を取るのではないかと懸念している。

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●「私の軍」

元陸軍大尉であるボルソナロ氏は、政府と軍の境界線を曖昧にし、国の機関の間で緊張が高まっている。同氏はこれまでに、軍を「自分の軍」と呼び、支持者らに軍は「自分側の味方」だと述べたことがある。

また同氏は、政権内の役職に前例のない数の現役・退役軍人らを任命している。これには、内閣の主要ポジションも含まれた。

しかし軍の上層部と関係の深い元当局者数人によると、軍の上層部は元同僚らに、民主的な秩序を乱すようなことに興味はないと請け合っているという。

政治や防衛のアナリストらの多くは、1964─85年にかけての軍政期間中に威信が損なわれたことから、軍は現在では政治意欲を失っていると語る。

1964年の軍事クーデター発生時とは異なり、同国の経済界のエリートらや教会、主要メディアは、軍による政治的干渉を呼びかけていない。

●国外からのオブザーバー

選挙管理当局は、トラブルを予期して記録的な数の国際組織にオブザーバーを派遣し、選挙が公正なものであることを保証するよう要請している。