日経平均は続伸、年末に向けての株価の意外高も念頭に

Fisco

発行済 2022年10月19日 12:12

 日経平均は続伸。
197.73円高の27353.87円(出来高概算4億6972万株)で前場の取引を終えている。


 18日の米株式市場でダウ平均は337.98ドル高(+1.11%)と続伸。
9月鉱工業生産の予想以上の改善を受けて景気減速懸念が後退。
また、銀行大手の好決算に加え、長期金利の上昇も一服したためハイテク株も買われて相場を後押し。
主要株価指数は終日堅調に推移した。
ナスダック総合指数も+0.90%と続伸。
日経平均は69.03円高からスタートすると、米ネットフリックスの決算を好感したナスダック100先物の大幅高を追い風に強含みの展開。
前場中ごろに27371.38円(215.24円高)とこの日の高値を付け、前引けまで堅調推移が続いた。
一方、心理的な節目の27500円手前にした上値の重さも見られた。


 個別では、ソフトバンクG (TYO:9984)が大幅高となったほか、SMC (TYO:6273)、ファナック (TYO:6954)、三菱重 (TYO:7011)、IHI (TYO:7013)の機械・防衛関連、オリンパス (TYO:7733)、テルモ (TYO:4543)
の医療系精密機器、信越化 (TYO:4063)、ダイキン (TYO:6367)の値がさ株などが高い。
ファーストリテ (TYO:9983)はレーティング格上げで大きく上昇。
玄海原発の再稼働前倒しが判明した九州電力 (TYO:9508)が大幅高となり、中国電力 (TYO:9504)、東北電力 (TYO:9506)のほか、イーレックス (TYO:9517)、レノバ (TYO:9519)など電気・ガス関連が軒並み高。
エムスリー (TYO:2413)、ラクス (TYO:3923)などグロース株の一角で上昇しているものが散見される。
フューチャー (TYO:4722)は新規に買い推奨が観測され大きく上昇した。


 一方、商船三井 (TYO:9104)のほか、メルカリ (TYO:4385)、Sansan (TYO:4443)のグロースの一角が軟調。
村田製 (TYO:6981)は中国スマホの下振れに言及する社長インタビューが一部で報じられて軟調。
TDK (TYO:6762)、イビデン (TYO:4062)などハイテクの一角も連れ安となっている。

クレディセゾン (TYO:8253)はシティインデックスイレブンスの保有比率の低下が判明し、大幅に下落している。


 セクターでは電気・ガス、繊維製品、機械を筆頭に全般買い優勢の展開となり、下落したのは鉱業と医薬品の2業種に限られた。
東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の63%、対して値下がり銘柄は31%となっている。


 本日の日経平均は、前日に上抜いたばかりの25日移動平均線をサポートラインにする形でしっかりと続伸。
上値抵抗線だった200日線も上抜いてきている。
同線を本日、
終値でしっかりと超えてくることができれば、テクニカル面は好転し、すでに一巡していると推察される買い戻しだけでなく、新規買いなども誘発してきそうだ。


 米国では先んじて7−9月期決算の発表が始まっているが、今のところ総じて堅調なものが多い印象。
金融大手の決算は一巡したが、貸倒引当金の積み増しが過度な景気後退懸念を招くことはなく、不振の投資銀行業務を純金利収入やトレーディング収益で相殺できているところが多かった。
また、IT大手の決算で前日に皮切りとなった動画配信サービスのネットフリックスは、7−9月期の会員数が会社計画と市場予想をともに上回り、一株当たり利益(EPS)も予想を上回った。
株価は時間外取引で急伸している。
10-12月期見通しは売上高とEPSがともに予想を下回るなど完璧な決算とまではいかなかったが、株価の反応を見る限り、市場は胸を撫で下ろしているようだ。


 全体的な米国企業の決算の特徴として、事前に悲観的ではあっても、蓋を開けてみると予想よりも良いということが多いが、今回の7−9月期決算も、まだ序盤ではあるが、今のところはそうした経験則通りの結果になっている。
今晩の米株式市場では、電気自動車大手のテスラの決算を控えているが、こうした流れに弾みをつけてくれることに期待したい。


 足元の株式市場の懸念材料として、インフレは依然くすぶっているが、もっぱら、最大の関心事は米連邦準備制度理事会(FRB)による遅行データに基づく積極的な利上げが過度な引き締めとなり、景気後退・企業業績の悪化を招くのではないかという点に集まっている。
そのため、今回の7−9月期決算はこれまで以上に事前の警戒感が強く、足元の株式市場の上値抑制要因にもなっている。


 しかし、裏を返せば、年末に向けての株高の地合いが整いつつあるようにも考えられる。
まず、金融引き締めについてだが、フェデラルファンド(FF)金利先物市場は、すでに来年3−5月時点で政策金利が4.9%を超える水準にまで上昇することを織り込んでいる。
多くのFRB高官が政策金利を4.5−4.75%にまで引き上げた後は、インフレが沈静化するまで当該水準で据え置くことを主張していることを踏まえると、金利先物市場はすでに政策金利水準については現時点では十分といえる程に織り込んでいるといえる。


 利上げ幅についても、今年の11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)だけでなく、12月会合でも5会合連続で0.75ptの利上げを行うことを6割以上の確率で織り込み済みだ。
年明け以降も利上げが続くとしても、金融引き締め効果を見極める必要性があることを考慮すると、利上げ幅は0.5pt以下に低下すると考えられ、利上げモメンタムのピークアウトも視野に入っている。


 米10年債利回りなど米国金利への上昇圧力はなお残っていると考えられるものの、利上げペースが明確になり、その織り込みも完了している今、金利上昇による株価バリュエーションであるPER(株価収益率)への低下圧力はかなり和らぎつつある。
そして、株価を決めるために残されたもう一つの要因は一株当たり利益(EPS)である。
今の株式市場は、想定以上に業績が悪化するのではないか、今後、アナリストの業績予想が一段と引き下げられるのではないかと恐れている。
こうした懸念がEPSへの低下圧力として働いて、現在の最大の株価下押し圧力になっていると考えられる。


 そのため、上述したように、今のところ順調にきている7−9月期決算が今後も良好なものに終われば、市場の過度な業績後退懸念はいったん緩和されるだろう。
年末に向けては極端なショート(売り持ち高)ポジションが築かれている米株式市場を中心に年末株高が実現する可能性があるといえよう。


 ただ、残念ながら、現在の株式市場を巡る懸念要素はFRBの金融政策や企業業績だけではない。
グローバルな視点から見渡せば、ウクライナ情勢のほか、欧州を中心に抱える世界的なエネルギー危機、「ゼロコロナ」政策の堅持から低迷が続く中国経済、米中摩擦、など多くの問題が重なっている。
企業業績も7−9月期実績が良くても、経営陣が先行き不透明感を残すコメントを多く残せば、結局、翌四半期決算に懸念が繰り越されることになる。
それでも、現在、先行きに弱気な意見をもつ市場関係者が支配的になっている中、完全に楽観に傾くことはできずとも、年末に向けては株価の意外高が控えている可能性にも留意したい。

(仲村幸浩)
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