アングル:マンU凋落招いたオーナー一族、いま売却なら大儲け

Reuters

発行済 2022年11月27日 08:05

[ロンドン/ニューヨーク 24日 ロイター] - サッカーのイングランド・プレミアムリーグのマンチェスター・ユナイテッドを所有する米国のグレーザー一族が、クラブの完全な売却を含めた選択肢を模索している。過去10年でチームをすっかり弱体化させ、何百万人ものサッカーファンを激怒させてきた同一族だが、純粋な投資の面で考えると、ここで売却すればかなりの収益が得られる可能性がある。

今年は欧州サッカークラブの買収金額が高騰。その始まりは、ロシアのウクライナ侵攻に伴う経済制裁に絡み、ロシア新興財閥(オリガルヒ)のロマン・アブラモビッチ氏がプレミアリーグのチェルシーを売却した案件だった。

事情に詳しい2人の関係者の話では、グレーザー一族がマンチェスター・ユナイテッドの売却に向けて正式に動き出した背景には、こうしたクラブの評価額の高さがあったという。

不動産や小売り、ヘルスケアなどの分野で財をなし、米プロフットボールNFLのタンパベイ・バッカニアーズも所有するグレーザー一族は、2005年にマンチェスター・ユナイテッドを7億9000万ポンド(9億3907万ドル)で取得した。もしチェルシーなどのディールと同水準の評価で売りに出された場合、利益は数十億ドルに上る、と先の関係者は説明する。

もっとも関係者は、「デュアルクラス(複数議決権株)」を通じてマンチャスター・ユナイテッドの3分の2の持ち分を握るグレーザー一族が最終的に、少数株の売却にとどまるか、何の取引もしない可能性もあるとくぎを刺す。

ファンにとっては、グレーザー一族がマンチェスター・ユナイテッドを手放せば長年の願いがようやくかなうことになる。

多くのサポーターは、一族が買収の際にクラブに多額の借金を背負わせたことや、優秀な選手を獲得したり引き留めるのに、より多くの資金が必要になったことに不満を募らせてきた。さらに今月、スーパースターのクリスチャーノ・ロナルド選手の退団騒動で、サポーターの不満は再び高まった。

ロナルド選手は14日のテレビ番組で「グレーザー一族はクラブもしくはプロスポーツを全く大事に思っていない」と切り捨てた。

一族が売却手続きに入ったと明らかになる前の22日の時点で、マンチェスター・ユナイテッドの株価は約13ドルと、2012年の公開価格(14ドル)を下回る水準に低迷していた。

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一方、欧州サッカークラブには高値がつけられている。

5月にはトッド・ボーリー氏とクリアレイク・キャピタルが主導する投資グループがチェルシーを31億ドルで買収し、今後26億ドルを追加投資する見込み。チェルシーの評価額は直近年度の総収入の5.7倍に上る、と複数の投資銀行関係者が明かした。

米投資会社レッドバード・キャピタルは8月、イタリア・セリエAの名門ACミランを12億ユーロで買収。プレミアリーグ以外のクラブ買収額として過去最高を記録した。さらにマンチェスター・ユナイテッドのライバル、リバプールも身売りを模索しているところだ。

法律事務所RPCが先月まとめた報告書に基づくと、スポーツ業界における今年の買収や過半数株取得の取引総額は96億ポンドと、昨年の18億ポンドを大きく上回った。

マンチェスター・ユナイテッドの場合、総収入の5.7倍と想定した買収額はおよそ34億ドルで、売却のニュースが流れる前の株価水準に41%のプレミアムが乗る計算となる。