ネットイヤー Research Memo(7):NTTデータとの協業効果やプロジェクト管理体制の強化により利益体質に転換

Fisco

発行済 2022年11月30日 15:57

■今後の見通し

2. 中期計画の進捗状況
ネットイヤーグループ (TYO:3622)は、2020年3月期から2023年3月期までを「経営基盤の強化」を図る期間と位置付け、収益力の回復を経営の最重要課題として以下の4つの施策に取り組んできた。
2023年3月期も増収増益が続く見通しであることから、経営基盤の強化は実現したと弊社では見ている。


(1) 利益体質への転換
同社の単体業績は、2015年3月期をピークに2017年3月期以降は不採算プロジェクトが発生したこともあり、3期連続で営業損失を計上するなど厳しい収益状況に陥っていた。
しかしながら、2019年2月にNTTデータと資本業務提携契約を締結し、事業基盤の再構築に取り組んだことで2020年3月期に黒字転換を果たし、それ以降は順調に増益を続けている。
また、収益率(営業利益率)も2022年3月期は6.0%まで回復した。
一方で売上高については、利益重視の営業活動を推進した結果、2020年3月期以降は緩やかな伸長であったが、課題であった人的リソースが強化されたこともあり、2022年3月期以降は成長拡大が続いている。


黒字化と収益率の改善に向けた施策としては、重点顧客への営業活動に注力し、顧客当たり売上高の増加に取り組んだほか、不採算プロジェクトの抑制に努めた。
重点顧客への営業活動に注力したことにより、上位10社の売上構成比は2018年3月期の37.2%から2022年3月期は66.2%へと上昇し(上昇分の大半はNTTデータ向けの売上増による)、営業の生産性向上にもつながった。
また、不採算プロジェクトの抑制については、大型不採算案件(10百万円超の損失案件)が2018年3月期に4件発生したものの、受注リスク管理(受注前段階での要件定義や見積額の精査を厳格に実施)やプロジェクト収益管理の徹底のほか、プロジェクト収益改善対策の仕組みを取り入れた結果、2021年3月期以降は発生しておらず、収益率の向上に寄与している。


(2) NTTデータとの協業
NTTデータとの資本業務提携を実施して以降、双方の強みを生かした共同開発案件が増加しており、収益回復の要因となっている。
NTTデータグループに入ったことで、流通・小売業界、金融、行政分野での新規開発案件を受注する機会も増加傾向にある。
このため、NTTデータ向けの売上構成比は、2022年3月期の33.1%から中期的には40%台半ばまで上昇することが予想され、今後も同社の収益拡大に貢献する見通しだ。


(3) 社員エンゲージメントの強化
企業の成長の源泉となる人財については、採用・育成の強化に加えて社員エンゲージメントの強化による離職率の抑制に取り組んできた。
具体的には、企業ミッションを再定義し、働きやすさの向上に向けた各種制度の導入※や教育研修の強化、やりがいが高まる案件の受注などを推進している。
この結果、離職率は2018年3月期の26.7%から2022年3月期は12.0%とおおむね業界平均水準まで低下しており、2023年3月期第2四半期も同水準を維持しているようだ。
従業員数ついてはここ数年減少傾向が続いたが、新卒採用も含めた採用強化に加え、年間10%前後の増員を計画していることから、2023年3月期以降は増加に転じるものと予想される。


※カケモチ社員制度の導入、LGBTに対応した福利制度改定、介護・育児等を想定した柔軟な勤務管理体系の整備、遠隔地勤務制度等を導入した。



(4) サービス開発
インターネット技術の進化に伴い、次々と新たなサービスの開発が進むなか、同社もニーズに合わせて新規サービスの開発・育成に取り組んできた。
POSについては、顧客企業数が2020年3月期の8社から30社以上(2022年9月末)に増加するなど、着実に実績を積み重ねている。
また、BtoBのデジタルマーケティング支援サービスも順調に拡大している。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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