日経平均は大幅反落、景気後退の織り込みが想定よりも早かった

Fisco

発行済 2022年12月02日 12:09

 日経平均は大幅反落。
546.24円安の27679.84円(出来高概算7億204万株)で前場の取引を終えている。


 1日の米株式市場でダウ平均は194.76ドル安(−0.56%)と3日ぶり反落。
11月ISM製造業景気指数が新型コロナ・パンデミック以降で最低水準に落ち込んだため、景気後退入りを懸念した売りが先行した。
一方、連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ減速期待を背景に長期金利がさらに低下したことでハイテクが買い戻され、相場の下値を支えた。
ナスダック総合指数は+0.12%と小幅続伸。
まちまちな米株式市場を受けた東京市場では、米国の低調な経済指標を受けた急速な為替の円高進行を受けて売りが先行し、日経平均は242.9円安からスタート。
寄り付き後も断続的な売りが入り、前引けまで下げ幅を広げる展開となった。


 個別では、景気後退懸念や為替の円高進行を背景にトヨタ自 (TYO:7203)、日産自 (TYO:7201)、ホンダ (TYO:7267)の自動車関連のほか、郵船 (TYO:9101)や川崎汽船 (TYO:9107)の海運、キーエンス (TYO:6861)、SMC (TYO:6273)の機械、村田製 (TYO:6981)、TDK (TYO:6762)のハイテク、INPEX (TYO:1605)、日本製鉄 (TYO:5401)、三菱マテリアル (TYO:5711)、コマツ (TYO:6301)、三井物産 (TYO:8031)などの資源関連まで幅広いセクターの銘柄が総じて大きく下落。
NTT (TYO:9432)、KDDI (TYO:9433)の通信、第一三共 (TYO:4568)、アステラス製薬 (TYO:4503)の医薬品、三井不動産 (TYO:8801)、三菱地所 (TYO:8802)
の不動産などディフェンシブ銘柄も大幅安。
ヤクルト本社 (TYO:2267)、JFE (TYO:5411)、バンナムHD (TYO:7832)、コナミG (TYO:9766)はレーティング格下げも重石として働いた。


 一方、レーザーテック (TYO:6920)とディスコ (TYO:6146)が逆行高で、その他の半導体関連株も総じて底堅い動き。
円高進行がメリットになるニトリHD (TYO:9843)のほか、資生堂 (TYO:4911)などディフェンシブの一角が小じっかり。
サイバー (TYO:4751)はサッカーワールドカップでの日本の決勝トーナメント進出を受けてABEMA事業への期待感から大きく上昇。
三菱マテリアルとのリチウムイオン電池リサイクルにおける共同開発を発表したエンビプロHD (TYO:5698)は急伸。
マキタ (TYO:6586)は複数の証券会社からのレーティング格上げが観測されて上昇となっている。


 セクターでは医薬品、不動産、卸売を筆頭に全面安となった。
東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の94%、対して値上がり銘柄は5%となっている。


 日経平均は大幅反落で、大きく28000円を割り込んだほか、下値支持線とみられていた25日移動平均線をも割り込んできている。
前日の米株式市場で主要株価指数はまちまちで、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演を受けた後の株高の勢いは早々に息切れした。
FRBの利上げペース減速期待に加えて低調な経済指標もあり、米10年債利回りは3.50%(−0.1pt)へと大幅に低下したにもかかわらず、ナスダック指数も+0.12%とほぼ横ばいだったことは株式市場の上昇の勢いが衰えてきていることを示唆している。


 前日の当欄では、今後の物価指標や13−14日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果次第とはしながらも、基本的には年末までの1カ月間に限っては、インフレ減速・利上げペース減速への期待を背景に株式市場の強含みが続くと予想していたが、こうした期待は早々に崩れる可能性が高まってきた。


 景気が減速する中で高水準の金利が据え置かれることで、景気後退は不可避となるため、来年は年前半を中心に相場は低迷とすると予想していたが、そうした懸念を織り込むのは早くても年明けからだと考えていた。
しかし、前日は米10月個人消費支出
(PCE)コアデフレータが前月比+0.2%と市場予想(+0.3%)を下回り、金利も大幅低下したにもかかわらず、株式は軟調に推移。
それよりも、サプライマネジメント協会(ISM)が発表した11月の製造業景気指数が49.0と市場予想(49.7)を下回り、拡大・縮小の境界値である50を割り込んだことを素直に嫌気する形となった。
50割れは元々想定されていたため、FRBの利上げペース減速期待がこれを相殺すると考えていたが、ネガティブな反応の方が強まる形となった。


 株式市場が景気後退を織り込む局面が想定より早まった印象を受ける中、13−14日のFOMCで公表される四半期に一度の政策金利・経済見通しの重要度は一段と高まったと考える。
これまでのFRB高官の発言から、2023年末の政策金利(中央値)は9月FOMCの4.6%から5%程度へと引き上げられることは織り込み済みだ。


 ただ、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は11月28日に、2023年末の見通しとしてPCEデフレータの伸び率で3.0−3.5%、失業率で4.5−5.0%との見解を示した。
いずれも前回公表での見通し中央値(2.8%、4.4%)より高く、スタグフレーション(物価高と景気後退の併存)的な予想といえる。
ISM製造業景気指数の予想下振れに神経質に反応している株式市場が、次回FOMCでこうしたスタグフレーション的な見通しを示された場合にどう反応するかは注意が必要になってきたといえよう。


 また、前日のダウ平均が小幅な下落だった中、本日の東京市場が大幅に下落しているのは、やはり急速な為替の円高進行だろう。
FRBの利上げペース減速と低調な米経済指標を受けて、10月までの記録的な円安・ドル高トレンドの反転が強まっている。
日本の貿易赤字に伴う、実需筋によるドル買い・円売りがドル円の下値をある程度は下支えするとはいえ、投機筋の売買動向に振らされる要素の方が大きいとみられる。
トレンド転換を意識した投機筋のドル売り・円買いの動きはしばらく続きそうで、今後も日本株の上値を抑えることになりそうだ。
3月期本決算企業の上期決算が11月半ばに終わったばかりだが、想定為替レートを足元の1ドル=135円台に再設定している輸出企業が多かったため、今後の業績下振れリスクにも注意したいところだ。


 日本株はバリュエーション面での割安感があるとはいえ、世界経済の景気後退懸念に加えて、拠り所とされていた為替も逆風に変わるのだとすれば輸出企業を中心に景気敏感株を積極的に買うことは難しい。
こうした中、やはり、景気や為替の動向に左右されにくい内需系グロース株に投資妙味があると考える。

(仲村幸浩)
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