来年度の粗鋼生産回復は予断許さず、賃金抑制は経営のリスク=日鉄社長

Reuters

発行済 2022年12月22日 13:34

更新済 2022年12月22日 15:37

[東京 22日 ロイター] - 日本製鉄の橋本英二社長は22日、記者団の取材に応じ、2023年度の国内粗鋼生産が今年度の9000万トンから大きく回復し、9500万トンになるかは予断を許さないと述べた。ただ、鉄鋼の販売量が増えなくても利益が出る体質に転換しており、実力ベースで6000億円以上の連結事業利益は来年度も達成できるとの見通しを示した。

橋本社長は、来年度の国内粗鋼生産について、中国次第となる海外鉄鋼需要が底打ちするかどうか、半導体不足などで生産が落ちた自動車を中心とした内需が回復がするか、アジアの在庫水準が戻るかという3点がポイントになるとし「3つともポジティブに言える状況ではない」と指摘。今年度見込まれる約9000万トンに対し「大きく回復して9500万トンになるかどうかは、予断を許さない」と述べた。

国内粗鋼生産は、21年度は9563万トンだった。

ただ、同社は構造改革を進めてきた結果、販売量が伸びずとも利益が出せる体質に変化している。橋本社長は「実力ベースで6000億円以上の連結事業利益は来年度もあげられる」との見通しを示した。

<原料、権益は「調達」から「事業」へ>

これまで少額出資だった上流権益については「単なる調達から、今後は事業としてやっていく」と述べた。

鉄鋼事業で脱炭素を進めるにあたって、水素で鉄を還元する際に「パートナーが必要。鉄鉱石があり、水素を作るプロジェクトがあり、水素プラントにグリーン電力が来るという条件が揃い、日鉄は還元鉄を事業としてやる。水素もジョイントベンチャーでやるようなことになるだろう」と述べ、上流権益は、脱炭素の進捗と併せ、事業としてやる必要性が出てくると指摘した。