日経平均は3日ぶり反落、景気後退とインフレの板挟み脱却には時間がかかろう

Fisco

発行済 2022年12月28日 12:09

 日経平均は3日ぶり反落。
156.91円安の26290.96円(出来高概算5億4440万株)で前場の取引を終えている。


 27日の米株式市場でダウ平均は37.63ドル高(+0.11%)と小幅続伸。
中国政府が1月8日から入国時の強制隔離を撤廃すると発表、規制緩和を好感したアジア、欧州市場の流れを引き継いで買いが先行した。
しかし、長期金利の上昇を警戒した売りに押され一時下落に転換。
一方、建機や化学、エネルギーなどの景気敏感セクターの上昇が下値を支え、ダウ平均はプラス圏を維持して終了した。
ナスダック総合指数は金利高が重荷となり終日軟調に推移、−1.37%の大幅反落となった。


 米ハイテク株の下落を受けて日経平均は138.53円安からスタート。
序盤は売りが優勢で、前場中ごろには26199.67円(248.2円安)まで下げ幅を広げた。
ただ、心理的な節目が近づいたところで下げ止まり、その後は膠着感を強めた。


 個別では、レーザーテック (TYO:6920)、東エレク (TYO:8035)、アドバンテスト (TYO:6857)、ルネサス (TYO:6723)など半導体関連のほか、ソフトバンクG (TYO:9984)、メルカリ (TYO:4385)、村田製<
6981>、エムスリー (TYO:2413)、SHIFT (TYO:3697)などのハイテク・グロース株が総じて下落。


 決算が市場予想を下振れたスギHD (TYO:7649)が急落していて、Jフロント (TYO:3086)もサプライズに乏しい決算から前日の急伸の反動が膨らんだ。
東証プライム市場の値下がり率上位にはSREHD (TYO:2980)、ラクス (TYO:3923)、サイボウズ (TYO:4776)、ラクスル (TYO:4384)、Sansan (TYO:4443)、チェンジ (TYO:3962)などの中小型グロース株が多く入った。


 一方、三菱UFJ (TYO:8306)、三井住友 (TYO:8316)、みずほ (TYO:8411)、りそなHD (TYO:8308)の銀行、第一生命HD (TYO:8750)、東京海上 (TYO:8766)の保険は本日も揃って堅調。
1対5の株式分割を発表したOLC (TYO:4661)も買われた。
国内証券がレーティングを格上げしたしまむら (TYO:8227)が大幅に反発し、マルキチの子会社化を発表したヨシムラフード (TYO:2884)、自社株買いが好感されたピックルスHD (TYO:2935)は急伸している。


 セクターでは、不動産、空運、鉱業が下落率上位となった一方、電気・ガス、保険、銀行が上昇率上位となった。
東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の65%、対して値上がり銘柄は30%となっている。


 前日堅調な値動きだった日経平均は一転して本日は再び値幅を伴った下落で軟調な展開となっている。
前日+2.2%と大幅に上昇したマザーズ指数も本日は反落、朝方は下落率も大きかった。
マザーズ指数は前日に一時200日移動平均線を超えたものの、その後伸び悩んだ。
直後の本日の下落とあって、同線が上値抵抗線として意識されてしまい、チャートでは嫌な形となっている。


 物色動向を見ていても市場の陰鬱なムードが伝わってくる。
前日は中国での新型コロナ規制の緩和を好感し、インバウンド関連株が賑わっていたが、ハイテクや自動車などの輸送用機器を中心に景気敏感株は全般軟調だった。
本日も、半導体関連などハイテクは続落しており、また、為替はむしろ円安に傾いているものの、自動車関連でも続落している銘柄が多い。


 さらに、本日は米ナスダック指数の下落もあり、グロース株までもが冴えない。
12月に入って一時3.4%台前半にまで低下していた米10年債利回りが27日、3.85%まで上昇、再び4%台乗せが視野に入ってきたことがグロース株の軟調さにつながっていると考えられる。


 この金利上昇の背景としては、米国でくすぶるサービス分野のインフレや、それに伴う米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ継続方針が一つ大きな要因としてあろう。


 ただ、その他にも、多方面の市況解説や調査レポートによると、中国での経済再開の動きが資源価格の高騰を通じて世界のインフレを再燃させる可能性も指摘されている。
27日の中国政府による入国者への隔離措置の撤廃を受けて、前日の債券市場で米長期金利が大きく上昇した背景には、こうした中国発のインフレ懸念もあるという指摘だ。


 28日付けの日本経済新聞朝刊の一面記事「世界景気『悪化』4割迫る」によると、国内主要企業145社の社長(会長などを含む)を対象に12月2−16日に実施したアンケートでは、世界景気の現状認識は「悪化」「緩やかに悪化」の合計が36.5%と9月時点調査
(31.1%)から約5ポイント増加した。
また、悪化と答えた経営者に要因(複数回答)
を聞いたところ、「資源や原材料価格の上昇・高止まり」が69.8%で最多になったという。


 以上の話をまとめると、話しはやや複雑だ。
つまり、景気後退懸念が強まる中、中国経済の正常化は本来歓迎すべきことだが、インフレ再燃を通じて企業コストの高止まりないしは増加、また各国中央銀行による金融引き締めの長期化の可能性が高くなるということで、中国経済の再開には大きな副作用が伴うということになる。
株式市場は景気後退懸念とインフレ懸念の板挟み状態にあるということだ。


 こうした懸念を払拭するには時間がかかると思われ、株式市場が底入れして本格的な上昇トレンドを描くまでには我慢の時間を長く強いられそうだ。
当面は引き続き国内経済の回復の恩恵を享受できるリオープン・インバウンド関連や、高配当のディフェンシブ銘柄などに相対的な妙味があると考える。
(仲村幸浩)

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