TKP Research Memo(6):貸会議室・宿泊事業の需要回復が継続し、大幅な増収増益(営業黒字転換)を達成

Fisco

発行済 2023年05月25日 15:46

更新済 2023年05月25日 16:00

*15:46JST TKP Research Memo(6):貸会議室・宿泊事業の需要回復が継続し、大幅な増収増益(営業黒字転換)を達成 ■決算概要

2. 2023年2月期の連結業績
ティーケーピー (TYO:3479)の2023年2月期の連結業績は、売上高が前期比13.0%増の50,504百万円、営業利益が3,575百万円(前期は883百万円の損失)、経常利益が3,062百万円(同1,585百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失(以下、最終損失)が4,936百万円(同3,211百万円の損失)と、売上高の回復とともに営業黒字化を達成した。
また、重視するEBITDAについても、同88.9%増の8,748百万円と大きく回復してきた。
一方、最終損失が拡大したのは、リージャス事業の売却に伴う特別損失を計上したことが理由であり一過性要因である。


経済活動の再開とともに、コア事業であるTKP事業(貸会議室・宿泊事業)の需要回復が継続し、増収に大きく寄与した。
一方、2023年2月に売却したリージャス事業については11ヶ月分の業績寄与となったものの、前期とほぼ同水準の売上高を確保した。


TKP事業におけるサービス別売上構成比を見ると、「会議室料」が48.1%、「オプション」が17.1%、「料飲」が6.2%、「宿泊」が23.6%、「その他」(キャンセル料を含む)が5.1%となった。
既述のとおり、「会議室料」及び「宿泊」の回復が顕著であることは今後の伸びしろとも言える。
また、コロナ禍をきっかけとしたオンライン配信等が伸びているところが特徴的であり、案件単価(付加価値)の向上にも寄与しているようだ。


損益面に目を向けると、TKP事業は売上高の回復と、コロナ禍を通して取り組んできたコスト削減により大幅な営業増益を実現し、連結ベースでの営業黒字化にも大きく貢献した。
営業利益率(TKP事業)も15.7%と上場来の過去最高水準を達成している。
一方、リージャス事業については「顧客関連資産」償却費や「のれん」償却費が会計上の負担となっており、連結損益の足を引っ張る要因となっている。
また、最終損失が拡大したのは、既述のとおり、リージャス事業の売却に伴う特別損失68億円(事業整理損及び減損損失など)の計上のほか、税効果会計の期ずれ(約35億円)によるものである(税効果会計の期ずれ分は翌期の第1四半期に持越し)。


財政状態についても、リージャス事業の売却により大きく変化したことに注意が必要である。
売却代金より「現預金」が増加(前期末比18,730百万円増)した一方、「のれん」や「顧客関連資産」が減少(両方合わせて前期末比37,424百万円減)したことで、総資産は前期末比35.2%減の72,089百万円に大きく縮小した。
一方、自己資本は最終損失の計上により前期末比13.3%減の32,821百万円に減少し、それらの結果、自己資本比率は45.5%(前期末は34.0%)に改善した。
有利子負債残高についても売却代金の一部を返済に充てたことから、前期末比39.3%減の32,344百万円に大きく減少しており、財務基盤の健全化を進めることができた。


主な事業の業績は以下のとおりである。


(1) TKP事業の業績
売上高は前期比20.3%増の29,934百万円、営業利益は同420.6%増の4,714百万円、EBITDAは同163.7%増の5,995百万円と、売上高の回復や収益体質の強化により大幅な増益となり、EBITDAも大きく増加した。
売上高は、経済活動の再開による対面セミナー・会議・宿泊の需要回復が継続し増収を確保した。
損益面でも、これまで取り組んできた不採算施設からの撤退や周辺サービスの整理など収益体質の強化を図ってきたところに売上高の回復が重なったことで、大幅な営業増益を実現。
営業利益率も15.7%と上場来の最高水準を更新することができた。
4施設の新規出店を行った一方、5施設を退店した結果、2023年2月期末の施設数は237施設となった。


(2) 日本リージャスの業績(11ヶ月分)
売上高は前期比0.3%増の17,613百万円、償却前営業利益※は同9.9%減の875百万円、EBITDAは同6.9%減の1,606百万円となった。
2023年2月1日付けの売却に伴い11ヶ月分の計上となるなかで、売上高は前期(通年)とほぼ同水準を確保した一方、償却前営業利益及びEBITDAはIWG plcへのフランチャイズ費用の増加により減益となった。
また、そこから「顧客関連資産」及び「のれん」の償却費を控除すると、営業損益は1,143百万円の損失となっており、連結損益の足を引っ張る要因となっている。


※償却前営業利益とは、日本リージャス買収に伴う「顧客関連資産」及び「のれん」の償却費控除前の営業利益であり、買収に係る会計上の影響を取り除いたもの。
なお、日本リージャス買収に伴う「顧客関連資産」及び「のれん」の償却費の合計は2,018百万円となっている。



3. 2023年2月期の総括
以上から、2023年2月期の業績を総括すると、経済活動の再開とともに、同社の主力である貸会議室・宿泊事業が順調の回復基調にあることから、改めて同社の事業モデルの強さや需要の強さを確認することができたと評価できる。
とりわけ損益面では、コロナ禍において取り組んできた不採算店舗からの撤退や周辺サービスの整理等を通じて筋肉質の体質となり、コロナ禍前を上回る過去最高の営業利益率(TKP事業)を達成したところは、この3年間を勝ち抜いた成果であるとともに、ここから新たなスタートを切るうえで大きなアドバンテージと言えるだろう。
戦略面でも、リージャス事業の売却という大きな決断に踏み切ったところは、今後の方向性を判断するうえで重要なターニングポイントとなった。
財務的な投資リターンとして見れば、想定外のコロナ禍の影響もあり成果をあげるには至らなかったものの、需要拡大が見込まれるフレキシブルオフィス市場において、これまでとは違った角度からマネジメントに携わり、新たなノウハウや知見を得られた点では、今後の戦略や事業運営に生かされるものと期待したい。
また、何よりもTKP事業における市場環境が追い風となってきたなかで、スピード感のある決断により、成長資金の獲得と明確な方向性を打ち出したことは、今後に向けた自信と覚悟の表れとして前向きに捉えることができよう。
さらには、独自メソッドによる組織コンサルティングやVCファンド事業などに実績のある識学との資本業務提携※1のほか、独自開発によるインテリア事業やスペースソリューションを展開するリリカラの持分法適用関連会社化※2など、今後の事業拡大(付加価値向上)に向けても一定の成果をあげることができた。


※1 2023年1月20日公表。
識学株式の約9.62%を取得(取得価額は約5億円)。
販売提携(同社施設を利用した研修サービスの共同開発など)や、識学グループが有するハンズオン支援ファンド・VCファンド事業におけるノウハウ、リソース提供などを目的としている。

※2 2023年4月12日公表。
同社施設・ホテルへのインテリア商品の提供や空間サービス・施設の共同開発などに狙いがある。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)

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