アクセル Research Memo(3):パチンコ・パチスロ機向けファブレス半導体から先端テクノロジーへ(2)

Fisco

発行済 2023年08月04日 12:03

更新済 2023年08月04日 12:15

*12:03JST アクセル Research Memo(3):パチンコ・パチスロ機向けファブレス半導体から先端テクノロジーへ(2) ■事業概要

2. 事業セグメント
(1) LSI開発販売関連
「LSI開発販売関連」セグメントでは、パチンコ・パチスロ機向けG-LSIのほか、メモリモジュールやLEDドライバ等周辺デバイスの開発販売を行っており、2023年3月期の売上高構成比で95.7%を占める。
アクセル (TYO:6730)のパチンコ・パチスロ機向けG-LSIの特徴は、比較的廉価なCPUとの組み合わせでも高精細な描画表示を実現する能力を有していることにある。
また、画像ロムに格納された圧縮画像データを瞬時に伸長して高速表示するほか、多彩な演出を可能とする各種エフェクト機能も搭載している。
パチンコ・パチスロ機向けG-LSIについては、このような特定用途に特化した技術が必要となるだけでなく、設計プロセスの微細化、回路規模の大型化により研究開発費が増大する傾向にあるため参入障壁が高くなっている。
競合企業としてはヤマハ (TYO:7951)、ディジタルメディアプロフェッショナル (TYO:3652)等が挙げられる。


なお、パチンコ・パチスロ機向けのG-LSI、メモリモジュールは、リユース(再使用)品が一定規模で使われており、機器の出荷台数とこれら半導体の需要が必ずしも連動しない点には注意する必要がある。
これはパチンコ・パチスロ機に搭載される部材の品質が複数回の繰り返し利用でも問題ない水準であることに加えて、パチンコ・パチスロ機メーカーがコスト削減のためにリユース品を使う動きが広まったことが背景にある。
パチンコ・パチスロ機メーカーはリサイクル業者を介して、または直接パチンコホールから部材を回収して再利用している。
リユース率はパチンコ・パチスロ機メーカーのコスト削減施策の動向に影響を受けるが、G-LSIについては年間需要のおよそ3~4割、メモリモジュールは1~3割がリユース品になっていると推定される。


同社はファブレスメーカーのため、半導体の製造に関してはすべて外部に委託している。
G-LSIについては「AG5」まで国内半導体メーカーをメインに製造委託してきたが、次世代品の「AG6」は海外の大手ファンドリーメーカーに製造委託している。
最先端の微細回路技術を低コストで量産できるためだ。
このため、「AG6」の仕入れについては為替変動の影響を受けることになる。
2021年以降の慢性的な半導体不足もあってファンドリーメーカーが製品値上げを実施したこともあり、同社の仕入価格は従来から上昇している。
一方、販路については専門のエレクトロニクス商社を通じてパチンコ・パチスロ機メーカーに販売しており、2023年3月期以降は価格見直しを進めている状況にある。


なお、同社は研究開発型のファブレスメーカーであるため、売上高に占める研究開発費率が高いという特徴がある。
特に、2016年3月期から2019年3月期にかけては「AG6」の開発に加えて演出用の周辺LSIなどそのほかのLSIの開発をしていたこともあり、研究開発費として毎期20億円以上を投下、対売上比率で50.2%前後の水準で推移し、収益圧迫要因となっていた。
「AG6」の開発が収束した2020年3月期以降は15億円前後の水準に安定推移しており、売上比率も2023年3月期には10.7%とここ数年でも最も低い水準まで低下している。
「AG6」の次世代品の開発について業界環境等も鑑みて、現在は着手していないためだ。
ただ、「AG6」のカスタム版を2025年3月期から投入する計画となっている。
「AG6」は高性能なスペックだった半面、消費電力も大きいという課題があり、こうした点を解消したものとなる。
従来、G-LSIについては一定期間ごとに世代が交代するサイクルがあったが、今回は「AG5」の需要も無くならず一定割合残っており、低消費電力版「AG6」の投入によって世代交代が進むものと予想される。


(2) 新規事業関連
「新規事業関連」セグメントとして、機械学習/AI及びブロックチェーン技術(Web3.0)領域をターゲットにした各種ソリューションの提供や開発支援コンサルティング、IPの販売、ミドルウェアソフト「AXIP」シリーズの販売等を行っている。
同社がLSI開発販売関連で培ってきたアルゴリズムやハードウェア・ソフトウェア開発といった様々なレイヤーの技術・ノウハウが差別化要素となっており、顧客の多様なニーズに対応することで新規事業を拡大していく戦略である。
まだ、いずれの領域も売上規模は小さく、先行投資段階の位置付けとなっている。
そのほか、組み込み機器用G-LSIも「新規事業関連」に含まれている。


a) 機械学習/AI領域
機械学習/AI領域では、独自開発したエッジ推論向けディープラーニング・フレームワーク「ailia SDK」を中核に展開している。
「ailia SDK」の特徴は、すぐに利用可能な270種類以上の学習済みモデルを有していること、GPUの積極活用により世界最高水準の推論処理スピードを実現していること、顧客が望む実行環境に柔軟に対応可能なクロスプラットフォームに対応していることの3点が挙げられる。
特に、クロスプラットフォームに対応していることは、開発者にとって使い勝手の良いフレームワークとして評価の高いポイントとなっているようだ。
AIシステムの構築には、「学習(ディープラーニング)」と「推論」の両プロセスが必要となるが、国内では推論領域のコア技術を持つAI事業者が少なく、GoogleやMicrosoftなど海外大手プラットフォーマーのエンジンを利用して、自社のディープラーニング・フレームワークと組み合わせて開発しているケースが多い。
同社の推論フレームワークは、海外大手と同水準の高速処理性能を持っており、ほかのAI開発事業者との差別化要因となる。
また、自社で推論フレームワークも持つことで、あらゆる顧客の要望に対して柔軟かつ迅速に設計変更を行える点も強みとなる。


ビジネスモデルとして、事業立ち上げ当初はディープラーニング・フレームワークの販売とAI実装のための開発支援コンサルティング、受託開発サービスなどを行い、現在はこれらに加えて「ailia SDK」をベースとしたソリューションパッケージの提供やロイヤリティ収入の獲得などが進み始めている段階にある。
将来的には、普及させた「ailia SDK」によるロイヤリティ収入や、SaaSビジネスでの展開を目指している。


b) ブロックチェーン領域
ブロックチェーン領域では、同社はブロックチェーン構築に関するコア技術や取引基盤を支えるハードウェア技術、セキュリティ技術(アルゴリズムによる暗号化技術)を有しており、同領域の事業開発を進めている企業やノウハウを持つ企業等と協業し、ブロックチェーン技術を基盤とした各種ソリューション及びNFT関連サービスの開発を推進することで、事業展開を加速する戦略となっている。


c) ミドルウェア製品(AXIP)
ミドルウェア製品では、主にゲーミング市場向けに画像及び音声圧縮技術を中心としたミドルウェア「AXIP」シリーズの開発販売を行っている。
製品としては、ムービーミドルウェアの「H2MD」※1や超解像「GRADIA(グラディア)」※2、低負荷・低遅延を実現したサウンドミドルウェア「C-FA(シーファ)」、HDR対応超高圧縮ムービーミドルウェア「LESIA(リーシャ)」、ファイルパッキングミドルウェア「VUCKET(バケット)」※3、カジノ・アーケードゲーム向けムービーミドルウェア「AXVC」などを揃えており、業界最高水準のミドルウェアを多機能パッケージとして販売することで付加価値を高めている。
企業・アプリごとに固定または売上連動型のロイヤリティ収入を得るビジネスモデルとなる。


※1 ブラウザで動画を再生できる動画コーデックライブラリで、複数動画の同時再生や透過レイヤー(動画の重ね合わせ)制御が可能なこと、CPUの負荷が少ないことなどが特徴となっている。

※2 超解像とは、ディスプレイに表示される文字や絵などを拡大したときに、通常はジャギー状(ギザギザ状)になってしまう輪郭部分を滑らかで自然な状態に補正する技術。

※3 自動実行型の圧縮ファイル・ソフトウェア、VUCKETは画像・音声等の大容量ファイルを一つにまとめる機能だけでなく、ファイルの破損チェックや暗号化等にも対応している。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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