プロパスト Research Memo(7):2024年5月期は、慎重な前提に基づき増収減益を予想

Fisco

発行済 2023年08月04日 16:17

更新済 2023年08月04日 16:30

*16:17JST プロパスト Research Memo(7):2024年5月期は、慎重な前提に基づき増収減益を予想 ■今後の見通し

1. 2024年5月期の業績予想
日本経済は、当面はリバウンド需要がけん引する形で、緩やかな回復が続くことが見込まれる。
しかし、円安や 資源価格の上昇に伴うエネルギー価格や食料品の価格上昇、世界的な金融引締めによる海外景気の下振れが景気の下押し圧力となる可能性がある。
プロパスト (TYO:3236)が属する不動産業界に関しては、地価及び建築費がともに上昇しており、新築マンションの販売価格は一段と上昇する可能性や利益率を押し下げる可能性がある。
物価の上昇や海外の金融当局による利上げの動き等から金利上昇に伴う需要低下懸念はあるものの、都心部の駅に近い魅力的な物件は供給が限られることや、販売価格の先高感などから、需要は底堅く推移することが見込まれる。


このような経済環境下において、同社ではこれまでと同様に首都圏エリアにおける駅近等の利便性の高いレジデンス物件を中心に仕入を行うが、物件取得に関しては立地や価格に関して売却想定価格を意識しつつ、より厳選したうえでの取得が必要であると考えている。
分譲開発事業については、単身層やパワーカップルを主ターゲットとして捉え、同社の強みである創造デザイン力やプレゼンデザイン力を生かせる物件の企画・販売を進める方針だ。
賃貸開発事業については、国内外の富裕者層や投資ファンドを主たる顧客ターゲットとして、中規模かつ中低層の賃貸マンションを建設し、資産価値の高い新築物件を提供することで事業拡大を図る。
バリューアップ事業においても、国内外の富裕者層を主たる顧客ターゲットとして、割安な収益不動産を精査して購入し、外観や設備が経年劣化した不動産に対して効率的に改修を行うことで、既存の建物の付加価値を高めたうえで売却してゆく。


同社では、2024年5月期の通期業績については、売上高24,294百万円(前期比21.4%増)、営業利益1,778百万円(同30.5%減)、経常利益1,231百万円(同41.3%減)、当期純利益826百万円(同47.1%減)の増収減益を計画している。
都心部のなかでも需要が見込める物件を厳選して購入するとともに、現在保有している物件の売却活動を積極的に推進することで増収を図る。
ただ、地価及び建築費の上昇等の影響を考慮して、保守的に減益を予想している。
実際、2024年5月期に入ってから、それまで買い意欲が強かった国内富裕層の動きが鈍くなる傾向が表れ始めているようだ。
同社では、今後の市況の悪化を予想して保有物件を早めに売却する計画であり、それに伴い利益率の低下を見込んでいる。


それでも予想営業利益の水準は、業績が極めて好調だった2022年5月期及び2023年5月期実績を下回るものの、2021年5月期実績を上回る水準の確保を計画している。
分譲開発事業については、2023年9月竣工予定のガレリア ドゥエル神田岩本町を既に完売しており、2024年5月期に売上計上するが、利益率は以前の物件に比べて低下を見込む。
収益の柱である賃貸開発事業とバリューアップ事業では、市況悪化の可能性を織り込んで利益率の低下を見込んでいる。
ただ、同社では、従来より期初は慎重な業績予想を発表することから、最終的には予想を上回って着地する可能性が高いと弊社では見ている。


2. 2025年5月期以降の見通し
同社が属する不動産業界では、マンション価格の上昇に伴う契約率低下が懸念されるものの、低水準で推移する住宅ローン金利が下支え要因として期待される。
国土交通省「建築着工統計調査報告」によると、業界の先行指標となる新設住宅着工戸数は、2020年にはコロナ禍の影響を受けて落ち込んだ後に、2021年から回復したものの、コロナ禍以前の水準には達していない。
ただコロナ禍を避けて郊外の不動産を選択する動きも一部には見られたが、テレワークなど在宅時間の増加が住環境の見直しにつながるなかで、引き続き生活・社会インフラが整って利便性の高い都心部の魅力は大きく、コロナ禍の収束後は都心部の需要が郊外に比べて強いという二極化の動きに回帰すると見られる。


こうした経済環境下において、同社では強みである創造デザイン力やプレゼンデザイン力を生かせる分譲開発物件の取得を進める。
当面は分譲マンション価格高騰の影響から同社の取扱件数は少ないと予想されるが、分譲開発事業におけるクレーム処理などに関するノウハウは賃貸開発事業やバリューアップ事業にも活用できることから、引き続き重要な事業として推進する。
今後、借入金利が上昇に転じる状況となった場合、分譲マンションの購入需要にも影響が出ることも懸念されるが、一方で賃貸開発事業に投資する裕福な個人投資家は元々自己資金の割合が高いことから、同社業績への影響は限定的であると見られる。
建築費の上昇については、建築費を固定して工事を開始するなど慎重に対応しており、コストや建築期間等を抑制した賃貸開発物件に取り組むことで事業拡大を図る。
さらに、割安な収益不動産を精査して購入し、効率的に改修工事を行うことで既存建物の付加価値を高めたバリューアップ物件の売却を併せて展開する方針である。
賃貸開発事業やバリューアップ事業ではファンドが売却先に加わる予定で、購買層がさらに広がる見通しであり、同社では今後の業績に貢献すべく、駅近の好物件を中心に仕入れている。


現在のところ不動産業界各社の業績は総じて好調である。
大手不動産会社では、新築マンションは富裕層向けの200百万円以上の高額物件を取り扱っているが、同社の新築マンションは、パワーカップル向けの広さ40~60平米、販売価格50~100百万円のマンションが中心であり、大手とは住み分けをしており、今後予想される事業環境悪化の影響も小さいと見られる。
不動産業界では、長期的には仕入力や事業展開の差によって、好調な会社と不調な会社の二極化が進行すると予想される。
同社では、今後も事業エリアを限定することで、高収益の物件を確保する計画だ。
都心部で駅から徒歩5~10分程度の好立地物件にターゲットを絞り、買い付けの意思決定を迅速に行うことで他社に先駆けて好物件の仕入が可能になる。
同社のこうした物件の仕入力に、定評のある企画力・デザイン力を加えることで、3事業がうまく補完し合いながら、2025年5月期以降も堅調な業績を維持できると弊社では見ている。


同社では、対外的に中期経営計画を発表していない。
同社の事業規模では業績が振れる可能性が大きいため、計画を発表すると投資家をミスリードする可能性があるとの経営判断によるものである。
また、引き続きウクライナ情勢など外部環境の不透明感が強いなか、同社としては計画にとらわれず柔軟に経営したいとの考えもあるようだ。
ただ同社の経営方針を明確化し、投資家や従業員が同社の将来像を共有するためにも、中期経営計画の正式発表は有意義であると弊社は考えている。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)

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