アングル:航空貨物業界、過剰供給能力や運賃下落で苦境に

Reuters

発行済 2023年08月25日 11:47

[18日 ロイター] - 新型コロナウイルスの感染拡大により国境が閉鎖されてサプライチェーン(供給網)が混乱した際、航空貨物業は記録的な需要の恩恵を享受した。だがそうした需要の失速に伴い、現在は過剰な供給能力と貨物運賃の落ち込みにあえいでいる。

ロックダウン期間にレストランや娯楽の予算をオンラインショッピングに回して商品を購入していた消費者の行動が変わり、今は旅行者数が増加の一途をたどる。

その結果、コロナ禍で地上にとどまっていた旅客機は運航を再開し、旅客スペースの下にある貨物スペースも再び使われるようになった。旅客機の貨物スペースは貨物専用機と競合関係にある。

財からサービスへと需要が移行したことに加え、旅客機の貨物スペースの輸送力が急増したため、航空貨物運賃は過去1年間で約3分の1下落した。

貨物専用機のパイロットの中には、旅客機のパイロットの求人に応じるため転職した者もいる。

パンデミックの局面では船舶輸送が渋滞して物流に遅れが生じたため、ジーンズや浴槽といった日用品までもが空輸されていたが、現在は船舶輸送の渋滞は解消されて円滑な物流が再開した。

今はまさに航空貨物業界にとっては最悪の状況だ、と業界幹部や専門家は語る。約2000億ドル(約29兆円)規模の航空貨物業界は、金額ベースで世界貿易の約3分の1を担っている。

先行きをみると、2021年に航空貨物運賃の値上げに見舞われた送り主は、今年冬の運賃交渉では交渉力が強まりそうだ、と話すのはノルウェーの貨物分析会社ゼネタ。

これにより、伝統的に空輸される電子製品や高級品といった高額で軽量の商品に対する価格上昇圧力は和らぐはずだ。だがそれは、航空貨物業者にとっては不利になる。

ゼネタのチーフアナリスト、ピーター・サンド氏は、航空貨物業者は「厳しい局面を迎えることになる。送り主にとっては十分な輸送力が確保されているが、実際には輸送力に見合う需要がないため、彼らは輸送力を利用していない」と述べた。

フロリダ州を拠点とするウエスタン・グローバル・エアラインズは先週、デラウェア州の連邦破産裁判所に連邦破産法第11条の適用を申請した。同社は破産の理由として「急速に強まったマクロ経済面の逆風が、2022年終盤から航空貨物業界全体に吹き始めた」と説明した。

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ウエスタン・グローバルの破綻は、変動の激しい世界の航空貨物ビジネスに伴うリスクとリターンを象徴している。

ゼネタのデータによると、世界の平均スポット価格に基づく航空貨物1キログラム当たりの運賃は8月上旬時点で約2.30ドルと、前年同期よりも35%低く、ピークだった2021年終盤の約5ドルと比べて半分以下になった。

それでも運賃はパンデミック前よりも36%高い水準にとどまっているとはいえ、燃料費や労働コストも大きく膨らんでいる。

ゼネタのサンド氏は「世界的な観点から見ると、航空貨物運賃は今年、来年と間違いなく値下がり傾向にある」と話した。

<貨物専用機の需要に暗雲>

貨物専用機の需要はパンデミックの局面に拡大した。コンサルタント会社イシュカの助言責任者、エディ・ピエニアゼク氏によると、運航中の貨物専用機は2019年5月以降、22%増加した。しかし足元では、運航していない貨物専用機の比率は再び上昇しつつある。

ある航空会社の幹部は、過去数カ月にわたって貨物の収益は低下してきただけに「今は貨物専用機を購入するのに適切な時期ではない」と話した。

業界関係者によると、キャセイ・パシフィック航空は総額20億ドル規模となる可能性のある発注の最終決定を先送りした。

キャセイは電子メールで、どのような貨物専用機が必要になるかの検証を続けており、依然として「あらゆる可能性に門戸を開いている」と説明した。