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アングル:環境対応で矢面に立つ航空業界、KLMが提訴される事情

発行済 2023-09-18 08:02
更新済 2023-09-18 08:09
© Reuters.  9月13日、KLMオランダ航空は2019年、「責任ある空の旅」というキャッチフレーズの広告で、航空旅行を予約する際に地球環境への影響を是非考えてほしいと消費者に求め、同

Toby Sterling Joanna Plucinska

[アムステルダム/ロンドン 13日 ロイター] - KLMオランダ航空は2019年、「責任ある空の旅」というキャッチフレーズの広告で、航空旅行を予約する際に地球環境への影響を是非考えてほしいと消費者に求め、同社としても持続可能な未来に貢献する決意を表明した。

ところが、この広告が猛烈な批判を浴び、昨年には環境団体がKLMを訴える事態に発展した。同社がグリーンウオッシング(見せかけだけの環境対策)に関与し、環境への取り組みについて誤解を与える説明をしている、というのがその理由だ。

フォッシル・フリー・ネーザーランドが起こしたこの訴訟は、株主のために成長拡大を目指しながら、二酸化炭素(CO2)排出量削減に注力していると世間にアピールしなければならない、という航空業界が直面するジレンマを端的に物語っている。

航空業界が発信する環境対策関連のメッセージを巡っては、つじつまが合わないと非難する声が上がり、訴訟や消費者からの苦情も続出。規制当局は、サステナビリティー(持続可能性)に関して航空業界が許される主張の範囲を制限する方向に動きつつある。

フォッシル・フリー・ネーザーランドによる批判運動を主導するヒスケ・アルツ氏は「責任ある空の旅をする唯一の道は、実際に飛ばないことだ」と手厳しい。

一方、KLMは排出量削減とサステナビリティーに関する情報発信の面で、業界のリーダーになるつもりだと主張。広報担当者は「われわれはあらゆる手段を講じている」と述べた。

KLM側は、訴訟の予備審問段階で「責任ある空の旅」という広告の意図は適切だったと主張。アムステルダム地方裁判所は今年6月、訴訟を正式な審理に進めることを決定しており、今月27日にKLMが最初の公式意見書を提出し、12月6日に口頭弁論が始まる予定になっている。判決は来年2月に下される見通しだ。

6月には欧州の消費者団体が欧州連合(EU)欧州委員会に対して、航空17社が「持続可能性」や「グリーン」、「責任」といった言い回しを人々の目をだます目的で使っていると申し立てた。

申し立ての責任者は「われわれが航空業界をやり玉に挙げるのは、グリーンウオッシングの観点で恐らく最も象徴的なセクターの一つだからだ」と語り、低炭素飛行のための技術は現在存在しないか、実用化は何年も先になると付け加えた。

<事業リスク>

航空業界にとって、この問題は切実だ。KLMの親会社エールフランスKLMは昨年の年次報告書で、環境対応面での評判に傷が付くのは事業リスクであり、人々や政治の支持を失いかねないと懸念を示した。

今月1日にはオランダ政府が、スキポール空港の発着枠を2019年より9.5%少ない規模に抑える方針を明らかにした。主な理由は騒音の抑制だが、排出量削減目標も絡んでいる。

エールフランスKLMを初めとする航空会社は、EUレベルでこの決定に異議を申し立てる意向だ。

ロイターからの質問に対してKLMは、排出量の点で航空事業は削減が難しいセクターだが、燃費性能の高い航空機の購入拡大やバイオ燃料の利用を徐々に増やすことで、30年の排出量削減目標を達成する計画だと説明した。

現在、KLMのウェブでは「責任ある空の旅」に関するページをクリックすると「航空旅行は今の段階で持続可能的ではありません。われわれが進めている改善をチェックしてください」とのメッセージに行き着く。

しかし、フォッシル・フリー・ネーザーランドのアルツ氏は、環境に言及している航空会社のどの広告も、人々に飛行機に乗ることに問題はないと納得させ、需要を増やすことを目的としていると指摘する。

アルツ氏は、植樹活動を宣伝しても、他社よりも排出量が少ないと強調しても、これから何年間も全ての航空便がCO2を排出し続ける以上、誤解を招くことになると指摘する。「依然として非常に重大な環境汚染を続けているのが本質ならば、より持続可能的だとは決して言えない」と説明した。

同氏は、航空業界をタバコ業界と同列に扱うべきで、広告は全面的に禁止するとともに航空券に警告文を掲載しなければならないと言い切る。これに対して航空業界は、航空旅行にははっきりとした経済的なメリットがあり、それがないタバコとは異なると反論している。

<規制見直し>

航空業界団体エアラインズ・フォー・ヨーロッパは、各社に環境対応の進展を開示することが認められるべきだと訴えている。

副マネジングディレクターのローラン・ドンシール氏は「われわれはちょっとした袋小路に陥っている。環境問題について、いったい何が言えるのだろうか」と問いかけた。

こうした中で欧州の規制当局は、全ての事業主体向けルール刷新の一環として、広告慣行の規制見直しや環境対応の情報発信を巡る新たな指令策定を検討中だ。

そこでは、環境問題が議論されなくなるのを防ぐ上で、航空会社が取り組みの進展を話題にするのを認めるべきではないか、という見方が聞かれる。

欧州広告基準協会のルーカス・ブデ事務局長は「まずは消費者の関心を維持する必要があるが、(誇大広告にならないような)適切なバランスも保たなければならない」と述べた。

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