情報BOX:APEC首脳会議のポイント、米中の駆け引きにも関心

Reuters

発行済 2023年11月05日 08:09

更新済 2023年11月05日 08:19

David Brunnstrom

[ワシントン 1日 ロイター] - 今月サンフランシスコで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議は、2011年に米国で初開催されてから30回目を迎える。

◎今年重要になりそうな問題

他のほとんどの国際会議と同じく、APEC首脳会議も米中両国が戦略的な駆け引きを繰り広げる場になっており、今回は、実現が期待されているバイデン大統領と習近平国家主席の会談に注目が集まるだろう。

習氏はまだAPEC首脳会議出席を正式表明していないが、バイデン氏と会談することになれば対面では2回目となる。最初の会談は1年前、インドネシア・バリ島での20カ国・地域(G20)首脳会議の際に行われた。

APEC首脳会議は15-17日に開かれる予定。この前後にはAPEC財務相会合やAPEC・CEO首脳会議なども開催される。

◎APECとは

APECは1989年、オーストラリア首都キャンベラで地域の経済統合を推進するための非公式対話の枠組みとして創設され、当初は12カ国が参加。その後年間で100回を超える会合を行うまでに活動が広がった。

現在の参加国・地域は世界人口総数の38%、30億人近くを占め、合計生産高も世界の62%に達するとともに、貿易額は世界全体の半分前後となっている。

APECは、拘束力を持たないコミットメントや開かれた対話、全ての参加国・地域の考えを平等に尊重することといった原則に基づいて行動。さまざまな決定は合意形成により、自発的な形でのコミットメントが打ち出される。

◎参加国・地域

現在はオーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、中国、香港、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、パプアニューギニア、ペルー、フィリピン、ロシア、シンガポール、台湾、タイ、米国、ベトナム。

参加者は正式には「国」ではなく、「エコノミー」と呼ばれ、香港や台湾の参加を認めているのが特色の一つだが、世界最大の人口を抱えるインドは加わっていない。

インドを参加させる取り組みは何十年も進展してこなかった。最初はインド経済が国際的なシステムとつながっていなかったこと、次いでAPECが参加国・地域の拡大を凍結していたことが理由だった。

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台湾の総統はAPEC首脳会議に出席していない。ただこれまでは政府高官ないし企業トップを派遣してきた。昨年のバンコクでの首脳会議には、台湾積体電路製造(TSMC)創業者のモリス・チャン(張忠謀)氏が登場した。

◎招待者巡る議論

今年は香港政府トップが首脳会議に出席するのかどうかが議論されてきた。招待者リストを作成する権限は開催国の米国にあるが、米議会筋は今年7月ロイターに、香港の李家超行政長官は米政府の制裁対象となっているため招かないと明かしていた。

結局香港政府は、李家超氏が「日程の都合」で欠席し、代わりに経済政策担当の陳茂波財務官が出席すると発表した。

ロシアのプーチン大統領についても昨年のウクライナ侵攻以降、その扱いを巡って参加国・地域の意見が割れている。プーチン氏は昨年のバンコクでの首脳会議には姿を見せず、米国務省によると、今年も欠席する見通しだ。

今年は首脳会議の共同宣言策定に向け、ウクライナや中東における戦争に関する意見の食い違いを調整する作業が難航するだろう。

昨年は、各首脳がルールに基づく多国間貿易システムの維持と強化を約束しつつ、「大半の」メンバーがロシアのウクライナ侵攻を非難したという内容の文書が承認された。

通商問題専門家マット・グッドマン氏は、今回は「同志国」のグループだけで独自の声明を発表する可能性があると予想。ロシアと中国がいずれも参加している以上、何か目に見える成果を打ち出すのはこれまでにないほど難しいと指摘した。

◎今年のテーマ