日鉄のUSスチール買収、米が安保上の懸念 日本は反応控える

Reuters

発行済 2023年12月22日 11:31

更新済 2023年12月22日 16:46

Nobuhiro Kubo Yuka Obayashi

[東京 22日 ロイター] - 日本製鉄のUSスチール買収計画を巡り、米国内で安全保障上の懸念が強まっている。共和党、民主党ともに議員の間から反対の声が上がり、ホワイトハウスのブレイナード国家経済会議(NEC)委員長は「真剣な精査」に値するとの声明を発表した。日本政府は今のところ明確な反応を控えている。

斎藤健経産相は22日午前の閣議後会見で、日鉄が「手続きにしっかりと対応することが必要」と述べた。個別企業の経営のこととして、それ以上コメントしなかった。林芳正官房長官も「(NEC委員長の)声明は承知している」とした上で、それ以上のコメントは控えた。

共和党のJ.D.バンス氏、ジョシュ・ホーリー氏、マルコ・ルビオ氏の3上院議員は19日、イエレン財務長官に対し、買収を阻止するよう要請した。3氏は書簡を送り、「USスチール側に国家安全保障に焦点を当てた検討がなかったが、国内の鉄鋼生産は米国家安全保障にとって不可欠だ」とした。民主党もシェロッド・ブラウン氏ら、少なくとも4人の上院議員が反対している。

さらにブレイナードNEC委員長は21日、「国家安全保障とサプライチェーンの信頼性への潜在的な影響という観点から真剣な精査」に値するとの声明を出した。

日本製鉄は22日、USスチール買収について米政府が慎重に精査する姿勢を示していることに関して「買収は全てのステークホルダーにとって有益なものと考えている」と表明した。その上で「政府当局を含む関係するステークホルダーと対話を進め、理解を求めていく」とした。18日にUSスチール買収を発表した際は、「関係当局の承認などが得られること」を条件に買収を実行するとしていた。買収計画には全米鉄鋼労働組合(USW)も反対しているが、19日に会見した橋本英二社長は「丁寧な対話を行えば必ず理解が得られる」と語っていた。