金融庁、損保大手4社に業務改善命令 保険料の事前調整問題で

Reuters

発行済 2023年12月26日 15:56

Ritsuko Shimizu

[東京 26日 ロイター] - 金融庁は26日、企業向け保険料を事前に調整していた問題で、損害保険大手4社に業務改善命令を出した。事前の価格調整といった不適切行為などが行われた保険契約者は576先に上った。複数の損保に同時に行政処分を出したのは、保険金不払いが問題となった2007年3月以来約16年ぶり。

業務改善命令を受けたのは東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険。

複数の損保が共同で1つの保険契約を引き受ける共同保険で、事前に価格調整が行われていた可能性があるとし、金融庁は、保険業法に基づく報告徴求命令を出し、少なくとも過去5年間の調査を行うよう各社に指示。金融庁は報告の分析を行っていた。

その結果、複数で事前に保険料の価格調整を行っていたとし、業務改善計画を2024年2月末までに提出し、直ちに実行することを求めた。中間的な検討状況は24年1月末までに報告する。業務改善計画では、経営責任の所在の明確化、共同保険を含む企業保険分野の適正な競争実施のための環境整備、コンプライアンスやガバナンス態勢の抜本的な強化などを盛り込むように求めている。金融庁は追加的な調査も2月末までに実施するよう求めている。

損保4社からの報告によると、少なくとも1社から不適切行為があるとされた保険契約者が576先あったという。こうした行為に及んだ理由については、幹事やシェアなどの現状維持のためとの回答が50%を占めたほか、他社からの打診、より有利な条件で契約するためなどの回答が続いた。

2017年頃から自然災害が頻発・激甚化し、損保業界では火災保険の赤字が常態化。そのため、保険料収入から利益重視に移行する中で、更改契約を落とすことができないというプレッシャーが強まっていったことも価格調整の背景のひとつになった。金融庁によると、17年から20年にかけて、保険料の調整が始められたケースが多かった。