不二精機 Research Memo(2):高精度プラスチック金型技術を武器に、精密金型と射出成形の2事業を展開(1)

Fisco

発行済 2024年03月26日 13:42

*13:42JST 不二精機 Research Memo(2):高精度プラスチック金型技術を武器に、精密金型と射出成形の2事業を展開(1) ■会社概要

1. 会社概要
不二精機 (TYO:6400)は、1955年3月、初代代表取締役社長の伊井幸雄(いいゆきお)氏が個人企業「三協金型製作所」として創業、1965年には大阪市生野区に精密プラスチック金型の製造及び販売を目的に、不二精機(株)として設立した。
その後、高精度精密プラスチック金型の製造を専業とし事業拡大した。
特に1995年にはCD(コンパクトディスク)プラスチックケース用精密金型の量産タイプを開発し、売上が急拡大した。
その後の日本の金型市場の縮小に対応し、2001年にアジアでの生産拠点としてTHAI FUJI SEIKI Co.,LTD.を設立し、海外連結子会社の設立を加速し、自動車及び二輪車向け精密成形品事業を中心に事業拡大を行った。
また、2019年12月期にグループ化した秋元精機工業(株)は、板金プレス部品、インサート成形部品製造を展開しており、今後は鈴鹿新工場を拠点に電気自動車(EV)関連部品向けに金属と樹脂が一体となった金属端子やコネクタ部品などにも事業展開を図っている。


同社グループの従業員は753名(2023年12月末時点)となっている。
射出成形用精密金型及び成形システム事業においては松山工場と中国常州工場を拠点とし、精密成形品その他事業については上海、タイ、インドネシアの3海外生産拠点と秋元精機工業で事業展開している。
同社単体では主力の松山工場中心に製造を行っていたが、2023年10月には精密成形技術マザー工場として鈴鹿工場が稼働、2025年にはEV関連部品の製造を本格的に行う予定である。
また高知県宿毛でCAD・金型部品工場を立上げ、2023年1月より仮稼働を始めた。


2. 事業内容
同社は、現在は射出成形用精密金型及び成形システム事業と精密成形品その他事業の2事業で事業展開している。
射出成形用精密金型及び成形システム事業では高度な金型設計ノウハウと加工技術を有し、1) ハイサイクル、2) 多数個取り、3) 不良率・バラツキの極小化、4) 長寿命を特徴として高付加価値な精密金型製造を行っている。
具体的には精密・高品質が求められる透析装置であるダイアライザーや注射器、製品コストの削減も求められる食品用キャップ・容器等がある。
また精密成形品その他事業では、精密金型の競争力を活用し、参入障壁の高い自動車関連部品分野に絞り事業展開している。


2023年12月期における売上構成比は、射出成形用精密金型及び成形システム事業が35.6%、精密成形品その他事業が64.4%となっている。
また営業利益構成比(セグメント間取引消去前)では射出成形用精密金型及び成形システム事業が52.4%、精密成形品その他事業が47.6%となっている。


(1) 射出成形用精密金型及び成形システム事業
射出成形用精密金型及び成形システム事業は、ハイサイクル(高性能)、ロングライフ(長寿命)、多数個取り、不良率・バラツキの極小化による安定化などを強みに事業展開してきた。
代表的な製品がCD用プラスチックケース向け精密金型並びに周辺機器を組み合わせた成形システムである。
CDは1979年にソニーグループ (TYO:6758)とRoyal Philips (NYSE:PHG)が共同開発を進め、1982年に生産が開始された。
同社は当初よりCDケース用精密金型の開発に携わり、周辺装置と組み合わせ成形システムとして輸出販売も含め事業を拡大した。
「ディスクケース」成形ではミクロン精度かつ低コスト化の要求から、ハイサイクル、多数個取り技術、長寿命の金型が必須で、同社の精密金型システムの採用が広がった。
しかしCDケース用精密金型はスマートフォンの普及、ネット配信などでCD市場の縮小とともに減少、一時新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)でリピート需要が発生したが、新規需要はほとんどないという状況であった。


同社はCDケース用で培った金型技術を生かし、1997年9月に現在の主力の1つである注射器用精密金型を開発した。
同分野では既存の成型設備のままで取り数を増やすことで単位当たり生産量を増やせる多数個取り金型を製作、多数個取りにもかかわらず、製品品質のバラツキのない安定生産を実現した。
その後、ダイアライザー、シャーレ、点滴用品などの医療分野へ大きく舵取りを変化させてきた。
2023年12月期において、医療用・食品容器用精密金型の売上高はダイアライザー向け等を中心に1,502百万円、セグメント売上高に対する構成比で51.0%となっている。
現在中心となっているダイアライザー成形では、原材料がPP中心(一部PCもある)のため、収縮率が大きく安定成形が困難な材質と言われている。
同社は冷却方式などを改善、サイクルタイムの短縮、品質も安定させることに成功し、内外ダイアライザーメーカーに供給している。
なお、同分野では収益性が高い医薬用が全体の90%弱を占めるまでになっている。
一方、2002年12月期に6割を占めた光学・家電関連は2023年12月期ではセグメント売上高に対する構成比で7.1%程度の水準にまで低下している。


(2) 精密成形品その他事業
精密成形品その他事業は、精密金型で培ったノウハウを生かすため、2001年1月にタイにTHAI FUJI SEIKI Co.,LTD.を設立したことに始まる。
同年9月に中国上海、2002年3月に蘇州と、相次いで生産拠点を設けた。
当初の成形品はCDケース、デジカメのオートフォーカスレンズ鏡筒部品が中心だったが、CDの衰退により蘇州工場を2014年に譲渡し全面撤退した。


一方で、非情報関連の長期的拡大を目指し、需要分野として自動車関連事業をターゲットとした。
タイで納入していた精密金型の技術力が評価され、本田技研工業 (TYO:7267)系の日立Astemo(株)に2輪向けインジェクター(エンジンとスロットルボディやキャブレターと接続する樹脂製パーツ)成形品を納入したのが始まりである。
その後、住友電装(株)向けにワイヤーハーネスの留め具なども供給し、日系自動車部品現地法人向け中心に、2輪向けに加え4輪向けにも安全保安部品などの小物自動車部品成形品が拡大した。
現在は2輪向け55%、4輪向け45%となっている。
製品内容はパワートレーン系、ワイヤーハーネスのカバー等の非パワートレーン系でほぼ2分されている。


同事業の収益力が2019年12月期にかけて安定してきた背景には、蘇州からの撤退に加え、先行投資負担が大きかったインドネシア子会社(9月決算)の売上が順調に拡大したことが寄与している。
結果として、同事業における自動車向け比率はリーマンショック前の2007年12月期で216百万円(構成比4.0%)しかなかったものが2023年12月期には4,346百万円(構成比81.7%)にまで拡大している。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)

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