インタビュー:同意なき買収提案、銀行も「是々非々で」=福留全銀協会長

Reuters

発行済 2024年04月01日 06:22

Makiko Yamazaki Ritsuko Shimizu

[東京 1日 ロイター] - 全国銀行協会の福留朗裕会長(三井住友銀行頭取)はロイターとのインタビューで、足元で活発化している「同意なき買収」について、経済産業省が出した企業買収指針などを受けて銀行業界でも抵抗感が薄れているとして、「是々非々」で関与する姿勢を示した。

福留会長は、かつては同意なき買収を銀行として支援することのレピュテーションリスク(企業やブランドに対するネガティブな評判が広まるリスク)があったが、政府が指針を示したことで、「少し精神的な障害は除かれるのではないかと思う」と述べた。

経産省が昨年8月に出した「企業買収における行動指針」では、真摯な買収提案を受けた企業は、真摯な検討を行うべきだとしている。ニデックや第一生命ホールディングスなどの企業が「同意なき買収」を提案し、成功する例も出てきている。

福留氏は「その提案が被買収会社にとって良い話で、中長期的に企業価値が上がるのであれば、それはきちんと検討しなければならない」と指摘。足元では、再成長や企業再生のニーズが高まってきていることもあり、案件は増加しているという。

LSEG(ロンドン証券取引所グループ)によると、日本では23年に2件の同意なき買収提案があった。今年は、ローランド ディー.ジー.の経営陣による買収に対抗してブラザー工業が出した提案などすでに2件ある。

一方、証券業界でも、同意なき買収者のアドバイザーを務めることについて、野村証券や大和証券などが是々非々で考えていく方針を打ち出している。日本取引所グループ(JPX)の山道裕己最高経営責任者(CEO)は3月25日の会見で「健全なマーケットであれば、同意なき買収でカウンタービッドがでてくるのも、ありうるべきかなというふうには思う」と述べている。