16年3月期の決算発表が本格化してきている。
先週末の一部報道では、28日までの決算発表銘柄の1-3月期経常利益は前年同期比20%の減少で、10-12月期の同約10%減から減益幅が拡大し、16年3月期通期でも1%の減益になったと伝わっている。
2016年3月期の減益転落はやや想定外であり、思った以上に企業収益の鈍化傾向が強まっている印象である。
もともと、足元での急激な円高進行に伴う17年3月期の決算に対する警戒感が強かったため、前期実績に対する関心は例年以上に低いと見られるものの、スタート台の低下によるコンセンサス水準の切り下がりは今後も警戒しておく必要があろう。
前半戦を振り返りると、さすがにガイダンスリスクへの警戒感が強まっていたことで、アナリスト予想を下回る業績見通しを発表しても、アク抜け感が先行する銘柄が多く見受けられている。
先陣を切って発表した東京製鐵 (T:5423)や安川電機 (T:6506)は今期見通しが市場予想を大きく下振れ、売り先行となったものの、比較的早い段階で切り返す動きになった。
日本電産 (T:6594)や小糸製 (T:7276)、アルプス (T:6770)などはコンセンサスを下回る見通しとなったが、当面の悪材料出尽しと受け止められ、買い先行の動きになった。
とりわけ、電子部品株への警戒感が強かったこともあり、コンセンサス比上振れの業績見通しを発表した航空電子 (T:6807)などはポジティブなサプライズが強まる格好にもなった。
想定外の大幅減益見通しを発表したファナック (T:6954)のほか、キヤノン (T:7751)、任天堂 (T:7974)、日野自動車 (T:7205)、JFEHD (T:5411)など、決算を受けて売られる銘柄もあったが、27日決算発表企業までは大方、決算発表後は「アク抜け」といったムードが強まる状況となっていた。
ただ、日銀決定会合の結果発表を挟んで、こうした楽観的な見方は後退する形にもなってきている。
その後は為替市場で急速な円高が進行、大半の企業が想定レートとしている1ドル=110円の水準を大きく下回るドル安円高となってしまっている。
一段の業績下振れ要因として、悪材料出尽しとは捉えきれなくなる状況に。
2日にはコンセンサスを下回る業績見通しを示した村田製作所 (T:6981)が大幅安の展開に。
先週までの段階ならば、アク抜け感が先行していた可能性は高いと考えられる。
リコー (T:7752)や電気硝子 (T:5214)なども大きく売り込まれた。
ただ、2日はゴールデンウイークの谷間であり、市場参加者が限定的であったことも、極端な株価反応につながった可能性がある。
村田製作所と日東電工 (T:6988)の両極端な動きは、ともにコンセンサスを下回る業績見通しであったことからも、違和感が強く感じられる。
ゴールデンウイーク明け後の反動などは注視しておきたいところだ。
さて、後半戦の注目点であるが、まずは11日のトヨタ (T:7203)、12日の日産 (T:7201)、13日のホンダ (T:7267)と続く自動車株の決算となろう。
円高を考慮した業績見通しは市場コンセンサスをそれぞれ下回ると見られるが、その後の各社の株価の反応次第では、全般的に見直しの動きが強まっていくことになる可能性が高いだろう。
ゴールデンウイーク後は、為替の急激な変動リスクも低下するとみられ、目先は輸出関連株の見直しに関心を傾けたいところでもある。
ほか、化学セクターは原油市況の足元上昇に伴うスプレッドの低下懸念が業績見通しに反映される可能性があることに警戒したい。
また、建設株に関しては、他のセクター同様に17年3月期の減益見通しが想定されるが、前期まで好決算が続いていたことから、他のセクターとは違ってネガティブに受け止められやすいとみられる。
新興市場銘柄の決算発表も増加してくるが、関心が決算内容に向かうに従い、テーマ物色の動きは鎮静化する可能性もあると考える。
なお、村田製作所と日東電工同様に、日立国際 (T:6756)と日立化成 (T:4217)の4月26日の株価反応は、業績予想数値のコンセンサス比上振れ、下振れの違いはあるものの、大きな明暗を分ける形となった。
ただ、その後はすぐに両銘柄とも反動が出る格好となっており、今回の決算は短期的に過剰な反応が強まりやすいことにも注意しておきたい。
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