焦点:攻める民主党、反論する共和党 米弾劾裁判のポイント

Reuters

発行済 2020年01月22日 17:21

焦点:攻める民主党、反論する共和党 米弾劾裁判のポイント

[ワシントン 21日 ロイター] - 米上院で21日、トランプ大統領のウクライナ疑惑を巡る弾劾裁判が審議入りした。民主党の訴追内容と、それに対する共和党の反論をまとめた。

<訴追条項>

民主党は弾劾訴追に該当する具体的な行為として、トランプ氏が再選を果たすため、権力を乱用してウクライナ政府に圧力をかけたと指摘。国家安全保障を脅かし、今年の米大統領選の正当性を損なうことで合衆国憲法を危険にさらしたと糾弾している。

民主党はまた、トランプ氏が下院の弾劾調査で要求された記録を提出せず、政府高官らに証言しないよう命じたことは議会妨害に当たるとも指摘。国家安全保障と行政制度を守るためにトランプ氏の罷免を求めている。

弾劾訴追の核心部分は、7月25日の電話協議の記録。それによると、この電話でトランプ氏はウクライナのゼレンスキー大統領に対し、バー司法長官および自身の弁護士であるジュリアーニ・元ニューヨーク市長と協力し、米大統領選の民主党有力候補、バイデン前米副大統領の汚職捜査を始めるよう圧力をかけた。

トランプ氏はまた、ロシアではなくウクライナが2016年の米大統領選に干渉したという説についても調べるよう、ゼレンスキー氏に求めた。この説は、虚偽であることが証明されている。

トランプ氏らは、バイデン氏が自分の息子が幹部を務めるエネルギー会社への捜査をやめさせるため、自らの地位を使ってウクライナの検事総長の罷免を強いたと主張しているが、トランプ氏もその支持者らも証拠を出しておらず、この点は証明されていない。バイデン氏は否定している。

政府の現職高官と元高官らは、下院の弾劾調査で証言し、政府の公職に就いていないジュリアーニ氏に協力するようトランプ氏から指示されたと述べた。

一部の証言者は、トランプ氏がゼレンスキー氏に捜査を迫るため、4億ドル近い軍事支援と、ホワイトハウスでの会談を凍結したとの見方を示した。マルバニー米大統領首席補佐官代行も記者団に対し、ホワイトハウスが資金を凍結したことを認めている。

ソンドランド駐欧州連合(EU)代表部大使による下院情報特別委員会での証言は、トランプ氏にとって最もダメージが大きいものだった。

ソンドランド氏は、ウクライナへの圧力についてトランプ氏と直接話したとし、他の政権幹部も関与していたと述べた。ウクライナ高官らは、凍結された軍事費を受け取るには捜査開始を発表する必要があることを理解していた、とソンドランド氏は証言した。

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トランプ氏は結局、軍事費拠出の遅れが公になった後に拠出凍結を解除した。ただ、未だにゼレンスキー氏をホワイトハウスに招いていない。

<他の証拠>

民主党が弾劾調査を終え、12月に弾劾訴追を可決した後も、新たな証拠が出ている。

公開資料請求によって開示された政府内部のやり取りによると、ホワイトハウス高官らは国防総省に、トランプ氏からウクライナ支援を凍結するよう指示されたと告げていた。

超党派の議会監視機関である政府説明責任局は、議会が承認した資金の支出を拒んだことで、トランプ氏は法を犯したとしている。

ジュリアーニ氏の元同僚は前週、同氏とその元同僚自身が、ウクライナに圧力をかけるために何を行ったか具体的に示す電話のメッセージやその他の証拠を、下院情報特別委員会に提出した。

<共和党の反論>

トランプ氏は、何も間違ったことをしていないと述べている。下院共和党もそれに同調し、2つの訴追事実のいずれについても、下院で賛成票は1票も出なかった。

トランプ氏の法律チームは、いずれの訴追事実も弾劾に相当する「重大な犯罪」には当たらず、単なる犯罪ですらないと主張。その理由として、大統領には外交のやり方や、議会と何を共有するかを決める権限があるとしている。

また、法律チームは、トランプ氏には広範な汚職追及の一環として、ゼレンスキー氏にバイデン氏の捜査を要請する権利があると述べている。また、議会からの情報提供を拒否する権利もあるとしている。

共和党議員らは、民主党の弾劾訴追は主に、トランプ氏と直接やり取りしない中級幹部の証言に基づいているため、風聞に過ぎないと主張。民主党はこの件を裁判に持ち込み、トランプ氏と直接関わる高官に証言を強制するべきだったとしている。ただ、この手続きには数カ月を要していた可能性がある。